8話 告白と気持ち
異世界でもないのにハーレム…の予感
アミィが気を失うと全身が光り輝いて変身を解除した。気を失うと元に戻るのか……その直後、音もなく上空からSH60が降下してきた。着陸した機体から、はつゆきが……ん?何か違和感がある、良く似ているがはつゆきではない。
「これはいったい?」
「私ははつゆきの姉妹で古くからの友人でもあるしらゆきです、練習艦やってました」
へーゼルの瞳の少女がこちらを向いている、会いに行ってた相手はしらゆきだったのか。練習艦隊の航海に出てたんだっけ、でもどうしてその姿に。
「はつゆきちゃんが召喚メダルで私を式神にしてくれたんです、私も自由に動ける体が欲しかったし」
はつゆきが俺のメダルを使えるのは彼女を俺の代行者に指定しているからだ。俺にとっては彼女は単なる使役対象ではなくなっているからだ。
それよりはつゆきはどうしたのだろう?SH60の副操縦席にはつゆきは座っていた、息があらく憔悴している。
「正人……倒せてよかった……」
魔力を使いすぎていた、ハープーンに魔力のほとんどを注いだのだろう。SH60はしらゆきが出したものだった、しらゆきを召喚したのは良い判断だったようだ。
「ありがとう、はつゆき」
俺ははつゆきの手をとり、キスをした、感謝の気持ちもあるが、枯渇した魔力の補充の効率もよくなるからだ、主である俺からはつゆきは魔力の補充を受けられるがパスを使った非接触よりも、接触したほうが効率が良く接触も手をつなぐよりもキスなどのほうが良いしさらに良い効率の方法があるのだが、それはさすがにここでは出来ない。
「うん、ううううん」
しばらくキスをするとはつゆきの顔色がよくなった、だいぶ回復したみたいだ。そばでしらゆきが顔を赤らめている。
「もう、あんたたちは……」
「……ごちそうさまでした」
とりあえず野次馬が来る前に気絶したアミィ(もう亜由美か)を連れて引き上げるのであった。
~~~~~~~~~~~~~~
亜由美は俺の部屋のベッドに寝ている、彼女の住んでる所は知らないからな、はつゆきたちは買い物に行っている、しらゆきも初めての陸で色々見たいものもあるだろう。
「うぅん……」
亜由美が目を開けた、しばらくボーッと天井を見ている。
「知らない天井……」
「言うと思った」
つい突っ込んでしまった。
亜由美はこちらを見てから起き上がろうとする、俺は背中をささえ起こしてやり。
「まだ無理すんなよ」
「ありがとうございます、大丈夫・です」
そう言ってこちらを見てその目がジト目になった。
「先輩嘘つきましたね……魔法使えるじゃないですか、それもベヒモス倒すなんて」
「な・何のことかなー」
「いまさら……怒りますよ」
「すんません……」
「それにプラチナさんと戦ったときにいた彼女誰なんですか?」
え?突っ込むところそこなの?
「去年の秋、私が告った時の返事覚えてますか?」
あ、あれね、そういうこともありました。彼女に付き合ってくださいと言われた、でもこちらの都合でごめんなさいしちゃったんだった、それから何もなかったからあきらめてくれたものとばかり……
「私、待ってたんですよ、先輩が私を受け入れてくれるようになるのを」
え?待ってた、どういうこと?
「今は気持ちの整理が付かないから付き合うことは出来ないって言ってましたよね。だから夏期休暇終わった辺りにもう一回告るつもりだったんです、先輩まだ一人でしたし」
なぜに知ってる?
