4.うばぁ………
仕事の進捗を見誤るとこうなる。
と言う名の地獄を見ております。
3月まで死ぬなぁ………。
母さんから【眷属念話】を受けた俺は、即座にグランディアの冒険者ギルド内の執務室に【転移】した。
勿論、クリス先生には一言伝えて来てるし、シロも約束通り連れてきた。
転移先には、母さんとオルが待っていた。
「おっす、お疲れさん」
「レイ、お疲れ様」
「おう、ありがとう」
互いに軽い挨拶をかわし、直ぐ本題に入る。
「それじゃ、何処から話したもんかね………。レイもアタイらに話したい事があるんだろ?」
社長室にありそうな大きい椅子に座ったままのオルが、俺の方を見て問いかける。
ここに来る前に、母さんの方に【眷属念話】で話したい事があると伝えてある。
「おう、勇者についていくつか分かった事がある」
「何ッ!?」
「ホント!?」
オルは、ガタッ!、と音を立てて立ち上がる。
「そうだな、これは他の国、特にマルスメティアとかが知りたい情報だろうから、俺から話そうと思うがいいか?」
「あぁ、頼む。正直勇者の情報は、この大陸内での最重要事項だ」
「了解した」
ミナ姉から聞いた情報を全て話す。
その情報を、オルは一言も聞き逃さないようにして聞いていた。
「って感じだ。情報が少なくて悪いな」
「いや、これだけわかれば十分だよ。少しばかり待っておくれ。ルルーラ!」
ガチャッ
「はい」
「うわっ!?」
オルがルルーラさんを呼ぶとほぼ同時に、執務室のドアが開く。タイミングドンピシャすぎてビビった。
「念話水晶を持ってきてくれ」
「それならここにあります」
そう言って懐から薄いクリスタルのような見た目をした掌サイズの鉱石?を取り出す。
ていうか、オルの要求を察して事前に動き即座に対応するルルーラさんマジ万能。
クイクイ
「ん?」
ローブの袖を引かれた気がして振り返ると、シロが俺のローブを引っ張っていた。
「どうした?」
「………兄様、あの水晶って何?」
「えっとな………」
「その質問には私が答えるわよぉ」
シロの質問に母さんが反応する。
助かった。俺も初めて見たんだよ。
「………ん。………母様お願いします」
「うん!ちゃんと礼が言える子はいい子よ」
母さんがシロの頭をなでなでする。
シロ達は和んでいますが、オルとルルーラは寧ろ緊迫した雰囲気を出しているので、間に挟まる俺の微妙な感じよ。
オルの様子を伺うと、何やらルルーラさんが念話水晶?とやらに魔力を込めていた。
ある程度注ぐと、念話結晶が淡く光る。
「ギルドマスター、魔力充填完了です」
「助かったよ、ルルーラ。アタイじゃうまく魔力充填出来なくて時間がかかっちまうんだ、よッ!」
パァンッ!
「………え?」
シロが驚きの声を上げる。俺も上げそうだった。
ルルーラさんから水晶を受け取ったオルは、躊躇い無くそれを地面に叩きつけたからだ。
「大丈夫よ。使い方はあれで合ってるのよ。念話水晶は使い捨ての道具なのよ」
母さんがそう言ってシロを撫で続ける。てか、まだ撫でてたんかい。
綺麗なくらいに粉々に砕けた水晶を見ていると、突然破片が光始めて浮かび上がる。
そして破片は空中で集まり、一枚の水晶に戻る。
「あーあー。此方グランディア支部ギルドマスターオルゼ。聞こえてるか?」
『大丈夫だ、ちゃんと聞こえているぜ』
オルがその水晶に向かって話しかけると、返答が帰ってきた。
『オルゼからの連絡ってのは珍し……くもないな。この前の飛竜の件からまだそんな経ってないな』
「そん時に水晶貰ったばっかなのにすまないね。再度、緊急で伝えないといけない案件があるんだよ」
『そんくらい気にすんな。それよりも、緊急案件ってなんだ?』
「勇者についていくつか分かった事があるんだよ」
『何だってッ!?………いや待て、その情報の信憑性は?』
「アタイは、ほぼ間違いないと思ってるよ」
『オルゼが言うならほぼ確実だな………。よし、この念話を主要都市のギルドと各国の王の方に回す。少し待ってくれ』
「了解したよ」
オルはそんな感じで水晶に向かって喋っていた。
そんなオルを横で俺らは見ていた。
「オルが今話している相手はね、冒険者ギルドグランドマスターのセルディマよ」
「グランドマスター!?」
『グランドマスター』って言ったら、全冒険者ギルド内で最高の地位の事だ。
そして、現在のグランドマスターは迷宮都市の冒険者上がりで、尚且つ白金冒険者だと聞く。完全に実力だけでのし上がっていった逸材だという話はクリス先生から聞いた事がある。
二つ名は『人類最強』。
これ以上ないくらいシンプルな二つ名だ。どれだけ強いかわかりやすいだろう。
問題点はただ一つ。『男』なんだよぁ。称号のせいで敵になる可能性が高いのが何とも。
「冒険者ギルドって各国の色んな町にあるでしょう?だから、末端からの情報とかは伝わるのに時間がかかっていたのよ。念話水晶はね、そんな状況を見たグランドマスターが、冒険者ギルド本部専属の魔法具職人に頼んで作った魔法具なのよ」
グランドマスター曰く。
『何かあった時に、一括で俺に情報が伝わるようにしな。一々間を挟むのはまどろっこしいし、遅延の原因だし、途中で湾曲されたりもみ消されちまうだろうが。そうやって救えない人が出るのは俺の師匠の教えに反するんだよ』
グランドマスター、どんな善人だよ。めっちゃヒーローっぽい事言ってんじゃねぇか、カッコいいな!
