23.何だったんだ、一体………?
遅れて申し訳ありませんでした!
まさか夕方に仮眠を取ったら、そのまま朝になるなんて………。
一閃の光がドラゴンを貫く。
ギュォォァァ…ァァ……ァ………。
胴体に大穴を空けたドラゴンは断末魔の声を上げ、そのまま前向きに倒れる。
ドォォンッ!
轟音を上げて倒れたドラゴンの前に、俺はいた。
俺がドラゴンを貫通できたのは、【勇士の飛蹴】でドラゴンに刺さっていた聖剣ごと蹴り抜いたからだ。
足元には、砕け散った聖剣の残骸が転がっている。やはり、耐えきてなかったようだ。
俺もいい加減、自分専用の武装を用意するべきか………。
「ふぅ………」
膝をついていた状態から立ち上がり、様々な意味を込めた安堵の息を漏らす。
ドラゴンを何とか3分以内に撃破出来た、という精神的な安堵もある。ていうか、初めはそっちの方が大きかったはずだ。
だが冷静になって気づいた。
今、すっごく危なかったッ!
確実にドラゴンを撃破したという自信から気を抜いてしまったが、コイツに潰されたら俺死んでた可能性すらあったんだよ。
コイツの鱗は魔法が効かない。そして俺が先ほどまで取っていた防御手段は【王覇】。
完全に貫通してた………!
やはり最後まで気を抜くのはダメだな。反省。
頭を左右に振って気持ちを切り替えようとすると、猛烈な気持ち悪さが俺を襲う。
忘れてた。急激な連続高速移動で酔ってたんだった。めっちゃ吐きそう。
「【状態回復】………ダメか」
状態異常や病気を治す【状態回復】を使うも、気持ち悪さは引かない。だが、先ほどよりは幾分とマシになった。
反省も若干の回復した所で、後ろを振り返る。
地に伏したドラゴンはまだ生きていた。
胴体に風穴を開けられるという瀕死の重傷を負いながらも、未だに俺の事を睨んでいる。
戦意は全く衰えていない。
「お前は凄いなぁ………」
思わずそう漏らす。
俺も腹に穴を空けられて一度死んだ身として、その状態で尚それだけの意思を見せられるのは凄いと素直に思う。
ドラゴンはこんな状態でも、未だに圧倒的な存在感や雰囲気を出している。
遠目から見たら、死にかけの様には見えないだろう。
なんというか、元々の格が違うわ。
自分で言うのもなんだが、俺だって今みたいな【精霊憑依】中だと、かなりの強精霊としての雰囲気を出せていると思う。
だがそれは雰囲気だけだ。俺の中身がこの雰囲気に釣り合ってない。喋るとガッカリになるという感じだろうか。
俺もいつかはこんな堂々として、どっしりとしたヒーローになりたいものだ。
それだけに惜しい。
ココでコイツを失う事が惜しい。
「なぁ、ドラゴンさんよ」
噛まれない程度の距離まで近づいて、話しかける。
普通に近づいたらコイツ絶対噛み付いてくるという確信があった。
何だ?と言わんばかりに俺をじっと見る。
「俺と一緒に行かないか?」
グルゥ………?
コイツ何言ってんだ?みたいな呆れ顔をされてしまった。
「俺は素直にお前をスゲェと思っちまったんだよ。そしたらお前が死んじまうのが惜しくなってな」
ドラゴンは俺をジッと見つめたままだ。
「怪我なら問題無い。【従属】で俺の仲間になったらHPがMAXに回復するんだよ」
どうやら【従属】にはそういう効果があるらしい。魔物と戦ってから仲間にする事の多い召喚士にとっては重要な効果だそうだが、使う予定が無かったので俺も最近まで知らなかったのだ。
だって【血の眷属】の方が色々優秀なんですもの………。
「俺はお前が気に入った。だからどうだ?」
ドラゴンに再度問いかける。
その返事は―――。
ガウッ、グルゥァッ!
「うわっ、っぶないなぁ!?」
首を横に振り、おまけにブレスを撃たれた。
どうやら拒否られたらしい。
でもなぁ、コイツ行動と態度が噛み合ってないんだよ。
実際に俺の誘いも断ってるし、ブレスを放ってみたりしてるし、一矢報いようとすれば俺に反撃だって出来るのだ。
なのに先ほどからコイツはまともに攻撃してこない。
ブレスもじゃれ合いの様に威力が抑えられてたし、いくら残りHPが低いとはいえ暴れようともしない。
今も俺をジッと見つめているだけだ。
個人的な感じ方だが、反逆や抵抗、絶望といった負の感情は全く感じない。
唯々俺を見つめているだけ、という感じがする。
仲間にもならないが、反抗や抵抗もしない。
「あーもう、わからん」
ダメだ、コイツの意図が全く分かんねぇ。
考え込めば込むほど気持ち悪さが増していって、全く頭が回らない。
「お前はどうしたいんだよ?って言って答えてくれたら楽なんだけどな………」
ガウッ!
