22.あ、姉御!自分そろそろ限界っす!
【縮地】をスキル欄に追加するのを忘れてました!
すみません!
闇に覆われた城の中を、ひっそりと壁沿いに進む怪しい影×2。
俺とリボルだ。
城の中を潜入任務中。
城の中は真っ暗だった。
話を聞くと、ラーナとリボルには普通に見えているらしい。
どうやら、俺の視界は人間側らしく、シャットダウンを使ったラーナが見えているのがいい証拠だ。
その代わり、普通の景色があまり見えていない。
その為の【精霊眼】を使おうとも思ったが、あれは目に魔力を集めるので、【魔力探知】に引っかかってしまう。
同じ理由で、俺からの【魔力探知】もバラまく事は出来ない。
なので俺は月明かりに照らされた微かな視界を頼りに歩いている。
すごくドキドキする。
何が飛び出してくるか分からないのだ。
最近は常に【魔力探知】をバラまいていたので、今では無い方が不便になってしまっている。
暗闇を進む。
今の所、誰とも会っていない。
順調である。
「………そういえば、今の特級ってどうなってるんだ?」
俺は声を潜め、ボソボソとリボルに聞いてみる。
潜入任務中にお喋りは厳禁って?
だって敵の戦力が気になったんだもの。
城の前で見たんだよ?
監視任務中のはずの特級クラスの精霊が寝てたからな?
敵の戦力にそんな余裕があるのか、と思わず気になったんだよ。
「………確かレイと会う前に聞いた話だと男女で5:5だったはずよ」
リボルは、いつものおっきい声は鳴りを潜めて、静かに喋ろうと頑張っている。
「でも、ミナ姉の代わりに俺が来たって事は………」
「そうね。女側の特級が一人減っている事になるわ」
「………すまんな」
罪悪感から即座に謝る。
「あら、気にしてないわよ。その分アンタが戦力になってくれるもの」
リボルはホントに気にしてなさそうに言ってくれる。
………助かる。
「それにどうやら朝のあの一撃で一人やられてるっぽいしね」
そういえばそんな事も見張りが言ってたな。
「つまり今の所4:4か」
で、一人城の外にいたからこの城の中には最大でも3人の特級精霊がいる。
「なかなかにしんどそうだな」
ミナ姉やリボル三人分とか勝てる気がs(殴
「あら、そこは大丈夫よ。アタシやミナは格が違うぶっ!」
「(ボソッ)しー!でかい声出すなよ!」
やっぱりテンションが上がってくると声がいつも通りの大きさになるリボル。
やはり潜入向きでは無いな。
流石F。
まぁその分戦闘の時の安心感は半端じゃないんだがな。
まぁ言わんけども。
手を離すと、流石に恥ずかしかったのか「ンンッ!」とわざとらしく咳払いをして、また話し始めた。
「ちなみにだけど、こちら側の特級は、このアタシと『契約精霊』のティナ、それとミナが初代からの復帰組ね。他の皆は上級でもなんとかなってたから上がってなかったの」
どうやら、特級になる際に『進化しますか?』的なことを聞かれるらしい。スキルガイダンスに。
それで、断ると進化はせず、特級の座は他の精霊に行くらしい。
「新規組は、天候を操れる『蒼天精霊』のヒヨリと、結界の使い手の―――」
「ケロ」
「「んっ?」」
ラーナが急に鳴いたので二人して止まる。
どうやら、いつの間にか俺らが進んでいた廊下の終わりまで来ていた。
あかん、話に集中してもうた。
潜入中にあるまじき失態だ………!
