14話 アミィ 奔る
※歓迎会の次の日の話です。
亜由美にとっては最悪の目覚めだった、ベッドでぽっかりと目を開けた亜由美は、その瞬間はなにがあったかわからなかった。
(たしか、美奈ちゃんがソファで寝ちゃってて、私も急に眠く…でもしらゆきちゃんが居なくて!)
飛び起きた、部屋を見回すと隣のベッドに美奈がすやすやと寝ていた。
(あれは眠りの魔法…かけたのははつゆき?なんのために?)
とりあえず、起きて身づくろいをして部屋を出る。そのまま足は自然に正人の部屋に向かっていた。この角を曲がると正人の部屋のある廊下に出る、曲がったところで廊下の向こうを背中を向けて歩く二人が見えた、
「!」
一人は正人、見間違えようがない、そしてその腕にもたれるようにして歩いているのは?
「しらゆき…ちゃん…」
付き合いの浅い者であれば、はつゆきと間違うであろうが、亜由美は毎日顔をあわせているので間違えようがない。
ここで、彼女は昨晩の謎が一気に解けた、はつゆきは邪魔者を眠りに誘い、しらゆきを正人に差し向けたのだということを、前に進んで声をかけようとすると肩に手が置かれて制止される。振り返ると美月が半ば苦笑気味に立っていたのであった。
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しばらく後、ティーラウンジに亜由美たちはいた。
「美月さんも眠らされたんですか?」
「いいや、あたしにはああいう魔法はきかないんだよねぇ」
亜由美も美月が偵察、工作系の魔法に特化した魔法少女だと知っていたので、当然バッドステータス、状態異常系の攻撃にはレジストできるはずだと判っている。では、なぜはつゆきたちの工作に抵抗しなかったのか不思議に思った。
「だって、健気なあの娘たち見てたら止められないでしょ」
そう言われて亜由美は彼女たちのことを思う、人によって作り出された彼女たちは長い時を過ごして人と同じ{心}を手に入れた。はつゆきは正人を愛している、まっすぐに、ゆるぎなく。
しらゆきもそうなのだろう、はつゆきが手を貸すくらいなのだから。
翻って自分はどうなのか、告白して、正人に振られた時に躊躇わなかったのか?それから1年近くなにも出来なかったのではないか、そのような思いがぐるぐると回る。
「素直な気持ちで考えてごらん」
其の言葉に目を上げると、にっこり微笑む美月がいた。
「想いだけでも、願いだけでもだめなのよ、亜由美の望みに素直になるの、そうすれば、道は開けるわぁ」
「……」
そうだった、自分は自分の気持ちに忠実だっただろうか?素直な気持ち…「好き、正人が好き」
再確認。
美月がうなずく、亜由美もうなずく。
もう…迷わない。
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次の日、Y市へ式神のスカウトに行っていた正人たちが帰ってきた。若林さんが、きりしまの主になって副会長となんやかやあったのはついでの話だ。
当然ながら正人はひゅうがたち複数の式神をつれて帰ってきていた。隙をみて、正人に今日晩時間をとってもらうように話した、
正人を呼び出した場所は本部の地下訓練場だ、待機室の続きにロッカールームと個室になっている仮眠室、浴場などが付属しており、仮眠室に面した部屋はソファーが置いてあり、話をするには向いている。
「どうしたんだ?改まって?」
正人はそう切り出した、彼は彼女がここに呼び出してきたのは、訓練の後話があるからだと聞いていたから何の警戒もしていない。隣には魔法少女のアミィに変身している亜由美である。二人の目の前には「窓」がある。地下のこの部屋には本来窓などないのだが、開放感を出すために窓にあつらえた巨大モニターが外の風景を映している。今は街の夜景を映し出している、どこかのタワーからの映像のようだ。
「改めて言いたかったから…正人が好き、愛してるって」
「……」
アミィは横に座る正人の顔を見ながらはっきりと言う。正人も彼女の顔を見つめている。そして、アミィがリモコンを操作して部屋の照明を落とす、窓からの擬似夜景の明かりだけが二人を照らしている。
そして、アミィは正人に抱きつく、大胆な行動が出来るのは、精神力をブーストさせるスーツの力だろうか。
「だけど、俺には…」
「判ってる!はつゆきたちのこと、でも私だって!」
というと、彼女は変身を解く。変身を解いたその姿は一糸纏わぬ姿だった。
「あなたの、ものになりたい……」
スーツの加護を無くして、少し気弱になった亜由美に正人は無言で答えを返してあげた。そっと抱きしめかえして、キス。その後は二人の時間である。
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次回投稿は5月8日17時の予定です