「うおっびっくりしたぁ」
思わず本人に愚痴ると、返事が返ってきた。
「って………」
驚いたのもつかの間、突然全身から光が溢れて周囲に飛び散っていく。
【精霊憑依】解除の合図だ。
やべ、3分経っちまった。
光が拡散して周囲が元の明るさを取り戻した時、俺はいつもの姿に戻った。
【精霊憑依】化の影響で髪がほどけたのでバラついた金髪に、ローブの袖は千切れて微動だにしない左腕、そしてガスマスク。
今の俺、中々にエグいな。
精霊組は精霊界に戻っている。全員MPが死にかけだったからだ。調子に乗って使い過ぎた。
「うぉう………」
そんな俺もMP残量はごく僅かだ。昔みたいにそう簡単に気絶はしないが、それでも元からの気持ち悪さに加えて頭痛も増したので満身創痍だったりする。
ギュルゥァァァァァッ!
そんな俺を見たからか、急にドラゴンが起き上がる。
こいつまだそんな余力が、ってまずいっ!?今の俺じゃロクに抵抗が出来ない!?
『シロっ!』
『………すぐ行く!』
【眷属念話】でシロを呼ぶも、正直離れれているので即座には来れないだろう。
さぁ、この状況をどう凌ぐか。
回らない頭を無理やり回そうとする。だが、積み重なった疲労と怒涛の気持ち悪さに全く考える事が出来ない。
くそっ、なんでこの気分の悪さに【状態回復】は効かなかったんだよ。
「って、ホントにまずっ………」
遂に足に力が入らなくなり、座り込んでしまう。
俺はその状態からドラゴンを見上げる。
やはりドラゴンの胴体には大穴が開いており、先が長くないのは分かる。その状態で命を削りながら立っているようだ。実際に立ち上がったはいいものの、かなりフラフラしている。
ドラゴンと目が合う。
相変わらず俺の事をジッと見つめている。よく見たら、立ち上がったくせにコイツから攻撃の意思が感じられない。
コイツがどうしたいのか、本当に分かんねぇや。
思わず苦笑いがこぼれる。
そんな俺を見たドラゴンは、苦しみを抑え込みながらもニヤッと笑って見せる。凄く人間臭い笑みだった。
ギュァァァァァァァァァァ!!
ドラゴンが咆哮を上げる。
その様子は最後の力を振り絞っているように見えた。
ドラゴンの全身が、鱗の色と同じ深紅の魔力で覆われる。
すると徐々にドラゴンの肉体が魔力へと変質していく。変わっていく事に、全身がうっすらと淡くなっていく。
「おいおい、何をしてるんだコイツは………」
俺の疑問が聞こえたのかは知らないが、ドラゴンが俺の方を見る。もう既に全身が魔力となってしまっており、今にも消えてしまいそうだ。
ガウッ!
ドラゴンが一声鳴くと、深紅の魔力が俺の方へ流れて来る。
「おわっ!?」
そしてどんどん俺の中に入っていく。
「おまっ、何をしてるんだよ!?」
思わずドラゴンに向かって叫ぶも、ドラゴンは消えかかった姿のまま『ざまあみろ』と言わんばかりの笑みを浮かべている。
だが、その笑みには俺を貶めようとする悪意を一切感じなかった。寧ろ悪戯が成功して喜ぶ子供のような笑みだった。
ガウゥ、グルゥァ!
最後に何かを伝える様に鳴くと、遂に全ての魔力が俺の中に入ってしまった。
「何だったんだ、一体………?」
俺はドラゴンが居なくなった安堵と緊張感の解放から、そのまま後ろにひっくり返る。フサフサの草が気持ちいい。
アイツは本当に何がしたかったんだr―――。
「ッ!?がぁッ!」
突然全身がきしむ様な、いや絞り上げる様な激痛が襲う。
特に元々痛かった頭痛が極端に悪化している。この世界で味わった中で断トツでキツイ。
絶対あのドラゴンの所為だろぉ!
歪む視界。軋む頭。耳鳴りが止まらない。
「―――じ様ッ!」
そんな中、シロの声が辛うじて聞こえる。
って、予想以上に速いな。シロも成長してるんだなぁ。
そんな現実逃避のような事を考えながらも、徐々に意識が遠くなる。
「……シ……ロ………」
声が聞こえた方向に右腕を伸ばす。
だがそれも空しく、意識は落ちる。
俺が最後に目にしたのは―――。
深紅の鱗を纏った右腕だった。
『特例事項多発により、再びスキルガイダンスを送信します
戦闘中にスキルを取得しました。
スキル【咆哮】を取得。
スキル【魔翼】を取得。
スキル【閃手】を取得。
スキル【空天】を取得。
スキル【高速飛行】を取得。
深紅竜ガーベラと一体化した事により、種族が『精霊竜』に変化しました。
スキル【竜装】を取得。
スキル【竜の息吹】を取得。
大まかな変更点は以上です。
以上でスキルガイダンスを終わります』
この調子で申し訳ないのですが、水曜も遅れるかもしれません。




