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4話 彼女の決意 

はつゆき視点


 私の名前は「はつゆき」建造計画ナンバー2210号艦としてこの世に人の手によって生み出された。


 進水式のときに「はつゆき」の名前が与えられ言霊の力によって、「私」が生まれた、いや、正確には「転生」したと表現したほうがいいのだろう、なぜなら「私」には前世の記憶があるのだから……


 正確には「私」は三代目になる、初代と二代目は「駆逐艦」と呼ばれていた。三代目は「護衛艦」と呼ばれている、敵から味方を守るのが主な仕事だ。


 二代目の「私」は世界大戦を戦っている、多くの戦いに臨み、たくさんの敵を屠り、たくさんの仲間を失った。乗り組んでいた人たちも大勢死んだ、そして自分にも最後の時が訪れた。沈んでいくとき、もう戦わずにすむ、「死」を見ずにすむという妙な安堵感に包まれていたように思う。


 そして又三代目として「転生」した「私」だったが、今度は戦争もなく平穏な一生を送ったと思う、共に生まれた姉妹たちも前世の記憶を持たぬものが多く、唯一三代にわたってのもはや腐れ縁ともいうべき「しらゆき」を相手に昔語りをするのが楽しみであったりした。


 そうしてついに「廃艦」という最後が訪れる、「しらゆき」は練習艦という艦種に変更になりもう少し「この世」に止まることになったらしい、そのことに対して感傷はない、なぜなら「私たち」は人に作られし「物」なのだから。


 だが?この気持ちはなんなのだろうか?


 廃艦になり、装備をはずされて解体を待つ「私」に語りかけてきた者、私に仮初の人の姿を与えてくれた人。魔法を使う「正人」という若者。彼と初めて会って、とりあえず一緒に行くことを承知してから、「私」の周りの世界が変わったような気がした。人の持つ暖かさに魂から震えてしまった。


 それに気が付いたのはあの{戦い}{魔法少女プラチナ}との戦いだ。


~~~~~~~~~~~~~~~


 それは、いきなり始まった、「プラチナ」と名乗る魔法少女は問答無用の攻撃を仕掛けてきた、正人は持てる魔法で防御を試みるが初級の魔法しか使えない正人の防御シールドは、銀色の槍で貫かれてしまう。


「正人!」


 倒れる正人、初級とはいえ身体強化していた正人は即死はしなかったものの重傷だ。


 すぐに「ヒール」を唱えて治療をする、向こうではプラチナが更なる攻撃を仕掛けようとしている、そのとき「私」の中の何かが弾けた。


「正人は死なせない! 正人を護る!」


 そして「私」は固有スキルである「兵装」を起動させる。


「兵装展開! CIWS(近接防御火器システム)起動!」


 虚空から現れたのは白く細長い半球のドームを上につけた6つの銃身をもつバルカン砲である、毎分4500発発射できる高性能機関砲、まともに使えばいかに魔法少女でも一瞬でボロキレにしてしまうだろう。だがここで人を殺すのは正人の意思に反する、{攻撃をしのいで隙をみて逃げる}のがこのミッションだ。


 そこで弾種を殺傷しなくても無力化できる、麻痺を起こす属性の魔力を込めて発砲する。


”ドリュリュリュリュリュリュリュリュリュリュリュリュリュリュリュリュリュリュリュリュリュリュリュ”


 回避させることなくプラチナを打ちすえる魔力の弾、プラチナは意識を失ったようだ。


 仲間が駆けつけてこないうちに撤収する。


「煙幕進展、チャフ散布!」


 スモークディスチャージャで煙幕を張り魔法で探知されないように魔力の素である魔素を撒いていく。


 そして建物の陰に正人を連れて行く、出血は止まったが意識は戻らない、治癒魔法をかけながら、ここから逃れるために乗り物を呼び出す。

 

「SH60J起動」


 はつゆきが装備していた艦載ヘリSH60Jが姿を現す。


 正人を乗せて東H市まで飛び立つ、魔法で作ったものなので音もせず風も起こさずふわりと飛び立った。



~~~~~~~~~~~~~~~~


 部屋に帰り着き正人をベッドに寝かせる、その前に破れた衣服を脱がせた、表面の傷はすでに治癒しているが、体の内部へのダメージとショックで意識はまだ戻らない、汚れたままではいけないので、洗浄魔法できれいにしていく。


 治癒も終わったし、あとはどうすればいいのだろうか?


「データーバンクコネクト……検索モード実行、検索上位をピックアップ」


「人肌で暖めると良いか……」


 なるほど、早速実行する、衣服を脱ぎ魔法で体を清めて正人の右隣に滑り込む。腕を取り体を密着させる、なるほど暖かい、こういうのを「ほわほわ」すると言うのか?言葉で知ってるのと実際に体験するのは違うものだな…


 すると正人がうわごとを言った、「はつゆき…逃げろ…」どうやらまだ夢の中では戦いを続けてるようだ。


 でも、その言葉を認識した次の刹那、「私」の中で熱くなるものを感じた。なんだろう?この気持ちは、なんだろう、この苦しくなるような感情は?


 答えを求めて情報を集めて検索結果が返ってくる、それを整理して出来上がった答えは軽い戸惑いをあたえた。


「好き、正人が好き、愛している」


 人が作った「物」である「私」が「人」を愛するなんて…再度、情報を精査する……答えは変わらない。


 気が付くと何か顔の温度が上がっていた、これが「火照ってる」ってやつ?落ち着こう、落ち着いて考えよう。


「私は正人が好き、愛してる」


 何度目かの自己問答でその結果を受け入れることにした。認めよう、そう思ったら何か重いものがすっと体から消えた気がした。あれ……?何で私泣いてるの?気が付けば両の目から涙がこぼれていた。でもそれは歓喜の涙、たどり着いた答えに打ち震えた心が流した涙。そして気づいた、「私には心がある」ということに。


 気づいてしまうと、後の展開は速かった。いままで、自分は作られた物として正人と接してきた、それは一歩引いた状態、後ろめたい気持ち、今は違う引け目なんか感じない。


「正人が欲しい!」


 その手段を検索していく、情報ネットから、過去のライブラリから。そしてそれを実行に移すのだ。


 正人かれを手に入れるために……



ここまで読んでいただいて有難うございます。


誤字・脱字などありましたらお知らせください。


次回投稿は5月1日12時の予定です

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