8.うん!自慢のパパなの!
章題を変更しました。学園編長いぞー。
クリス先生と共に、森の中を全力で走る。
それと並行して【魔力操作】をフル活用して【魔力探知】を全力で広げる。
少しの反応も、集団も見逃さないように。
正直頭に入ってくる情報量に頭痛が止まらないが、自分の限界に挑む勢いで範囲を拡大していく。出来る時にやらないで何がヒーローか。
すると、伸ばしていた【魔力探知】内に5、6体の人型の反応が現れる。
通常の人よりも小さく、洞窟と思わしき空間に入っていく人型。間違いないだろう。
「クリス先生ッ!ココから北西4kmほど先に反応がッ!」
「4km!?どんな探知範囲をしているのだ………!」
俺の言葉を聞いて、違う所に驚くクリス先生。
「そこはまた後でお願いします!ティオ様を抱えた状態ですがまだいけますか!?」
「絶対後でそのコツを教えてもらいからな!私を舐めるなよ、まだまだ余裕だ!むしろ重しが出来た分、お前と同じスピードになったくらいだ!」
俺の言葉に、クリス先生は寧ろ軽口を叩いて見せる。流石は俺の先生だ。
「分かりました!じゃあ付いて来てください!」
「了解した!」
そうして、反応の先に全力で駆け出す。
反応があった先に駆けつけると、そこには案の定山をくり抜いた様な洞窟があった。
そこに俺とクリス先生は、立ち止まる事無く乗り込む。
普段なら、例えゴブリンであろうと見張りの存在や敵の種類、数といった情報が不足しているこの状態で、おめおめと敵地に乗り込むような真似はしない。
だが、今は一分一秒が惜しい。それに俺達は、そこらのゴブリンに不意打ちでやられる程、やわな鍛え方はしてないつもりだ。
入って直ぐ、道が二手に分かれる。
といっても、右は分岐点からでも端が見える只の窪みだ。
そこにティオ様を寝かせる。流石のクリス先生も人一人抱えた状態じゃ戦えないしな。
そしてそこに俺が【結界】を張っておく。一応俺も【精霊の王】の効果でシーラのスキルを使う事が出来る。変換効率は悪いが、その分MPを注ぎ込めば問題ない。
ティオ様の安全を確保したら、左へ駆け込む。
左の道も終わりはすぐだった。
それなりに開けた空間に飛び出した俺とクリス先生が目撃したのは―――。
7歳ほどの女の子に覆いかぶさる傷だらけのライトグリーンのゴブリンと、その周りで騒ぐ緑ゴブリンの集団だった。
空間を埋め尽くさんばかりに大量にいる周りのゴブリンは、各々武器を持って女の子に攻撃を加えている。
そんな攻撃の中で女の子に覆いかぶさるボロボロのゴブリン。
傍目から見たら、抵抗する女の子を押さえつけるように見えるだろう。
「ちっ!間に合わなかったか!」
実際クリス先生は、集団に向かって即座に突っ込もうとする。
だが、俺はあのライトグリーンのゴブリンに何か違和感を感じていた。
あのゴブリンは何故あんなに傷だらけなのに、未だに覆いかぶさっているんだ?………まさか!?
