13.どう見たって、生半可な攻撃じゃあ効かないだろう………?
水曜日から実家に帰省するので、下手すると月曜日まで更新が止まると思われます。
ご了承ください。
「それでは、これから現地演習を始める!」
冒険科の教官の号令が聞こえる。
社会見学二日目の朝。
現在地グランディア城壁の外に、学生全員で集まって朝礼中だ。
本日の予定は、グランディア付近の草原や森の魔物との戦闘訓練だ。
今回来ている一年生全員で80名。
それをくじ引きで5人組、計16班に分けてそれぞれで戦闘を行うらしい。
勿論殆どの学生が魔物と初戦闘になる。
その為、各班に一人先生が付いて、緊急時に備えている。
皆初戦闘って、ここに来る時の身分証明、何を使って入ったんだろうね?
冒険者ギルドカードを持ってる人、殆どいないっぽいんだよね。
まぁそんな訳で今から初陣になる人が多くいるだが、そんな戦闘パーティをくじ引きで決めるのは愚策としか思えないんです………。
だって、パーティによって役職が偏ってる所が多いんだよ?
ちなみに俺の班は、剣士・剣士・剣士・剣士・回復士というパーティ構成になっている。
偏りがひどすぎると………。
更に、俺以外全員女子で、しかも全員が初陣という危なっかしさ。
見てくださいよ、パーティメンバーのあの目。
明らかにお荷物を見る目をしてるんだよ。
確かに俺は普通の魔術師や回復士と違って、杖を持っていない。
単純に要らないからだ。
杖を使う目的は、体内で起こした魔力を触媒にして、杖で増幅させて威力を上げる為に使っているのだ。
だからこそ魔術師や回復士は、杖を使って少しでも魔法の威力を上げようとしているのだ。
だが、俺は精霊だ。
杖なんざなくても、魔法を使う事が出来る。
それに俺が杖を使うと、MPが多すぎて杖が壊れてしまうのだ。
だが傍目にはそれはわからない為、俺は杖を使わない馬鹿という風に見られている。
いやそれでもいくら回復士が弱くても、回復士無しでパーティ戦は出来ないと思うんだ?
だって初陣って事は、絶対皆怪我するだろ?
俺だって初戦闘は………………、あ、初戦闘あの孤児院の男だったわ。
怪我どころか死んでましたわ。
「さて、5人揃ってるな?」
俺がアホな事考えてると、いつの間にかクリス先生が俺たち五人の前に立っていた。
クリス先生は、腕と脛にのみ金属の鎧をつけ、残りは薄い皮装備を纏っていた。
斥候らしい、軽装備だ。
でも腰に差している沢山のナイフは気になります!
実はクリス先生が俺達の班の引率者なのだ。
戦闘について分かる人がいるとすごい助かります!
「それにしても見事に偏ってるな………」
クリス先生は俺達の班構成を見て、そう溜息を零す。
「まぁ、ココの魔物くらいなら何とかなるか………。レイ、お前の負担が大きいが頑張ってくれ」
「はい」
「それじゃあ、出発するぞ」
「「「「「はい!」」」」」
五人で同時に返事をする。
さて、こんなパーティで大丈夫かな………?
先に言うと心配は全くの杞憂だった。
このパーティの剣士娘4人組、初陣にしてはまぁまぁ強かったのだ。
どうやら、新入生組でも上の方の実力を持っているらしい。
魔物討伐初陣だから緊張してあまり動けてないようだけれど、落ち着けばもっと強いんだろうなぁ。
この近辺では主に、ゴブリン、グレーラビット、コボルトといった三種類の魔物が出現する。
どれも、【青銅】級の冒険者でも狩れるほど初心者向けの魔物だ。
ゴブリンは、異世界恒例のあの性欲直結で大量沸きする緑小人で間違いない。
毛皮のボロ布を纏い、明らかに拾い物であろう木の剣や盾を持っていた。
明らかに知能が低く、初陣娘達がキャーキャー言いながら倒せたレベルだった。
気持ち悪いのは分かったから一々叫ばないでほしい。
グレーラビットは、灰色のウサギの魔物だった。
地球にいた一般的なウサギよりも一回り大きいが、すばしっこくて攻撃がなかなか当たっていなかった。
だが、グレーラビットは臆病ですぐに逃げ出す為、途中から剣士娘達は戦闘自体をしなくなった。
グレーラビットの肉、煮込むとかなり柔らかくなるから出来ればほしかったんだが………。
自分から戦おうとしない、ダメ人間です。
コボルトも異世界物でよく見る魔物だが、この世界のコボルトは獣の方に振り切った見た目をしていたので、全く躊躇いなく倒されてました。
見た目が違うだけで、特徴的には殆どゴブリンと同じ感じだった。
そんな俺達だが、剣士娘4人組がなかなか絶好調でどんどん進む。
だが勢いよく進み過ぎて、そろそろグランディアから離れすぎているように思う。
「お前達、それなりに町から離れてしまっている。そろそろ戻るぞ」
「大丈夫ですって先生!そんな危険な魔物も居ないじゃないですか」
「そうですよ~。まだまだ余裕ですってば~」
クリス先生が嗜めようとしているが、勢いづいた4人組は言う事を聞かない。
いや、マジでそろそろ危ないんだよ。
それなりに町から離れているこの場所には、ゴブリンやコボルトの比にならない魔物が出現するのだ。
その中には、オークといったゴブリンよりも強く、また女性を捕えようとする魔物だっているのだ。
オークに捕まった女性の未来なんて確定しているだろう?
実際この4人組ではオークには勝てないだろう。
小型の片手剣使いのセレナ。
シンプルな直剣使いのカナン。
かなり細めなレイピア使いのシオン。
女性にしてはやや大き目な両手剣使いのニル。
確かに全員、一年の中では上の方の実力者だろう。
だがまだ、一年生だ。
当然のように上には上がいる。
例えば四人がかりでもクリス先生には勝てるとは思えないしな。
こんな事を言ってる俺だって、母さんや夕莉に勝てるとはまだ思えないし。
だからこそ、そろそろ撤退しないと、きけ―――。
「ッ!?クリス先生ッ!」
そんな事を考えた傍から、【魔力探知】に大きな魔力反応が現れる。
俺は、こちらに向かってくる魔物を見据えて思わず戦闘態勢を取る。
「どうし、何だと!?」
クリス先生もこちらに突っ込んでくる魔物に気付いたようだ。
腰に差していた沢山のナイフの中から、二本抜いて両手を構える。
「え?どうしたの二人とも?」
「な、何?」
「急に大きい声出されるとびっくりするんですけど………」
「ん~?」
剣士4人組はまだ気づかない。
………ドン、ドン!ドンッ!
「キャッ!?」
だが、響く地鳴りの音でようやく気付く。
「な、何の音!?」
「何かがこっちに来てる………」
「で、でも先生なら大丈夫よね~………?」
4人娘は明らかに格の違う存在が近づいてくる気配に、震えだす。
「………クリス先生、行けます?」
「………正直に言うと、かなり厳しい所があるな」
前を警戒したまま、クリス先生と話す。
「何せ私は速さに特化した竜人だ。だが、今から来る魔物は………」
目の前の木がへし折れる。
そして遂にその魔物が姿を見せる。
「どう見たって、生半可な攻撃じゃあ効かないだろう………?」
俺達の前に現れたのは、2mを超える巨体をした真っ赤な鬼だった。
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