7.そんな細かい事、アタイは一々気にしないよ
明日は出張の為、更新お休みします!
受付嬢について行って、冒険者ギルド一階の真ん中にある大きな階段を上る。
やはりこの上にギルマスの執務室があるようだ。
また、二階には図書館や売店などの冒険者の為の設備があるらしい。(受付嬢談)
ちなみにこの受付嬢の名前は『ルルーラ』というらしい。
一発で覚えました。
二階のフロアの一番奥にある扉の前で止まる。
「ギルドマスター、ルルーラです。件の方を連れてきました」
「いいよ、入りな」
なかなか張りのある声をした返事が聞こえる。
事前に聞いてはいたが、女性のようだ。
「失礼します」
ルルーラさんがドアを開ける。
そこの俺達も続いた。
執務室の中は想像の通りの部屋で、奥に大きい机と椅子、部屋の中心にはテーブルを挟んで向き合うようにソファも置かれている。
この世界は、魔物の皮といった地球には無い素材で家具が作られる。
そのため、地球の質を上回る物が出来上がったりする。
この部屋の家具は派手さは無いものの、価値を感じさせる雰囲気を持った家具が並んでいた。
奥の椅子に座っていた女性が顔を上げる。
「やぁ、初めまして。アタイは、ここの冒険者ギルドのマスターを務めてるオルゼだ」
オルゼさんは椅子から立ち上がると、こちらに歩いてくる。
パッと見、恰幅のいいおばちゃんにしか見えないような見た目をしている。
が、只者ではない事はすぐに察した。
だって、ルルーラさんと同じ目してるしッ!
「ん?下で決闘してたって奴は一人じゃなかったかい?」
「いえ、このローブの方はこの少年の母親らしく、一番最初にあの屑に絡まれたのはむしろこの方みたいでした」
疑問を示したオルゼさんに対し、即座に返答するルルーラさんマジ有能。
「そうかい、それなら構わないよ」
理由を聞いてオルゼさんは納得したようだ。
そして俺らの方に向き直る。
「申し訳ないッ!」
オルゼさんは、謝罪の言葉と共に頭を下げる。
「今回の件は完全にアタイ達の不手際だ。ラルクの野郎はいい加減処罰を与えようとしていたが、一歩遅かったみたいだ」
下で冒険者が言っていたように、ギルドとしてもラルクは悩みの種だったっぽい。
性格さえ治れば優秀な冒険者なので、処罰が躊躇われるていたのだろう。
だが、問題を起こしてしまったらもうどうしょうもない。
「ギルドに無関係な一般人に対し手を出すのは、冒険者としてアウトだ。ラルクは、既に冒険者ギルドを追放したよ」
どうやら、この短時間で処罰を与えていたらしい。
行動が早いな。
この思い切りの良さが、オルゼさんの特徴のようだ。
「それで、アタイとしては、今回の件の被害者であるアンタの望みを聞きたい。アタイとしては、やれる事はやってやりたいが、どうしてもギルドの事も考えないといけないんで限度はあるが」
「当たり前です。そんな事をやっていたらギルドはおかしくなります」
「という、当ギルドの副ギルドマスターがそう言うんじゃ、しょうがないんだよ」
え、ルルーラさん副ギルドマスター!?