「クリス先生!あの明るい色のゴブリン以外を攻撃してください!」
「何を言っている!?あのゴブリンこそ一番に排除しなければならないだろう!?」
当然そんな事を言い出した俺に向かって、焦りと疑問と怒りをミックスしたような表情で睨むクリス先生。
「いや、違います!とりあえず急いでください!あのゴブリンが死んでしまう前に!」
「えぇい!後でちゃんと説明しろよ!」
「了解です!」
しかし俺が再度言葉を伝えると、渋々といった感じながら承諾してくれるクリス先生。こういう時に互いに信用出来ている人だと、余計なもめ事を起こさないでいいのがありがたい。
クリス先生は、腰につけている十数本のナイフの中から二本ナイフを引き抜き、裏手で持ち構える。
「【魔力武装】」
そして、全身に金色の魔力を纏うとアクセル全開で飛び出し、背後に回ってゴブリンの首を一閃の下に泣き別れさせていく。
その速度は『流石』の一言に尽きる。俺じゃなきゃ見逃しちゃうねぇ。
「ギッ!?」
「ギャギャァ!」
そんなクリス先生や俺にようやく気付いたゴブリン共は、互いに声をかけ合い始めて標的を俺らに変える。
「【王覇】」
俺も全身に淡く輝く虹色の魔力をうっすらと纏っていく。
「そこを………」
腰を落とし、右足を引く。
「どけぇッ!」
そしてクリス先生を見習うがごとく、全力で飛び出してゴブリンの群れに突っ込む。
「シッ!」
まず、目の前に立っていたゴブリンを右腕で払う。全く反応できなかったゴブリンは、そのまま上半身が消し飛ぶ。
「セイッ!」
そして、その振り抜きを生かして回転し、次のゴブリンに再度右腕で裏拳を叩き込む。側頭部に裏拳を叩き込まれたゴブリンは、頭が物理的に吹っ飛ぶ。その頭が直撃した別のゴブリンも同時に倒す。
「ヤァッ!」
その回転を殺す事無く飛び、回し蹴りを放つ。今度は同時に二体のゴブリンをぶっ飛ばす。
「【空天】!」
更に両腕から【噴火】を放ちながら回転を維持し、円形状に敵を消し飛ばす。
その結果、女の子との間に空間を無理やりこじ開ける事に成功する。
「大丈夫かっ!」
俺は急いで女の子に駆け寄る。
「わ、私は大丈夫なの………。で、で、でも、でも、このゴブリンさんが………!」
俺に気付いた女の子は、自分よりもこのゴブリンの心配をしている。
あんな集団に囲まれて襲われて怖かっただろうに、泣きそうな顔のままの表情でだ。
やはりこのゴブリンは、この女の子に覆いかぶさって守っていたようだ。そうじゃなければ、女の子は無事じゃなかっただろうし、このゴブリンがやけにボロボロな事に理由が付く。
近くで見てわかったが、このゴブリン既に右足と左腕が無い。そして、切り傷が付いていない場所の方が少ないほど全身が怪我だらけで血塗れだった。正直もう少し遅かったら、死んでいただろう。
「分かった。後は俺に任せな」
そう言って、俺は女の子とゴブリンに【超回復】を掛ける。
「……ギギッ………?」
今まで必死に女の子を守っていたのか、唐突にかけられた【超回復】でようやく俺に気付くゴブリン。もう今にも力尽きそうなほど、緩慢な動きで俺を見る。
「よくやった。お前のお陰で女の子は無事だ」
俺はそう言ってゴブリンの頭を撫でてやる。
普段だったら、正直余り触りたくないと拒否感を起こす見た目のはずのゴブリンだが、何故かコイツは躊躇い無く触る事が出来た。
「後は俺に任せろ。女の子もお前も守ってやる」
「ギィ………」
「お前はいいゴブリンだ。俺が保証する。だからちゃんと守って見せるよ」
「………ギギッ」
俺の言葉を聞いて安心したのか、ゴブリンはゆっくりと目を閉じる。
死んだ訳では無い。ちゃんとHPは回復させている。単純に今まで張りつめていた気が緩んで、疲労が一気に来たんだろう。
「【結界】。そこから動くなよ?」
「うんっ!」
【結界】を張って、二人を守っておく。これで、二人は安心だ。
「さて、後はてめぇらを全員潰すだけだ」
俺はそう呟きながら、辺りを見渡す。
クリス先生が全力で暴れまわっている事もあり、半分は倒せているようだ。
「行くぜッ!」
残りを急いで殲滅させる為に、俺も集団に再度飛び込んだ。
それから数分経たずにゴブリンは全滅させた。大したドロップ品も無いし、特に何もため込んでなかったので、俺達が今回の戦闘で得られたものはほぼ無い。だが、獣人の女の子を守れた事、しっかりとした自我を持つゴブリンを守れた事。これは十分大きな収穫だろう。
現在、女の子を守っていたゴブリンは寝かせている。意識が戻ったら、仲間になってもらえないか交渉するつもりだ。
だが、俺には急いですべき事がある。
「クリス先生、ココの見張りをお願いしていいですか?」
ティオ様、獣人の女の子、ボロボロのゴブリン。
