18.それはアタシの指示だよ、シロ
やってしまった………。
更新が止まってしまいすみません!
☆ シロア ☆
私は今回の演習は兄様とは別の班だった。
なんでも「いつもべったりだから、偶には離れろ」と冒険科の教官がワザと外したらしい。
兄様を『回復士なんて、パーティの役立たず』と罵ったり、パーティ編成を見知った仲間同士じゃなくてくじ引きで決めたり、本当に無能だと思う。本当に冒険者だったのかな?
まぁ、兄様のいない行事に意味など、殆ど無いだろう。
私は、他のパーティメンバーらしき男達が話しかけてくるのを流し続け、魔物を一人で倒し続けて早々にノルマを達成させ、グランディアに帰還した。
兄様との繋がりによれば、兄様はまだまだグランディアの遠くに向かって進んでいる。
きっと、兄様のパーティメンバーになっていたセレナやカナン達が、どんどん進んでいるのだろう。あの四人はぐいぐい来るからね。私に「戦い方を教えてほしい」と頼み込んできた時も断り切れ無かったもん。
でもあの四人は嫌いじゃない。言いたい事はちゃんと言うし、四人とも仲が良いから一緒にいてて不快な気持ちにならないし。
だから、今回の演習で兄様と別の班になった事自体は、問題無いと思っている。兄様やクリス先生がいれば、あの四人も安全だと思うし。
それよりも今の私がするべき事は、兄様の為の食事の準備をする事だ。
ラーナは、同郷の精霊に呼ばれて渋々精霊界に帰っている。母様もオルさんと一緒に街に出かけている。だから今、兄様のお世話を出来るのは私しかいない。ここはリネア姉様から受け継いだ直伝の料理の数々を披露するしかない。
私はやる気を漲らせて料理の準備を行う。
料理自体を作るのは、兄様がこの街に帰ってきてからだ。料理は暖かい物を食べてほしいしね。それで、料理をおいしいと褒めてもらえれば、それで一日は幸せだ。
え?兄様と止まっている部屋が違うだろって?
そんなの、兄様のお世話をしない理由にはならない。私は兄様の二代目専属メイドであり、兄様の奴隷なのだ。奉仕やお世話は当たり前だ。
ちなみに初代専属メイドはリネア姉様だ。自分で言ってた。
そうこうしている内に、兄様の反応が城壁付近まで来ていた。
そろそろ作り始めようかな?
と思ったが、何か様子がおかしい。
セレナ達やクリス先生と一緒に居る筈なのに、【転移】を使っているっぽい。反応がちょくちょく飛んでいる。
と反応を探っていたら、兄様の反応が町から離れていく。どうしたんだろう?
疑問に思った私は、料理の準備をそのままに外に飛び出す。
「………【完全隠密】」
私がスキルを発動させると、体全体をうっすらと薄い膜のようなもので覆われる。この膜は私が動いても、しっかりと体に張り付いている。
私は、兄様の眷属になった時にもらったこのスキルが好きだ。
このスキルがあれば、兄様が私に戦闘で担ってほしい役目である『斥候』として、最高に近い活躍が出来るから。
だって誰にも気づかれない。
これは『斥候』として最高の能力だと思う。クリス先生にはまだ言ってないが、このスキルの事を話せば悔しがると思う。
そしてこのスキルは私が眷属化の際に願った希望通りの能力だ。
私の希望はただ一つ。
『常に兄様と共に』
今までの私だったら、常に兄様の下にいる事は出来なかった。『獣人』というだけで行動範囲は狭くなってしまっていた。
生まれてきた種族を後悔した事もあるが、むしろ兄様は『獣人』である私が好きらしい。なんでも「もふもふわふわふは至高」とかなんとか。あの時はちょっと目つきが怖かった。
でもこのスキルがあれば、ひっそりとではあるが兄様の下にいる事が出来る。何かあった時にすぐに兄様の所に居られる。
もう目の前で兄様が死ぬのは嫌だ。
「………今回は断られたけど」
私は、屋根の上を飛び移りながら愚痴をこぼす。
兄様は一度死んだ事の重さや、私や母様がどれだけ悲しんだかを考えてほしいとは思う。まぁ、精霊王になって帰ってきたのは、流石兄様と思ったけど。
そんな事を考えながら、一度兄様の反応が飛んだ城門に到着する。
クリス先生の特訓のお陰で、障害物を生かした移動法といった斥候に大切な技能は格段に上昇したと思う。実際、今街の中を飛び回ってみて実感したところだ。予想よりも早く目的地に着く事が出来たし。
近くの建物の上から城門付近を見渡すと、辺り一帯ががざわついていた。
「………どうしたんだろう?」
誰かに事情を聴こうと思って人を探してみると、クリス先生とセレナ達団体を見つけた。
近づこうと思ったが、【完全隠密】を発動させたままだったので解除すると、私が近づく前にクリス先生がこちらを振り向く。凄い察知能力だ。
「ん?クリス先生、急に振り返ってどうしたんですか?」
「いや、今急に魔力反応が出現したから何事かと思ったんだが………」
「………私」
「わぁっ!?」
「うひゃぁ!?」
「きゃぁっ!?」
「きゃっ」
突然現れた私に盛大に驚いて見せる四人。カナンの驚き方は女子としてどうかと思うけど。
「やはりシロアか………。どうやら、レイと二人してまだ力を隠していたようだな………」
本当にクリス先生はすごい。私が急に出現した事から色々察したっぽい。あの冒険者かすら怪しい教官とは大違いだ。
それと、やはり兄様は隠してた力を使ったみたい。やっぱり何かあったみたい。
「………うん、それに関しては兄様と一緒に話します。………それよりも兄様はどうしたんですか?」
同じ班のはずなのに兄様だけいないのは、どういう事なんだろう?