かなりのお偉いさんじゃないですか、やだー。
「まぁ、ラルクを軽く一蹴できる実力者は冒険者ギルドとしても欲しい人材なんだよ。だから、こちらとして出来る事はしてやるつもりさ」
オルゼさんは、あっさりと本心を暴露する。
では、色々聞いてみますかね。
「それじゃあ、一つ質問があるんですけど」
「ほぅ、なんだい?」
まさか、質問をされるとは思ってなかったのか、少し驚きの表情を浮かべるオルゼさん。
「『カミア』っていう冒険者知りませんか?」
俺が質問を投げた瞬間、オルゼさんから物凄い殺気が飛んできた。
精霊王(笑)だったラグニより圧倒的に怖い。
「アンタ、それを聞いて何をするつもりだい?」
オルゼさんは俺を睨む。
「下手な事をするつもりなら、アタイは只じゃおかない」
オルゼさんの顔は全く笑ってなかった。
うん、さっさと本題に入ろう。
本気でキレる女性は恐ろしく怖い事を知ったぞ。
「いえ、何もしませんよ」
「じゃあなんでそんな事を聞いたんだい?」
「俺が今からお願いをする上で、重要な確認だったからです、『シスターオル』さん」
「なッ!?」
俺が呼んだ呼び名に、オルゼさんはかなりの反応を示す。
「アンタ、その呼び名をどこで知ったんだい!」
「それはもちろん聞いたんですよ」
俺は隣を示しながら答える。
「『オルは、私を大事に育ててくれたのよ』って母さんから」
「は………?」
オルゼさんが固まる。
目線が母さんのフードに固定されたままだ。
「ね、母さん」
「えぇ、そうなのよ」
俺が呼びかけると、母さんは返事をしながらフードを外す。
青白い半透明な肌が晒される。
「オル、久しぶりね。10年ぶりくらいかしら」
母さんはオルゼさんに親し気に笑いかける。
オルゼさんは、教会に捨てられた母さんを拾った張本人であり、母さんを自分の子供の様に可愛がっていたらしい。
孤児院が魔物に襲われて崩壊した時に、崩落に巻き込まれたが運がよかったらしく、大けがを負っただけで死ななかった。
だがそんな状態でも、孤児院唯一の生き残りとして全員のお墓を建てる為に冒険者になり、成功して見せた女傑らしい。
そんな人物だからこそ、母さんが自分の称号【天涯孤独】の影響を受けさせない為に、迷宮から帰ってきて喜んでいたオルゼさんを避けてたんだとか。
そして、ガルザード帝国に嫁ぎに行ってから、一度も会っていないらしい。
「カミア………」
オルゼさんは呆然としたまま、口から零れ出たように母さんの名前を零した。
「こんな親不孝者で御免なさいねぇ。やっぱり魔物になった私は、もうオルの子供じゃないかしら?」
動かないオルゼさんを見て、母さんは悲しそうな顔をする。
だが、オルゼさんは即座に首を振る。
「そんな訳あるかい、あんぽんたんが。どんな姿に、なろうとね、グスッ、自分の子供は、可愛い、ものなんだよ」
オルゼさんは、涙を隠す事無く零しながら母さんに近づく。
「今のアンタは、触れるのかい?」
「えぇ、でもすごく冷たいわよ?」
「そんな細かい事、アタイは一々気にしないよ」
オルゼさんは母さんをぎゅっと抱きしめる。
まるで、腕の中に母さんがいる事を確かめるように、しっかりと。
そんなオルゼさんを見て、母さんも涙目になりながら、抱き返す。
「お帰り、カミア」
「ッ!?」
その言葉に、母さんの涙が止まらなくなる。
「ただいまッ………。遅くなってごめんなさいッ、お母さん!」
そうやって、二人は長い間抱きしめ合っていた。
その後、満足するまで抱き合った二人は、互いに会わなかった間の話をする。
その話の中でシロの事も紹介したので、今は母さんの隣に座って、ルルーラさんの出すお菓子を食べている。
そして身分証明の話だが、ものすごくアッサリと通った。
曰く。
「自分の子供や、孫、その兄弟なだけでアタイとしては十分だよ」
オルゼさんまじかっけー。
現在母さんとオルゼさんは、雑談タイムに入っている。
正直、時間には全く困っていないので、ゆっくり語り合ってほしい。
こんなに嬉しそうな母さんはなかなか見た事無いので、思う存分親子の会話を楽しんでください。
「だから母さん、俺を膝の上に乗せるのやめない!?」
流石に俺、もうそこまで子供じゃないよ!?
そんな俺を尻目に、にこやかに会話する母さんとオルゼさん。
「それにしても、アタイもこの年でもうおばあちゃんか。時間が過ぎるのは早いねぇ」
「私もお母さんみたいになれるよう、可愛がっているのよぉ?」
しみじみするオルゼさんと、俺の頭を撫でてくる母さん。
いいから降ろしてくれぃ!
二人は夜まで喋りこんだが、一度も降ろしてくれなかったです。
次回は話をぶっ飛ばすかもしれません。




