4.もうっ、坊ちゃまは元気ですねぇ、いい事ですよー
話を変更しました。
そして最後に俺と夕莉の現状について話してみようと思う。
夕莉はスキルを思い出すための猛特訓を続けており、様々なことに手を出している。
ステータス上力が必要になる行動は苦手らしいが、MPを使うスキルや手先を使って物を作るのは得意だとか。スキル上げもその付近を集中して行っているそうだ。
ただ村での立場としては、急に現れた部外者と思っているものも少なくないらしく、現在は村人たちとの交流を頑張って、村の中の基盤を固めているらしい。
知識チートでなんか助けになれればいいんだが、あいにく何も思いついないんだよなぁ。
マヨネーズとか基本だと思っていたんだが、卵を食べる習慣がこの世界にはないらしい。
これで下手に手を出して毒だったりしたらそれこそ本末転倒なので、却下となっている。
夕莉とは【念話】で毎日話をしているので、常に互いの状況を報告しあっている。
そういえば【念話】には隠れた技能があった。
『言語理解』だ。
夕莉はこの世界に来てから器に引っ張られているらしく、この世界の言葉でしゃべっている。
ただそれだと、この世界に来たばかりの俺では理解ができず話すことができないので、夕莉の【念話】がわかるように俺もこの世界の言葉が理解できるようになっていた。
思わぬ副産物がついていて嬉しい。
まあ、今のとこ夕莉には問題はあまりないらしい。
問題は俺なのだよ。
「坊ちゃま?」
俺が変な顔をしていたのか、赤色の毛で覆われた猫耳をピコピコしながら猫耳メイドが不思議そうな顔をでこちらを見ている。
この子の名前は、リネア。17歳。苗字はないらしい。
自分が住んでいた村が飢饉に襲われたため借金奴隷として自分を売って、お金を村に入れているらしい。そして、借金を働いて返しきったら村に戻れる契約だとか。
契約者は母さんなのでとっても安心。
今は俺のお世話係になり常に行動を共にしている。
というか常に抱っこされている現状。
いや、俺も摑まり立ちもできるし、たぶん頑張れば歩けるんじゃないかな?
それでも抱かれているのには理由があるんだ。
MP0を常に行っているせいですぐに気絶するから、俺は軟弱扱いとなっているからだ。
赤ちゃんの頃はよく寝てるなー程度で流されていたんだよ。
ただベットから出て外で動いていると、ぶっ倒れる頻度の多さに騒ぎになり、何かの病気かと思われた。
まぁ、検査の時には魔法を使うのをやめていたから原因はばれてない。
ただ、検査の時横にいた母さんの目が光っている気がするんだよなぁ。
結局原因不明だったので、気絶しやすい体質ってことになった。
もっと詳しく検査されそうになったんだが、それは流された。
俺は王族と言っても三男らしい。
そして上二人が両方とも男で、うちの母さんが元冒険者で王の側室らしい。
そして、父様や上の兄貴にあったことは一度もない。
どうやら、二人の兄貴と、父様、果ては他の貴族に俺は嫌われているらしい。
ただでさえ、庶流の血が混ざっているのに、よく気絶する虚弱体質で、獣人が好き。
明らかに変人扱いだった。
【女群集の呪】のせいもあるんだろうけどさぁ……。
まぁそんなことを考えるのはやめよう。気が滅入る。
MPのお話をしよう。
MPは確かに増えている。
ただ、【回復】を使い続けるのは大変だった。
どうやら、回復魔法はMPを予想より多く使うらしい。なので気絶したらMPを回復しきるまでに時間がかかってしまい、効率が悪かった。
なのでじわじわとMPを使う新しい魔法を作ってみました。
【継続回復】:体内の細胞を活性化させ、持続的に回復を行う。
うん、前回新しい魔法を作るのは難しいって話をした後なんだけどさ。
どこかのゲームの説明文を思い出してその通りに発動するように試行錯誤して、ついこの間完成しました。
作った理由として、気絶を繰り返しているようじゃMPがついても体が動かせないため、動き回るために『MPを使いながら行動できる魔法』をが欲しかったので頑張りました。
いや、【回復】だと、唱えたらすぐMP0になるから、動けなかったんだよね。
だから作ったんだけど……。
「おうあー(訳:おろせー)」ジタバタ
「危ないですよ、坊ちゃま!落ちたらけがをしちゃうんですからね?」
ギュー
リネアがかなり過保護になってしまってあまり歩かせてくれないんですよ。
獣人はどうやら力が強い。まぁ、赤ん坊が勝てるわけないんだけどね。
その代わり、魔法は使えないらしい。
エルフとはここが逆だな。
まぁ、そろそろ運動を始めたいと思っている。
そのためには、リネアから脱出しないと……!
ジタバタジタバタ
「もうっ、坊ちゃまは元気ですねぇ、いい事ですよー。でも今はだーめです」
ギュー
リネアには勝てなかったよ……。
最近夕莉と話すとが念話越しにジト目をしている気がします。