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3話 魔法少女との遭遇

 H市の駅前を手をつないで歩いている、傍から見ると出来立てのぎこちないカップルに見えるだろう。さすがに軍服は目立つので今は着替えてもらっている。白くフリルのついたワンピースで長さはひざ上である。ヒールの低い歩きやすいパンプスをはいてもらった。


 もっともこちらも女性の服には疎いので彼女に選んでもらった、どうやら護衛艦時代に乗り組んでいた女性士官の私服を参考にしたらしい。情報では知っていたようだが実際に陸にあがって歩くなんてことしたことがないせいか、観るものすべてが珍しいらしくキョロキョロしてるのがなんとも可愛い。


「陸にあがってこうして歩くなんて思ったこともなかった」


 まあね、艦が陸にあがってうろうろなんてしないもんな。 


 ウインドウショッピングを楽しみ、食事などを済ませて散策をする。人波は絶えることなく、その中をゆっくりと連れ立って歩く。


 両側に広い緑地帯のある道路に出たところで、後ろから爆発音が響いてきたのは、そんな時のことだった。


「ズズンッ!」音とともにビリビリと大気が震える。


 思わず振り返った先には火柱が上がっていた。なにがあった?


 はつゆきは火柱に向き合いつつなにか遠くを見るような顔をした。


「魔力をもった未確認物体アンノウン2体捕捉……」

「ターゲットA、Bと仮称……」


 と言葉を紡いでいく。


 火柱の上がったところを中心に回りは阿鼻叫喚の騒ぎである。その中心には距離をとって向かい合う2人の姿がある。一人はスーツを着た男性、そしてもう一人は……


 魔法少女マホウショウジョ


 彼女はよくある魔法少女のコスチュームを纏っていた。いかにも!という感じ、で非常にわかりやすい、というか俺にはそう表現しかできないのだ。銀色に輝く甲冑みたいなものを着けてるところを見ると戦士タイプか……


 彼女が口の端をゆがめつつ相手に言葉を放つ。


「この変態紳士ロリコンめ、幼き少女を乱暴するとは魔法使いの恥さらしだ!ここでバーニングプラチナが貴様に天罰を下してやる!」


男はスーツが半分こげていた、そして彼女に向けて手をかざした。


「貴・貴様なんかに幼女の良さがわかるか!アイスソードブリット!」


 叫ぶと手から氷の剣が多数表れ魔法少女に矢のような速度で飛んでいく、このままでは無数の剣で串刺しになると思ったら。


「そのようなものが通用するか!」


 少女は叫び何も持ってない右手を振るう、すると氷の剣は見えない「何かに」ぶつかったように砕け散った。氷の小さい粒が舞い虹色の光がみえた。


「なっ!」


 スーツ男は声を上げる。


「そんな攻撃がこの私に効くものか!」


「くそっ!これならどうだ、{ブリザードバルカン!}」


 男の手から氷弾が噴き出し、プラチナと呼ばれた少女に向っていく。


「その程度か!{プラチナ・シールド!}」


 プラチナが再度手をかざすとそこに銀色の幕のようなものが現れた。その幕にブリザードは命中するが貫く事は出来なかった。


「なんだと!攻撃が通らないなんて!」


 男は自分の決め技が通じなかったために取り乱している。


 それを冷ややかに見つめるプラチナが叫ぶ。


「これで終わりだ、{プラチナバインドウイップ!}」


 プラチナの手から銀色の鞭が伸びスーツ男を打ち据えた。


「バチィ!ッ」


 そしてそのまま巻きついて拘束する。


 あっという間のことだった。


 スーツ男は打たれたときに意識を刈り取られたのだろう、拘束されたままドサリと倒れた。プラチナと名乗った少女は男が意識を失ったかそばまで行って確認し、そばに近づいてきた少女に向って声をかけた。


「アミィ、こいつをそのまま突き出しといてね、自業自得だから治療はしなくていいわよ」


「了解です」


 いつの間にか現れた蒼い髪をした別の魔法少女に男を引き渡す、あのまま警察に突き出すのだろう。


 なんか物騒だな、あまり近づきたくはない。


 捕り物もおわったので俺たちも踵をかえして離れようとしたとき、後ろから声がした。


「ちょっと!!」


 いやな予感がした。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 いや過ぎる予感がしたので聞こえないふりをしてすたすたとその場を去ろうとした。


(呼んでますよ?)


