24.人の話の途中にくだらねー事考えるからだ、バカタレ
文増量計画中。
「な、何で姉御が二人いるっすか!?」
そろそろ人生二度目の死を迎えるのか、と本気で思い始めた俺の耳に叫び声が聞こえた。
そういえばもう一人飛び出してきてたな………。
精一杯締め上げられる首を頑張って右に逸らし、声の方向を見る。
「あ、姉御………?」
そこには、明るいブラウンの髪を後頭部の上辺りで纏めたフワフワのお団子と、耳から前に伸ばした髪が腰まで伸びているやたら長い触角ヘアーというダブルヘアー持ちの元気っ娘っぽい美少女がいた。
その女の子は黒色というこの世界では逆にレアな色の瞳を収めた若干のツリ目をこちらに向け、恐る恐る俺とミナ姉の絡みを見ていた。
一つ言わせてくれ。
『異世界の精霊』というファンタジー全開の生き物の癖に、元の世界の女子高生にしか見えないッ………!
もう制服着せたら、完璧地球でも馴染めるレベルの女子高生感が出ている。
『~っす』って口調からして完全に部活の後輩というポジションが適役過ぎる。
体操服姿で是非とも『先輩ッ!』って呼んでほしい。
おっと思わず前世での願望が………。
「てめぇずいぶん余裕そうだなぁ………!」
ミナ姉の締め上げレベルが上がる。
違うんだよ………!
余裕なさ過ぎて、むしろ走馬灯で前世が見えてるんだよ………!
ミナ姉の腕を結構全力でタップする。
まじでギブッ!
「ふんっ」
「んばッ!?」
面白くなさそうな声を漏らしたミナ姉にぶん投げられて、俺は廊下に顔面ダイブした。
やっと、息ができるッ!
「ハァ、ハァ………。ミナ姉がガチすぎる………」
「人の話の途中にくだらねー事考えるからだ、バカタレ」
「むしろ余裕が無くて、普通の事が考えられなかったんだよ………」
呼吸を整え、ようやく落ち着いてミナ姉と向き合う。
向こうも、すっきりしたのか落ち着いている。
「なんか予定と色々違ったが、何とか合流できたな」
「本当に予定と違い過ぎるんだよ、まったく」
「それでもまた会えたんだ、過程はどうでもいい」
本気でそう思う。
「いいわけあるかよ………」
ミナ姉は呆れた様子を見せながら笑う。
いつも通りの俺らだ。
「俺が死んだ時、躊躇い無く助けてくれてありがとう。おかげでまだ生きてられるよ」
「………………おうよ」
ようやくあの時せわしなくて言えなかった言葉を言えた。
言いたい事言えて、やっと色々心境的に落ち着いた。
ミナ姉は俺の顔をまったく見ないで、斜め下を見ながら返事をする。
ミナ姉はまっすぐに気持ちを伝えられる事に弱い。
孤児院にいた頃と同じで、すごく安心する自分がいた。
ぶっ飛ばされて気絶してたリボルを回収して、全員でミナ姉達がいた大部屋に集まる。
俺とリボルが暴れてしまったので、精霊王には潜入はバレてるだろうから隠れるのは無駄と判断した。
そして、数多の精霊の力を使える精霊王から逃げる事も難しいと感じた。
なので、いっその事ここで迎撃してやろう、という結論で落ち着いた。
で、精霊王が来るまでの間、MPの回復と互いの連携を取るために話し合いを始めた。
俺が【魔力探知】をこまめにバラまいてるから、精霊王が来たらすぐに迎撃態勢を取れるように各自準備はしてある。
そこでシーラに俺の自己紹介と、互いの今までの状況を伝え合う。
俺の話を聞いた後、ミナ姉からは「やっぱお前いろいろぶっ飛んでるわ………」と安定の呆れ顔をされ、シーラからは「なんだかわからないけど、レイ先輩はすごいんすねッ!」とキラキラした目で見られた。
初めから先輩呼びで呼ばれた俺は心の中で歓喜したのは秘密だ。
その後ミナ姉の話も聞く。
どうやら、ミナ姉は捕まった精霊を既にかくまっていたらしい。
通りで捕まっていた女精霊が、ミナ姉とシーラしかいなかった訳だ。
どうやらミナ姉は乗り込んで精霊王と対峙した時、即座に俺じゃないと確信したらしい。
で、このまま戦うと魔法が効かない精霊王相手に勝てるわけが無いと感じ、見た目が違う事を活かして時空精霊というのを隠してワザと捕まり、他の捕まってた女精霊を救助したとか。
でも自分も別空間に隠れると、恐らくここに来るであろう俺と入れ違いになると判断した。
んで、捕まってた精霊の中にいた『結界精霊』であるシーラだけ残し、扉に結界を張らせて粘っていたらしい。
「緊急時は逃げられるからって、ミナ姉はなかなか無茶をする………」
「だって体を渡したはずなのに、俺が時空精霊の力を使えたんだぞ?お前に何かあったと思うだろうが」
ミナ姉が言う事は俺も疑問だったのだ。
何故、ミナ姉と入れ替わったはずの俺がミナ姉の能力が使えないのか。
何故、俺はまだ精霊王になってないのにミナ姉は復活したのか。
何度考えてもわからない。
まるで俺が別の精霊として転生したかのようだ。
そうだったら辻褄が合うんだがな。
「とりあえず俺が時空精霊じゃない何かになってるのは確実だな」
「そうねッ!ミナがここにいて時空精霊の力を使っている時点でアンタは別の精霊よッ!」
「ケロケロ」
「だな」
「そうっすね」
総意だ。
「俺、何の精霊になっちまったんだろうな?」
私、気になりますッ!