「ずっと一人でいることチェックしてましたし、夏期休暇直前まで確かそうだったはずです」
そうでした、そのあとはつゆき召喚したんだっけ。
「もうそろそろ心の傷も癒えてこれで気持ちが伝えられると思ったのに……」
下を向いて泣き出してしまった。
「そうか、すまなかったな、気を持たせるようなことを言っちまって。でも俺はまだ、あのことを精算できたわけじゃないんだ、まだ人間の女性に対しての不信は消えてないんだよ」
亜由美が顔をあげて俺を見た。そこで、俺は今までのこととはつゆきとのことを話すのであった。
~~~~~~~~~~~~~
「魔法使い講座ですか……」
亜由美がつぶやいた、話を聞いてるうちに涙は止まりだいぶ落ち着いたようだ。
はつゆきたちが「式神」であることも理解してもらったようだ。ただ、誤解されて後でもめるのは困るので、単なる使役する対象ではないということは説明しておいた。
その辺りではじっとうつむいて両の手を握り締めていた、あまり聞きたいことではないのだと思う。
「というわけで、俺の話はここまでかな、今度はこちらが聞く番だが」
俺は亜由美に彼女の属する組織の話を聞いた。彼女はぽつぽつと語りだした、話を整理するとこうなる、俺に告って断られて落ち込んでいたときに、東京のモデル事務所とやらがスカウトに来た。
アルバイト気分と気晴らしに上京してみるとそこは魔法少女を養成する組織だった。そこで魔法の手ほどきを受け、今年になってから魔法少女を名乗ることを許されて見習いとして活動していたという、学生兼任なので、H市やその周辺部のみの活動だったようだ。
「君みたいな人はたくさんいるのか?」
「魔法少女の資格を持っているのは10人位かな?その中で見習いはDクラスで最高ランクのAは2人しかいないよ」
ちなみにプラチナさんはCでした。
「けっこう少ないんだな」
「組織ができて2年もたってないからじゃない?」
「そんなに新しいのか?」
「うん、魔法自体が発見利用されだしてから2年くらいだからじゃないかな?」
「最近のことなのか?」
「冗談みたいな話だけどそういう風に教わったわ、2年前ほどにあった火山の大噴火が原因とも言われてるらしいけど。」
「ちなみに組織のTOPは誰なんだ?」
「神寄 瑤子さん、この人はランク外になっていて見せてもらったことはないけど桁外れな魔法がつかえるらしいんだ、この人が組織を作って国とも交渉して、組織を国の外郭団体にしたんだよ」
つまり魔法少女は特別国家公務員もどきというわけか。そういう組織に目をつけられてしまったのか、まあ時間の問題だったような気もするが。
「俺たちは指名手配にでもなってるのか?」
「私に降りてきた任務はあのときの2人を探すこと、見つけたら本部に連絡することになってました」
連絡するとプラチナがやってくるというワケか。
「プラチナさんは謹慎処分受けてます!いきなり攻撃するのはおかしいですから!」
亜由美は憤慨していた、さらに対峙した相手が俺だったことでいまさらながらに怒ってるらしい。
彼女の話では魔法使いの適性の或る人物を見つけたらそれを犯罪に使ってない人間は組織に「勧誘」することになってるとのことである、その「勧誘」とやらはほぼ「強制」に近いんだろうけどな。
「で本業は魔法を悪用するやつの捕獲と魔獣の殲滅かい?」
「たちまちはそういうことになってます、でも魔獣なんてそんなに出てきませんから、シュミレーション以外で魔獣と戦ったのは私も初めてです」
なるほど、魔獣ってそんなに出てこないんだ、ファンタジー世界では商売になるくらい出るのにな、すでにこの世界も大概な気もするが。
「その辺の話は置いといてこれからどうするかだよな」
亜由美が居住まいを正した。
「私は、先輩が出頭していただけたらと思います。犯罪に魔法を使ったわけでもないですし、魔獣を倒しています、悪いようにはならないと思います」
そのほうがいいのかもしれない、ファンタジー世界なら国を敵に回してもとかありそうだけど、俺は世界最強というわけでもないし、大勢に無双が決められるわけでもない、初級魔法しか使えない魔法使いにしか過ぎないのだから。
「で,でも、先輩がそれがいやというなら、わ、私は付いていきますから!」
それは、どういう意味でしょうか亜由美さん?
「もう、待つなんて出来ません、私は先ぱ・正人さんに付いて行きます!」
え?それってどういう……
「好きなんです・前に告白して断られたとき本当はあきらめようと思いました、でもやっぱり気持ちは変わりません、むしろ強くなってます」
「気持ちはうれしいけど……俺の気持ちは……」
(取り込み中悪いけど……)
は・はつゆきか?びっくりした、え?パスがつながったままだったか?
(もうすぐアパートに着くけど入ったらまずいかなって思って)
気を使ってくれたのか、いい娘だ。
(いや大丈夫だよ)と返事をして。
「もうすぐ彼女たちが帰ってくるそうだからその話は……」
と切り上げをはかる。
「なんでそんなことわかるんです?」
パスのことを話すと、びっくりしてたが、納得はしてくれたようだ。
「彼女がいるからってことはわかってます、でも私はあきらめません!」
こぶしに力を込めて語る彼女に俺はため息をつくのであった。
ここまで読んでいただいて有難うございます。
誤字・脱字などありましたらお知らせください。
次回投稿は5月2日17時の予定です