6話 後輩
なにもかもがなし崩しになってしまって十日ほど経った。これがリア充状態という奴か……爆ぜろといわれてもしょうがない。
もはや使役主と式神という関係を超越してしまったんだから。
初級魔法に毛が生えたような俺にたいして、はつゆきは魔法では中級クラスが使えるようになっている、さらに以前より力も増しているようだ、俺とのパスの繋がりが強くなっている。
まあ何が原因かは言うまでもないだろう、固有の武装も強力で、頼もしい限りである、おかげでプラチナを撃退できたわけだが。
あの後の状況を聞いてから、魔法少女たちに追跡されないか聞いたが、とりあえずH市に行かねば大丈夫だろうとのこと、理由は魔力の源とも言える魔素というものの濃度がH市はなぜか希薄で広域魔力探知にかけられると魔力を抑えていてもわずかにもれる魔力を感知されやすいそうだ。
それに比べてK市や東H市は濃度が非常に高く、まず探知できないであろうとのことだった。
とりあえずシールド×10では通用しないことはわかったので何がしか対策が必要である。はつゆきが非常に頼りになるのはうれしいが、まったく頼り切りはいかんと思うのだ。
後頼りになるのは底がいまだに知れない俺の魔法力の容量だ、とるべき道は1つ「質より量」ということになる。とりあえずはいざというときに備えて「ショートカット」を新しく作っておくことだ。シールドも思いついたあれを試してみよう。
それから一週間が過ぎて俺は今いつも魔法の練習場所にしている裏山の銀杏の木の下に向かっている。買い物のついでに寄ってみたのだ、プリンタの紙がいるのでA4のコピー用紙を一束買い込んでいる。
はつゆきはK市に出かけている、何でも古い友人が航海から帰ってきたので会いに行くそうだ。
誰なんだろ?「ひみつ(笑)」と教えてくれなかったけど。 久々に一人きりだ、木の生えてる方に行くとあいにく先客がいた……
ん?なんか知ってる人のような気が?
「篁 先輩!」
やはり知り合いだ、だれだっけっか?
…思い出した。
「古村か、ひさしぶりだな」
古村亜由美、サークルの後輩だ、もっとも俺は数合わせ要員なのでほとんど行っていない。確か無理やり拉致されて参加させられた新入生歓迎会で話をしたのが最初だった。背丈は160cm位で少しブラウンかかった髪を肩にかかるまで伸ばしている。サークルで一番いや、学年でもトップクラスの美少女だ。
相変わらず、スタイルのほうも抜群だな、と言うか髪色以外はつゆきにそっくりだ。 いや、逆か、はつゆきが彼女に似たんだな、はつゆきを始めて召喚したときの既視感は彼女のことだったのだ。ま思い出せなかったのは大変失礼だったな。
彼女が入ってからサークルの規模がいきなり大きくなったのは良いことだ、行事に無理やり参加させられなくなったからな。
「なにやってんだ、こんなとこで」
まさかここでデートの待ち合わせでもしてるのかと一瞬思ったので邪魔なら帰ろうかと思ったのだが。
「いえ、もうここでの用事は終わったんですよ、先輩こそどうしてこんなところに?」
聞き返してきた。
「散歩だよ」
「散歩ですか?ご一緒してもいいですか?」
「何?」
「久しぶりだしお話しませんか?」
なにか背筋がむづ痒い、なんだろ?断ったほうがいいのではと思ったがつい、「いいよ」と言ってしまった。
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「で、転生したら何でもチート能力をもらえる話になるじゃないですか、お手軽すぎませんかね?」
「能力を上げればいいってもんじゃないからね」
歩きながら会話する、内容はサークルでの話、それに適当に答えを返していく。
サークル名は「読本研究会」文学からライトな読み物まで、幅広ジャンルの本を読んで研究するという趣旨のサークルだ。
彼女はどうもライト系の本が好きなようで話してくるのは転生した先で魔法使いになる本の話だ。 彼女も魔法に興味があるのかその手の話が尽きないのだ。
つい、「古村はまるで魔法使いみたいだな」と言ってしまった。 普通ならば戯言なのだが、口にしてから返事がないので横を向くと俯いたブラウンの髪。
「なんで、知ってるんです」低いつぶやき。
あれ、もしかして何かスイッチ入れちゃった?