「それもだが、今の名前はラーナだったか?何で下級の姿なんだ?」
ミナ姉が突っ込む。
「あ、コイツ戦闘出来ないだろ?だから俺にくっついてもらって、俺が精霊王との戦闘の時もラーナを守るんだよ」
別空間に行くか?って聞いたら全力で拒否られたしな。
「ケロケロッ!」
そうだ!と言わんばかりにラーナは胸を張る。
やっぱカエルの姿の時はふてぶてしさがあるな。
「へぇ、確かに戦闘中はそれがいいな」
ミナ姉からの同意も得られた。
だが、あまりラーナの事を知らないシーラは疑問気だ。
「でも、ラーナ先輩は初代精霊王っすよね?そんなに弱いんすか?」
「新入りのお前は知らないかもしれないが、コイツが弱いのは古参なら全精霊が知る事だ」
またもシーラを新入りというミナ姉。
どうやら、シーラはまだ若い精霊らしく、何もできない状態で捕まっていた所で特級精霊の座が回ってきたらしい。
色んな意味での新入りだ。
ちなみにシーラをリボルが知っていた理由として、新しく特級精霊が入ると同じ特級精霊にはスキルガイダンスが入るらしい。
特級が今日だけで4人空いたが、スキルガイダンスが入ってないのでまだ決まってないと思われる。
こればかりは、再度男側に特級が出ない事を祈るばかりである。
「それと、ラーナとリボルは既にレイの眷属なんだってな?」
ギロッ!っとすごい眼光でミナ姉がこっちを睨む。
「ケロロン!」
「そうよッ!」
俺が睨まれてる事も気にせずに元気に返事をする二人。
「な、何でそんなに怒ってるんだよ………?」
「別になんでもねぇよ。………チッ、出遅れた」
ミナ姉、全部聞こえてます。
どうやらミナ姉は、俺と再会したら俺の眷属になるという約束を守ろうとしてるのだろう。
「何なら、今なるか?戦闘に便利な能力が付くかもしれないしな」
【血の眷属】の能力は説明済みだ。
「確かにそれがいいな。俺はいいぜ」
「じ、自分もレイ先輩の眷属になりたいっす!」
ミナ姉が同意を示すとシーラもなりたいと言い出した。
「初対面の俺の眷属になってもいいのか?」
なんかこの質問ラーナやリボルにもしたなぁ。
俺中身男って説明したはずなんだけどなぁ………?
精霊娘、即断すぐる………。
「全然構わないっす!むしろ、リボル先輩や姉御を眷属にするような先輩に自分もついていきたいっす!」
あぁ、純粋な後輩オーラが眩しい………!
俺がシーラから溢れ出す後輩オーラに慄いてると、スキルガイダンスが聞こえた。
『ミナの眷属化が可能になりました。同じくシーラの眷属化が可能になりました』
同意認定されたようだ。
「オッケー、行けそうだ」
この事をミナ姉とシーラに伝える。
「次はレイの血を取り込めばいいんだな?」
そう言って、ミナ姉はニヤリと笑う。
きらめく白い歯が眩しい。
「そのネタはもういいから!」
天丼はいらんのですよ!
「ちぇ、まぁいいや。血ィくれ」
「自分も欲しいっす!」
美少女二人に血を要求される。
相変わらず、すごいシチュだ。
「りょーか、ッ!?来るぞ!」
また指を噛もうとした瞬間、【魔力探知】に強大な魔力の持ち主が、こっちにものすごい速度で向かってくるのを感じた。
「ケロッ!」
「了解したわッ!」
「まじかいな………」
「ッ!?」
各自それぞれ臨戦態勢を取る。
眷属化が間に合わなかったのは惜しいが、やるしかない。
反応は目の前の廊下を直進してこちらに突っ込んでくる。
そして―――
「来るぞッ!」
ドォォンッ!
扉が突き破られる。
決戦ッ精霊王!
ちなみに『お団子ヘア 下』で検索すると出てくる髪型がシーラのイメージです。