ラーナに右手で、謝る意味を込めるジェスチャーをする。
頷いてくれた。
ありがとう。
どうやらここから先は左に曲がるようだ。
だが、なにやら騒がしい声や音がする。
ここからが本番だ。
三人で気を引き締める。
………引き締めなきゃいけなかったのは俺とリボルですがね。
壁に沿いながら、曲がり角からひっそりと顔を出す。
そして前を見ると………。
「おらっ!開けろ!」
「いつまで籠城できると思ってンだ!」
「さっさとしてくれないかな?手間がかかって面倒なんだよ」
2mほどの大きな観音開きの青い扉に向かって、三人の男が何やら魔法を撃っていた。
扉寄りに2人、手前に1人だ。
そして、扉の向こうから………。
「あ、姉御!自分そろそろ限界っす!」
「大丈夫だ」
「いや、全然大丈夫じゃないっすよ!?」
という追い詰められているのに、そんな雰囲気を一切感じさせない声が聞こえてきた。
「「えっ?」」
だが俺とリボルはそれどころではない。
だいぶ素で驚いてしまった。
「「あ、あの声は………!」」
また被る。
ラーナが不思議そうにこっちを見ている。
だが、あの声に聞き覚えがあるのだ。
あの気だるげに流す感じの話し方と声質に。
恐らくそれはリボルもなのだろう。
「………リボル、ココでやるぞ」
「………了解したわ」
お互いに何となく察している為、理由は必要なかった。
「………あの三人、特級よ」
「………なんとなくわかった」
確かに城の外で見た精霊達よりも魔法の質が高いのだ。
だが、それでも外で寝ていた特級の方が強く感じる。
「………でも正直大した事は無いわ。扉に近い二人は魔法耐性が少し高そうだから、任せてもいいかしら?」
「………いいのか?俺が戦っているの見た事無いだろ?」
「………構わないわ。絶対アンタの方が強いもの」
「………そうか。なら任せろ。手前一人は頼んだぞ」
「………もちろんよ。先に妨害してあげるから、さっさと倒しなさいね」
「………それじゃあ」
「………えぇ」
思いっきり飛び出す。
そして、見つかるのも厭わず、足元に魔力を込める。
その横ではリボルが、手前の一人を止めようと魔法を発動する。
「【縮地】ッ」「【雷弾】ッ!」
三人とも、魔法が発動したタイミングで振り返る。
そのタイミングは1テンポ遅いッ!
「何ごt、ぐわぁっ!」
手前の知的眼鏡精霊に【雷弾】が当たる。
流石、電気。
納得の速度だ。
【雷弾】が当たり、怯む眼鏡の横を飛び抜ける。
飛びながら【魔力武装】を発動する。
金色魔力は俺の両腕に纏い出す。
最近よくやる全開の魔力はいらない。
こいつ等なら、5割で十分だ。
そして、驚く男二人の前で【縮地】の移動が止まる。
「な、何だきさm―――」
「い、いったいどこかr―――」
「失せろ」
片手でそれぞれの頭を掴む。
そのまま、右足を思いっきり前に踏み込む。
体が前傾姿勢になるが気にしない。
むしろ、倒れそうな勢いのまま―――。
「砕けろ」
地面に頭から叩きつけてやる。
床にクモの巣状のヒビが入る。
「グッ!?」
「ガッ!?」
掌で声が籠って、男共はくぐもった悲鳴を上げる。
まだ終わらせない。
そのまま、それぞれの腕に纏っていた魔力を、手に集中させる。
「弾けろ。【魔力爆散】」
男二人の顔の部分が爆発する。
そして、そのまま体も消えて行った。
「ふぅ………」
何となくだが、技のイメージが簡単に浮かぶ。
精霊界に来てから気にしてなかったが、このスキル習得率はやはり何かあるのかもな。
後ろを振り返ってみる。
「がぁぁ!」
「【雷撃】ッ!」
両腕を下から打ち上げたポーズで、眼鏡を上に打ち上げていた。魔法ごと。
流石、テンションで威力が変わるお方は一味ちげーや。
「そっちも倒したわねッ!?」
「おうよ」
普通に魔法も使った為、もう隠れる必要は無い。
いつも通り喋る。
「それじゃあ行きましょうか」
「おう」
「ミナ姉の所に!」「シーラの所にッ!」
「………………………」
「………………………」
「………………………ケ、ケロ?」
「「えっ!?」」
思い違いはよくある事ですよね。




