表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/27

15話 プラチナの憂鬱 


 魔法少女プラチナは少々変わった二つ名を持っている、「破壊女王」「狂戦士プラチナ」「アイアンバーサーカー」等々である。これは、彼女のせいと言うより、変身アイテムのステータスブーストシステムに原因があった。もともと優しく戦うことに抵抗のある彼女に戦いを強制するシステムが暴走してしまうからだ。


 犯罪魔法使いたちや魔獣相手ならばよかったが、今回は一般人に対しての暴行、しかも仕掛けておいて逆襲され昏倒させられるという屈辱つきである。説教や始末書では済まず、自宅待機という実質謹慎処分を受けてしまったのはむしろ軽いほうであろう。


「はうううううう」


 自宅で、本を読みながら、ため息をつく美奈プラチナはあのときのことを思い出す。任務で精神が高揚していたためか、犯罪魔法使いに対して過剰なまでの攻撃をしてしまった。もっともこれに関しては彼女はやりすぎたかなーと思っているが、容赦するつもりはあまり無かった。それは、美奈が受けてきたセクハラなどの主に性的な虐待経験がそう思わせるのだ。自身が受けてきたことがどれだけ心に傷を残すのか、絶対に許せない。


 そこだけは譲れない思いであった。


~~~~~~~~~~~~~~~


美奈視点


「でもその後がいけなかったです」


 犯罪者を捕らえた直後、彼女はふと「気配」を感じたのだった、それは「同類」が近くにいるという感覚、そちらを見れば若いカップルがいて、そのどちらにも「魔力」を感じた。その時もう少し呼び止めるにしても穏やかなやり方があったはずだ。だが、戦いに「酔って」しまっていた自分はそれができず挑発した形になってしまった。「彼」の方は挑発に乗らずにその場から去ろうとしたが、自分の方から戦いを仕掛けてしまった。


 軽く繰り出した攻撃はガラス板のようなシールドで防がれてしまった。


(ならば!)


 本来魔獣相手にしか繰り出さない魔法を使う、(止めて!そんなの使わないで!)私の中の「私」が叫ぶ、「私」の意志が切り離されてその情景を見てるだけになり、な私が魔法を繰り出し攻撃する、システムの暴走だ。


(止まって! 止まって! 止まって!……)


 私の声は届かない、そして、ランスがシールドを突き破り「彼」に突き立つ。


(ああ!なんてこと……)


 そしてさらに攻撃をしようとする私に、「彼」の隣にいた「彼女」が片手を挙げる、するとその前に細長の物体が現れ光ったと思ったら、私は宙に舞っていた。「私」は悟った、攻撃を受けたのだと、そして気を失った。



~~~~~~~~~~~~~


 気が付くと「知らない天井」が見えた。


 ああ、これがお約束のと思ったが口にはしなかった。予想どうり病院の天井だった。ここにはアミィが連れてきてくれたと後で聞いた、後輩のアミィこと亜由美ちゃんは私よりも何歳も年下だ、でも、変身をしていないときには私よりもしっかりはっきりしていて、どっちが年上かわからない。


 受けた攻撃は麻痺属性の魔弾だったようで怪我も無く、すぐに退院となった。そのまま「本部」に帰還して、副会長のお説教を受けて今の状態に至っているのだ。例のカップルはアミィと新たに美月(月影)が捜索にあたっている。


「見つかったら謝らないと…」


 ベッドにうつぶせになりそうつぶやいた。


 一週間くらいで謹慎が解けて、私は本部に来ている。会長に呼ばれたので会長室に行くと、会長が「例の2人が見つかったよー」とうれしそうに教えてくれた。しかも、亜由美ちゃんの学校の先輩だったと聞いて、なんてご都合…いや世間は狭いのかと思った。


 しかも、彼らはあのベヒモスを倒したとか! あれは、A級の二人でやっと倒せた魔獣なのに。


「もうすぐ着くらしいからね、ちょうどいいから謝っておきなさいねー」


 え?ほんとに?


 彼らがやってきた、亜由美ちゃんに連れられて。


 事前に見せてもらった資料では、彼のほうがたかむら 正人まさとで、私より当然年下なのだが、彼のほうが断然大人に見える。それに、落ち着いて見てみると……ストライク(好みのタイプ)……です。一緒の彼女は(髪色除いて亜由美ちゃんそっくり!)なんと人間ではありませんでした、彼が召喚した式神だそうです。彼女じゃないのか……なに安心してるんだろ?もう一人同じ顔をした娘も式神で新たに召喚したそうです。すごい、私なんかより全然すごい人です。