「先輩が何で知ってるんですか!」
彼女の周りから光があふれて……
消えた後には見たことのあるコスチューム、蒼い髪をした、あの日見たもう一人。
「魔法少女 アミィ! 狙った敵は逃しません!」
それが君の決めせりふなんだね。でも変身するとすごい変わるよね、特に髪色とか胸とか…わからなかったもんな。
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「 篁先輩、あなたに聞きたいことがあります、おとなしくしていただきますか?」
話し方もずいぶん変わってる、ずいぶんはきはきとしゃべるなあ、性格も変わってるの?
「古村……(アミィです!)」この状態では本名は禁止ワードというわけか。
「何を聞きたいのか知らないが、答えられるものなら答えよう、こっちもいろいろ聞きたいしな」
「まず、聞きたいのはあの時あそこにいたのは先輩なんですか?」
「あの時とは?」
「H市でプラチナさんが戦った相手です、先輩なんですか?」
「覚えがないな……」
「本当ですか?」
「ああ、そもそも一般人の俺がどうやって戦うって言うんだ?それよりアミィって名乗ってるけどどういうことだ?」
「それは……今は言えません、今はです」
「ふーん、何で俺のこと疑ったんだ?」
「先輩から魔力が漏れてるからです、一般人とは思えないほどに」
「へーそうなんだ知らなかったよ」
といいつつ冷や汗が流れる、確か魔力は抑える訓練もしておりはつゆきもこれなら気が付かないだろうと言ってたくらいなのに。
「そうなると、先輩は魔法使いになる素質があるということですね」
そう言うアミィの顔はこちらを見つつ少しほほを紅潮させていた。
「そうなるのか?」
わざと知らぬふりをして返事をする。
「だったら是非私と魔法の練習をしませんか?きっと役に立ちますよ!」
「まあ、それは時間のあるときに教えてもらおう。古…アミィはどんな魔法が使えるんだ?」
するとアミィはぴくっとしてこちらを見た、今度はなんだ?
「それは秘密です……仲間になるなら教えますけど」
(秘密組織ってやつ?なんかきな臭いなあ。)
じつは、あの後彼女たちの組織について調べようとしたのだが判らなかったのだ。街中で暴れても警察が動かず逆に犯罪者を捕まえている。間違いなくバックに国が関与している。ネットには全国でひそかにだが複数の魔法少女」たちが活動していることが載っていた。はつゆきも自分がつながっているネットワークで調べようと言ってくれていたがそれはやめさせていたのだ。下手に探りを入れてこちらの存在がばれるのが怖いからだ。一応、見つかった場合の対応策は話していたがまさか後輩がその組織に関与してたとは。
「仲間にね?魔法使いで何をするのか、それも教えてくれないのか?」
「すいません、その辺も言えないんです、でも世のため人のためになることです。きっと先輩にも賛同していただけると思います」
「なるほど、じゃあさっきの場所にいたのも仕事でいたのか?」
「はい、あそこに魔法を行使した反応があったんで調べていたんです、そこに素養のある先輩が来たから、
そうなのかと思いまして」
そうだったのか、気をつけねば。
「でも、そんなの良くわかるな、俺自身何にも感じないが?」
しれっとうそをつくが、アミィは気が付かないようだ、でもあの場所から魔法が行使された跡なんてほんとに判んないんだけどな、実は相当な能力者なのかもしれない。
「私は探知が得意なんです」
少し得意げに言うが、でも自分の能力ばらしちゃってるよ、いいのかな?
(正人、大丈夫?)はつゆきが心配してパスを通じて聞いてきた。
(いまのところは大丈夫。)
実は、「式神」との間のパスをアミィが変身したときにつないでいたので、ここまでの流れははつゆきにも伝わっている、パスをつないでからこちらに戻ろうとしている。
(探知能力が高いらしいから見つからないようにな)
(わかった)
どの辺りまで探知できるかわからないが魔素の濃度の高いこの街で微量な魔力を感知できるのだ。用心に越したことはない。
「先輩?」
物思いにふけってるように思われたのだろう声をかけられた。パスには気が付いていないみたいで助かった。
「ああ、すまんその魔法の練習なんだが…」
返事をする途中周りの風景が揺れた、
「地震?」
そして膨大な力が地面より感じられた。
「魔力が噴出してる!」
そして、そいつが現れた。
ここまで読んでいただいて有難うございます。
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次回投稿は5月1日21時の予定です