放置は出来ない。だが、俺は今すぐにも動きたいのだ。
「エルフ達か」
「えぇ、直ぐに助けに行きたいと思います。何とかしたらここに【転移】して戻ります」
「そういう時に【転移】が使えると本当に便利だな………」
クリス先生はそう言って、肩を竦める。
「まぁまかせろ。といっても、御大将が【結界】を張ってしまえばそれだけだがな」
「そんな事無いですよ」
クリス先生と言葉を交わしていると、足元にギュッと抱き着く感触が。
「行っちゃうの………?」
例の獣人の子だ。
この子は天パ気味の短い茶髪に埋もれる様に、渦巻き状の角が左右にそれぞれ生えている。いわゆる羊獣人のようだ。
クリクリとした目をして、上目遣いで見上げている。抱き着く腕は震えており、どうやら置いていかれる事に怯えているようだ。
「どうしてこんなに懐いたかね………?俺が怖くないのかい?」
実際この子を見捨てた人間と同じはずなのだ。なのにこの懐き様は不思議で仕方がない。
「どうして?」
俺の質問に対して、逆に不思議そうに首を傾げる羊獣人の子。
「君をここに捨てた奴と同じ人間だぞ?」
「ううん、全然一緒じゃないの。目が凄い綺麗なの!」
そう言いながら、キラキラした目で俺を見つめ―――。
「だから、リリのパパなの!」
そう問題発言をした。
「え゛っ」
「はぁっ!?」
思わず声を上げる俺とクリス先生。
「ど、どうして俺がパパなんだ………?」
少し頬が引き攣るのを感じながら聞き返す。何がどうなってそう言う結論に至ったのか。
「リリはね、気が付いた時には一人だったの。でも一緒にいた他の奴隷?の子は皆親がいるらしいの」
どうやらこの子は、生まれた時から奴隷のようだ。両親の事は何もわからないらしい。
「でも周りの大人の人はね、皆目が濁ってたの。怖かったの。でもね、リリのパパとママは優しい人が良かったの!」
そう言いながら俺の顔を見る。
「パパはね、今まで会った人で一番目が綺麗なの!優しそうなの!だから、リリのパパになって欲しいの!」
そして、少し悲し気に顔を伏せる。
「それとも、パパはリリのパパになるのは嫌………?」
うーん、眼がどうとかは、この子なりの獣人の直感だろうか?この子も、幼いなりに自分で考えて動いているようだ。ならば迷う理由は無い。
「そんな顔を子供がするな」
「………んっ」
ぼさぼさの頭に手を置き、ワシャワシャと撫でてやる。
「良いぜ。今日からお前は家の子だ。名前は何ていうんだ?」
「んっ!リリスッ!」
名前を聞くと、花が咲いたような笑顔をこちらに向けてくれるリリス。
「それじゃぁリリス、よく聞いてくれ」
「うんっ」
俺はしゃがんで、リリスと目線を合わせる。
「パパは今から行かないといけない所があるんだ」
「エルフのお姉ちゃん達を助けに行くんだよね?」
俺の言葉にそう返すリリス。まさか俺達の会話を聞いて理解しているとは。もしかしたらこの子は凄く頭がいいのかもしれない。
「あぁ、そうだ」
「リリからもお願いするの!あのお姉ちゃん達を助けて!皆、手とか足とかが無くて、すごくボロボロだったの!」
………マジであのガルザードの奴ら屑過ぎんだろ。
「分かった、パパに任せろ。すぐに連れて来るよ。それまではあそこのお姉ちゃんの言う事を聞くんだぞ」
「うんっ!」
元気に頷くと、リリスはクリス先生の下へ走って行く。
「クリス先生、頼みます」
「了解した。早く行ってやれ。予想以上にひどい状態のようだ。覚悟していけ」
「分かりました。【魔力翼】」
背中から2対の虹色の魔力が噴き出す。
「わぁ………綺麗なの………!」
「だろう?あれがリリスのパパだ。十分自慢していいぞ」
「うん!自慢のパパなの!」
後ろから聞こえるリリスとクリス先生の会話で、少し気分が落ち着く。
それじゃぁ、急いで向かいますか!
全力で飛び出し、そのまま滑空体制に移る。そして空を飛んだまま洞窟を飛び出し、クリス先生から聞いていた最寄りの街に向かって飛ぶ。
その街の奴隷商でエルフ達は売られ、リリスは買われたらしい。
なので、本当はリリスに道案内をしてもらう方がいいのだろうが、そんな所にリリスを連れて行く訳が無いだろう。
さて、エルフ達は手当たり次第に店を当たって行くとして、その後どうするか、か………。
リリスや屑共の話を聞く限り、件のエルフ達は部位欠損しているのは間違いないだろう。
後回しにしていたが、早急に【回復魔法】のLvを5に上げる必要が出てきた。
考え自体はある。後は実行に移すのみだ。
これからの進行を先に言いますと
ドラゴン戦編
↓
エルフ救出&龍戦編
↓
魔物遭遇&トーナメント編
↓
勇者戦編
と言った感じにする予定です。
魔物との邂逅シーンを早めに入れようと考えた結果です。なので魔物娘はもう少しだけ待ってください!