はつゆきが俺たち召喚関係にある者同士のみで意思疎通できる{パス}で問いかける。


(かかわりたくない、知らないふりだ)


 そう答える。


 だが、さらに歩を進めようとすると、目の前の道路に銀色に輝く短剣のようなものが突き立った。


「止まってこちらを向きなさいといってるのよ!」


 仕方なしに180度向き直った、向いた先にはやはりプラチナとかいう魔法少女がこちらをにらんでいる。 


 面倒そうな雰囲気にため息が出そうになったが隣ではつゆきがギュゥと手を握ってきたので、(大丈夫だ…)とパスで伝える。


「あんたにちょっと用があるんでこちらに来てもらおうか?」


「えっと、だれかと勘違いされてませんか?全然面識もないし、行きずりなんですけど」


 無関係をアピールしてみるが。


「いや、お前が魔法使いであることは私には丸わかりだからな、隣にいるのも……なんだ?人ではないみたいだが? まあいい調べればわかるんだからな、無駄な抵抗はするんじゃないぞ、さっきのやつみたいになりたくなかったらな」


「いきなり、呼び止めて連行ですか、警察でもないようだし、こちらはなんら悪いこともしたわけでもないんでお断りしますね」


「そんなことはどうでもいい、ここにお前がいること自体が悪なんだからな、じゃあ敵性勢力認定だな!」


 そう言うと彼女の魔力が増大していく。


 おい、まさか。


{バーニングカラム!}


 轟ッ といきなり目の前に火柱が上がる、さっきのスーツの男みたく半分クロ焦げになるとこだった。その前にシールドを張っていなかったらぞっとする。


 俺たち2人の前には光るガラス板のようなシールドが浮いていてそれが5枚重なっている。実は10枚出してたんだが5枚は火柱に焼き消されたのである。火柱が上がる前に展開できてよかった。


 シールドをみてプラチナはへぇっと口元をゆがめていった。


「無詠唱か、やるじゃないか」


 正確にはただの無詠唱じゃなくて{ショートカット}なのだ、事前に使う魔法と数などをまとめて記憶させておき、詠唱せずに心の中でトリガーを引けば発動する仕組みだ。誤解しているみたいだがここはスルーだ。


 このシールド自体は初級にあたる魔法で1枚に見えるが実は10枚重ねがけして1枚に見えるようになってる、だからこの場合はシールド(初級)×10×10のショートカットなのだ、これだけの同時展開を行っても魔法力の残量は余裕なのだが、悲しいかな所詮は初級、簡単に突破されてしまうのだ。


 プラチナの周囲に銀色の光が集まっていく、その中で彼女の顔はまるで快楽に酔っているかの表情をしている。


「おもしろい!こいつはどうだい!{プラチナランス!}」


 プラチナの右手に短い銀色の槍が現れた、投擲してくるのか。


 さらに「シールド×10×10」を発動させて前面に展開する。 


 輝く光の盾が前面に展開した。


(正人!反撃の許可を!)


 はつゆきが呼びかけてくる。


(だめだ、反撃したら余計にややこしくなる、攻撃をしのいで隙を見て逃げるんだ)


「なにごちゃごちゃいってるんだい!これを防げるものならやってみな!」


 そういってプラチナはランスを投擲した。


 バリバリバリバリッ!


 ランスはシールド15枚をつぎつぎに食い破り、俺に突き刺さった。


「ぐっううう」


 たまらず膝をつく、焼け付くような痛みが襲ってくる。


「正人!」


 はつゆきの声が遠くに聞こえた、そして目の前が暗くなっていった。



ここまで読んでいただいて有難うございます。


誤字・脱字などありましたらお知らせください。


次回投稿は5月1日9時の予定です

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