実際、グランドマスターであるセルディマは伝説級に人気だ。
勇者が居なかった現在、この大陸の人にとって本物の英雄なのだ。
「ちなみにグランドマスターの師匠はお母さんなのよ」
「まじかよ」
そういや迷宮都市上がりだったな。
マジでオルは凄いんだな。
「そんなグランドマスターの指示で出来たのが、『ポータル』と呼ばれる水晶板と念話水晶なのよ」
魔力を込めた状態で念話水晶を砕くと、砕ける衝撃に反応して内臓魔力が瞬間的に膨大に膨れ上がるらしい。その魔力を使って水晶表面に刻まれていた魔法陣が動き【念話】が発動する、という仕組みらしい。
発動する【念話】の接続先は、グランドマスターが持つポータル一択らしい。
最大権力者まで情報の伝達が簡単に出来る様にするのは、凄い発明だな。
チラッとオルを見ると、どうやら現在説明中のようだ。
「―――ってところだね。これですべてさ」
どうやら説明も終わったようだ。
『なるほどな。確かにその情報は大きいな………』
水晶の向こうから、グランドマスターの唸る声が聞こえる。
『………なぁ、オルゼ』
「なんだい?」
『その情報の提供者を教えてもらう事は出来ないか?』
「アタイが信じられないかい?周りに疑われるような生き方はしてないんだけどねぇ?」
セルディマの言葉にそう返すオル。
自分の生き方を間違って無いと断言できるオルは凄くカッコいい。
『んにゃ、俺らは疑っちゃいないよ。各国の王達もだ。俺らは『オルゼ』を知ってるからな』
「だろう?」
この世界の上役とオルの会話を聞くと、どれだけオルが凄いか分かるな。【純銀】級で世界からこんな扱い受けているとか、ホントどんな生き方をしたんだろうな。俺も大まかな事しか知らないから、どこかで一度詳しく知りたいな。
『だが王様が信じてても、宰相や大臣と言った幹部が不審がってるんだよ。自分達子飼の諜報部隊で調べられなかった情報を何故知ってるか、ってな』
「そうかい………」
そう言いながら俺の方を見るオル。
どうする?と聞いているようだ。
まぁ、コウの姿で出れば問題無いだろう。
ガスマスクを付け、ローブを精霊界から持ってきたものに変えてフードを被る。
「その情報は僕が提供したものですよ」
そして、声を上げると同時にオルの隣に立つ。
水晶を見てみると、そこには赤髪を逆立てた青年が映っていた。
あっぶねー、やっぱ顔映るのね。ローブ被ってて正解だった。
『………誰だお前は?』
突然現れた俺を見て、セルディマは怪訝そうな表情を浮かべる。
「どうも、初めまして。コウと言います」
『何?………まさか、グランディアに出た飛竜を倒したって奴か?』
「えぇ、その通りです」
俺の返答を聞いたセルディマは、一度頷く。
『おう、嘘はついてねぇみたいだな。それとお前、なんかすごい呪い持ってねぇか?』
うぉ、なんか一瞬で色々バレたっぽいぞ………!?
『どうやら、コウは俺のスキルを知らないらしいな』
「え、えぇ。名前だけは効く機会が多かったのですが………」
あんまりそれ所じゃ無かったというか………。
『公表している分を教えてやるぜ』
そう言ってセルディマは俺に自分のスキルの一部を教えてくれた。
『一つ目は【真実】。このスキルは、隠蔽、嘘と言った偽りの物全てを見抜く事が出来る』
「え゛っ」
『二つ目は【健康】。睡眠、麻痺、毒と言った状態異常が一切効かない』
「う゛っ」
『三つ目は【鑑定】。これは説明しなくても分かるよな?』
「うばぁ………」
全部バレてんじゃねぇかよ!
正直リアルがしんどすぎるので、不定期になりそうです。
最低でも週1は更新する予定ですけど、具体的な日数言って守れた事がな(殴