疑問気な私にクリス先生は答えてくれる。
「ドラゴンが出たんだ。その相手をレイが一人ですると言って消えたんだ」
「っ!?」
ドラゴン!?その相手を兄様が!?
「………私も行くっ!」
「待てッ!」
踵を返す私の腕をクリス先生が掴む。
「………離して下さい!………兄様が、兄様が!」
「焦る気持ちも分かる!だが、今は町から出られないんだ!」
飛び出そうとする私に、クリス先生はそう言う。
「………ッ!?なんでっ」
「それはアタシの指示だよ、シロ」
私が理由を聞こうとすると、横から声が聞こえた。
振り向くとそこにいたのは、母様とオルさんだった。
「今、街にいる冒険者をかき集めて討伐隊を組んでるんだよ。門を空けないのは、逃げ出す冒険者を抑える為さ」
オルさんは理由の説明を続ける。
「こういう、緊急事態には冒険者が相手すると決まってるんだよ。それくらいしないと街に荒くれ者共を置く意味は無いからね。流石に低級は前衛には出さないが、それでも町で後詰めや補給役くらいはしてもらわなきゃ困るんだよ」
そして私を見る。
「だからシロにも出てもらう必要がある。それまで待ってくれないかい?」
よく見るとオルさんは母様の手を握っていた。
「そりゃアタシだって、無茶してる孫を助けに行きたいさ。でも長になってしまった以上、周りに言う事を聞かせる為には自分から守らなきゃいけないんだよ」
「ねぇお母さん。私だけでも行ったらダメかしら?ドラゴンくらいなら倒せる自信はあるわよぉ?」
「ダメだ。今回のドラゴンは魔法が効かない。そんな奴相手に魔術師を放り出すほど馬鹿じゃないよ」
「お願いよぉ~」
母様は握られた手を揺っている。母様も早く兄様の所に行きたいんだろう。
「まぁそんな訳だからシロも待ちな。それとクリス、アンタも来てくれないかい?人手が足りてないんだ」
「了解した。私も行こう」
「それと学園生は町中に避難しときな」
「は、はいっ!」
そう言ってオルさんは色々と決めて行った。
そして少し経って城壁の外に冒険者が集まった。
ようやく動ける。
今回の任務ははドラゴン『討伐』ではない、『撃退』だ。
人を集めた結果、討伐は不可能と判断されたらしい。なので、撃退に方針が移行したのだ。
慄く冒険者たちを引き連れ移動しようとした時。
遠くの森から光の柱が上がる。
そして、光の柱は空を両断する。
あれは………!
「………兄様!」
勘だけど、たぶんそうだと確信する。もう、ドラゴンと戦っているみたいだ。
母様と目がある。互いに頷く。
そうして駆け出そうとした時、遠くから叫び声が聞こえた。
………ギュァァァァァァァァァァッ………
ドラゴンの咆哮だ。それと同時に、森一帯が光に包まれた。
「まずいわ!ブレスよ!」
母様が慌てた声を上げる。
そんなっ!?兄様ッ!
遠くから、何かが飛んでくる。
思わず動きを止める。兄様との繋がりが反応している。
「母様ッ、あれ!」
母様を呼び止める。母様も立ち止まって、飛来物を見る。
それは、白いフードに包まれた兄様だった。
血を撒きながら飛んでくる。
「レイっ!」「兄様っ!」
そうして兄様は城壁に突っ込んだ。
今回見直しをあまり行ってないので、分が無茶苦茶だったかもしれません。
恐らく後で修正が入ります。




