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2話 式神召喚

 使い魔の召喚についてはいろいろな方法があるようだ、主に「触媒」と呼ばれる使い魔の元となるモノがいるのだそうだ。それが、フクロウや黒猫や狐などの魔法に親和性のある生き物か魔法陣を刻んだ呪符だったりする、後は人の作りし物で長い時を経て人の想いが積み重なりやがてその物が意思を持つ所謂付喪神と呼ばれるものも使えるようだ。


 問題はなにをベースにするかか……できれば動物は避けたい、動物は意思疎通が出来るまで時間が掛かる場合があるらしいし、動物飼っちゃいけないんだよな、住んでるとこ。無機物にするか……でも意思の疎通もできたらしたいし無機物はそもそも意思が無いのでロボットに命令するみたいになるようだ……となると{付喪神}系統か…そういや隣町に「あれ」があったな、ちょっと試してみよう。


~~~~~~~~~~


 東H市の隣にはK市がある。K市には国防軍の海軍基地がある、そこには護衛艦や潜水艦など多くの艦船が停泊している。


 その一角に「彼女」は居た、かつて{はつゆき}と呼ばれた護衛艦ふねである。


 今は役目を終えて解体されるのを待っている状態だ。装備品はすべてはずされ、燃料もなく動くことはもうない、艦ナンバーも消されて消されていないのは艦の後部の艦名のみである、そのためか人気はまったくない。


 そこに俺は目をつけたのだ、式神(使い魔)として召喚することができるかどうかを試すには人の存在が邪魔になる、現役艦だと当直もいるだろうし、召喚時になにが起こるかわからないので巻き込みたくはないのである。


「さて、やりますかね……」


 ポケットに入れていた一枚のメダルを取り出す、メダルの表には桜の紋章、裏には菊水の紋章が描かれていて、すでに召喚のための魔法式はメダルに記憶させている。メダルに魔力を流し込んでいくと、その表面の模様が白く光りだした。


「人によって生み出されし物よ、我が呼びかけに応じここにその姿顕せ、式神召喚!」


 唱えると同時にメダルはふわりと宙を飛び「はつゆき」に向けて飛んでいく。「式神」としたのはこの国で召喚するならそのほうがにあってる気がしたからそう呼ぶことにしたのだ。


 メダルが船体に触れたと同時に艦全体が輝いて、その光が収束すると、俺の前には白い第三種夏服という制服を着た少女の姿があった、黒髪がセミロングと表現するぐらいストレートに伸びている。年齢は俺と同じか少し下かな?プロポーションは少し胸が目立つ感じ、目が行ってしまう。でも、どこかで見たような気がする、美少女だし、グラビアなんかで見たのかな?


 そんなことを思っていると閉じていた少女の目がそっと開いた。


 鳶色の瞳が視線をさまよわせ、俺に向かってロックオンされる。しばらく、無言で見つめられている。


「……なぜ?」


彼女は一言そうつぶやいた。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 港から少し離れたところに小さな公園があり、俺たちはそこの小さなベンチに座っている。


「彼女」は俺の説明を聞いてなお言葉を発することはなかった。


「私は戦うことしか知らない、教えられてもいない……」


 ぽつりと、だが搾り出すような声で彼女は答える。


「戦い以外のことはこれから覚えればいいさ」


 俺の言葉に、彼女はじっと見つめてくる、その瞳には深い悲しみの感情が見えるのは錯覚だろうか?


「私には先代むかしの記憶がある……多くの人の命が消えていった悲しい記憶、その時の私は戦うことだけが存在理由だった」


 話を聞くと彼女にはかつての世界大戦の頃の駆逐艦「初雪」とそのさらに前に存在した駆逐艦だった頃の記憶があると言う。


 進水式のときに命名する行為は言霊の力によって先代の記憶を持ったまま新たに転生する事になるようだ。


護衛艦いまのからだとなってからは戦わなくてすんだ……そして無事に役目を終えて静かに眠ることができた、今の状態には満足しているの、あなたは私を戦わせたいの?」


「別に戦いたいから召喚したんじゃない、傍にいて欲しいんだ」


 彼女は下を向き黙り込んだ。


「……」


(無理かな……)反応のなさにあきらめかけた時、彼女がふっと顔を上げてこちらを見た、鳶色の瞳に何かの感情をたたえて、彼女は口を開いた。


「あなたのことは何も知らない、だから少し時間を頂戴、そばであなたのことを視させて……」


 とりあえず付いてきてくれるようだ。


「お試し期間ってわけだ、よろしく」


 右手を差し出して握手をもとめると、そっとその手を握ってくる、その手は柔らかく暖かだった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~


 東H市には城跡公園がある。かなり大きな戦国時代の城跡で大きな広場が存在する。 そこに俺とはつゆきが立っている。彼女の固有魔法を見せてもらうためだ。


「兵装展開!」


 彼女が命令コマンド・ワードを唱えると地面から浮かび上がるように大きなシルエットが広場に現れた。


 長さが130メートル余りで高いアンテナマストが艦橋後部に立ちその後ろにはオールガスタービン艦に見られる太い煙突がありさらに後ろには四角い格納庫が続いている。 召喚時にはすでに外されていたレーダーや砲塔などの武器もかつて海原を疾走していた頃のあの姿になっていた。


 艦首側面の艦ナンバー122の文字も誇らしげだ。


 傍に寄って触ってみると金属特有のひんやりとした手応えだった。


「本物と同じ手触りだな」


そう言って振り向くと彼女はつゆきが脇腹を押さえている。


「変なとこ触らないで……」


「こっちの方も感覚あるのか?」


「今はそうしてる、艦だった頃の感覚にしてるから、切り離す事もできるけどね」


 この艦は彼女の呼び出す{兵装}で全体を実体化することが出来、 さらに砲などの一部分だけでも呼び出すことも可能だと言うことだ。 兵器の威力はオリジナルよりも上に出来るし、自分で操作するので命中精度などもはるかに良くなっているはずだという。


 さらに……


「兵装転換!」

 

 先ほどの艦の姿が変わり前部に連装砲を1基後部に2基魚雷発射管を備えた吹雪型駆逐艦の姿になる、前世の「初雪」の姿にもなれるということか。


 ちなみに召喚しても元の船体は消えなかった、船体と魂は別物で召喚すると魂だけが呼び出されて実体化するらしい。気になるのは彼女の容姿だが本人の希望とかでなく術者の潜在的な好みと、本人の元の要素が折り合いをつけて形成されるとのことだった、(魔法サイトによる)と、いうことは彼女の姿は俺の好みのタイプと言うわけだ、だから最初から俺は彼女が気になるんだな……


 毎日朝召喚して夕方解除してるんだが、召喚してからは実体を維持するのは式神側の魔力なので、召喚しっぱなしもできるようだ、 そのせいか最近解除しようとすると嫌がるようになったような気が……いやまさかね。


「だいぶ人ごみにも慣れたし明日はH市に買い物に行こうか?」


「護衛艦 はつゆき行きまーす!」


 どこでそのネタ仕入れたよ?




ここまで読んでいただいて有難うございます。


誤字・脱字などありましたらお知らせください。


次回投稿は4月30日21時の予定です

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