 そんなこと考えてぼぉっとしてたら会長が私に話を振ってきた。あわてて、答えるけど余計なことも口走ってしまったみたいだ。あ、謝らなくちゃ。


 謝ると最初は何でって顔をしていた彼は私の正体を知ると驚いていたみたい。式神さんはにらんでいる、主人を攻撃した私が許せないのだろう、会長に酷い扱いうけたけど、彼にはとりあえず謝罪は受けてもらえたようだ。



~~~~~~~~~~~~~


 訓練場にみんなで行って彼らの力を見せてもらう、式神さん二人の攻撃力は圧倒的だった。私に対しての反撃は完全に手加減されたものだった。本気だったら今頃は……


 正人さんも初級魔法を組み合わせて強力な魔法に変えていた。すごい人だ、あんな人が彼氏だったらいいな……なんて妄想が沸いてしまった。


 披露が終って帰ってくる三人、そこでアレが起こった。最初映像が一瞬ぶれたとき副会長が「カメラが」と言って何か操作してた。するとカメラが切り替わりそこに移ったのは正人さんと式神のはつゆきさんのキスシーンだった、

そのあともう一人のしらゆきさんとも……私はいたたまれずに、更衣室に駆け込んだ。


 顔が火照って熱い、心臓がバクバクしてる。なんかすごくうらやましい、私ははしたないと思いつつ、自分がそういうことになったらとか考えてしまっていた。そこに、部屋に入ってくる人。


 奥に隠れ、そっと見ると正人さんと亜由美ちゃんがいた。亜由美ちゃんは正人さんにキスのことを問い詰めている、正人さんは魔力の補充だと答えていた、そうなんだ式神さんはああやって補給するのか、なんて思ってると亜由美ちゃんは「私にも!」と言って、強引にキスをした、 はわゎゎ…なんてダイタンな…うぅらやましい。


 先に亜由美ちゃんは出て行って、後には正人さんだけが残った。最後に「今度は気持ちよくさせてあげる」とか言い捨てて、な・なんてすごいことをサラッと言うんだろう、私にはとても言えない。

 

 正人さんはなんか呆然としてる、私も呆然としてたらしい、手に持っていたポーチを落としてしまった。正人さんがこちらを見る、私は何か言おうと思った、そう私も……

 

 でも言葉にならない、意味不明の言葉しか出ない。


 そうこうしてると正人さんは悪いと思ったのか謝ってきた。


 いえ、そんなことは無いんです羨ましいんです。


 そう言おうとするが、言葉がうまく出ない、なんとか、私もして欲しいということだけは言えた。すると、正人さんは、ぎょっとした顔をして、「ごめん!」といって部屋を飛び出してしまった。


 ああ!行ってしまった、私はその場から一歩も動けず、ただ手を伸ばすだけだった。


~~~~~~~~~~~~~~~


 その後はそう…まさに怒涛の展開だった。


 歓迎会が行われて皆でわいわいやった、私は正人さんとお話したかったのに会長が迫るので出来なかった。そして若林さんと正人さんは二人でどこかに行ってしまった、ホテルで私たちは一つの部屋に集まってお話をしていた、ガールズトークってやつかしら?


 話題は正人さん関連の話ばかりになっていた。亜由美ちゃんは不機嫌だ、正人さんが好きなのに、式神のはつゆきちゃんに先を越されてしまってるからだ、私はそれよりまだ遅れている、周回遅れ位かも、美月さんにはこう言われた。


「そういう場合は、思い切って行かないと追いつけないねぇ」


 そうかなと思っていたら眠気が襲ってきて気が付いたらベットで寝ていた。寝ている間になにか起きたらしい、皆教えてくれない…酷い。


 正人さんは戦力強化のためにY市に行くことになり若林さんと出かけて行った。そして帰ってきた時には正人さんは何人もの新しい式神さんと一緒だった。


 もしかしたら、あの娘たちとも…涙が出た。美月さんが頭をポンポンとして慰めてくれる、ありがたかった。


 亜由美ちゃんがアタックしたのはその晩だった、本部に呼び出してのことだったらしい、やはり亜由美ちゃんはすごい。


 私はどうしても行動に移せない……もっと強くなりたい…もっと…


 ここのところ毎日訓練場でトレーニングしている。変身しても暴走しないようにブーストは抑えている。抑えすぎると戦闘できないので毎日その限界を見極める練習だ。


 上がって、シャワーを浴びる、「うまくいかない…」ブーストを抑えすぎて、肝心の戦闘力が落ちてしまっているのだ。


 着替えていると、訓練に付き合ってくれた、装備課の娘がやってきた。


「うまくなじめてないみたいだね」


「……」


「普段から慣らしていくしかないかもね、これを使ってみて」と、変身リングを渡されました。


「これは?」


「これは試作品でね、精神を鍛えるためのリングなんだ、変身機能は付いてないよ」


 つけると変身した状態と同じ精神状態になれるそうです。


 早速付けてみます、…ほんとだ、変身した時と同じ高揚した気持ちになれる。なんでも出来るようなあの感じ。これなら……


 私は、正人さんを家に招待した、マンションに一人暮らししてて良かった。理由はうまい理由が無かったので美月さんに相談した。


「美奈ちゃんがそういうんならうまいことやりますかねぇ」


 どうやってか知らないが三人で手料理を食べようということにして連れて来てくれた。


 そして楽しく食事をしてお茶でもというところで、「急な用事でねぇ、先に帰るね」美月さんが帰り、送って玄関まで来た私に、「うまくやるのよー」と含み笑いをして言った。


なぜかサムズアップまでして。


 部屋に戻ると正人さんがテーブルに突っ伏していた、美月さん……盛ったのね。


 私は試作リングを装着して魔力を通した。精神が高揚して何でも出来る気がした。身体強化で正人さんを抱えると、寝室へと連れて行った。


~~~~~~~~~~~~


薔薇そうび 「最近プラチナ安定してるわね」


美月 「そうでしょー暴走もしなくなったし」


「何か心境の変化でもあったの?」


「ふふふ、いいことでもあったんじゃない?」


「?」



ここまで読んでいただいて有難うございます。


誤字・脱字などありましたらお知らせください。


感想などをいただくととてもうれしいです。


次回投稿は5月9日17時の予定です

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