閑話1 しらゆきの気持ち
しらゆき視点
私の名はしらゆき 2211号艦としてこの世に生を受けました。はつゆきとは三代にわたって姉妹艦しています、他の姉妹は転生してないのでどうしても二人で思い出話に花を咲かせてしまうんですよね、「人」ではないんですけどね。
ずっとはつゆきとは一緒にすごしてきました。けれど、始まりがあれば終わりもあるもので、お別れのときがやってきました。はつゆきは廃艦に、その後私は練習艦になり第一線から引きました。
でも、前世よりずっといいです、前世で私たちは共に戦いの中で最後を迎えたんですから。そのときのことを思うと悲しくなります、おかしいですね、「物」が悲しいって思うなんて。
驚きの出会いは、練習航海から帰ったときに彼女が会いにきてくれたことです、それも人の姿をして……魔法で式神になったと聞いたときにはもうびっくりして。陸の上の話とかで少し盛り上がってしまいました。
でも、うらやましいです、彼女なんかとても幸せそうだし。
好きな人が出来たって聞いてさらに驚きですよ、だって私たちは人によって作り出された「兵器」なんですから。
護衛艦なんてふわっとした名前をつけられても中身は一緒ですから。
私も式神になりたい……
そういったら「頼んでみるよ」って言ってくれました。是非お願いしたいです。
式神になれたら或る提督のお墓におまいりしたいんです。前世の私が最後を迎えた海戦で指揮をとっていた立派なお髭の司令官さんです。戦闘中に機銃掃射をうけて重傷を負ったのに、{司令官負傷}を知られたら、
輸送船に乗っている兵隊さんが心配するから知らせるなってそんな優しい人でした。
もう、動けなくなった「私」から他の艦に移ったとき、私は自分のことより司令官が無事に帰れることを祈ったんです。
その後のことはわからないまま時がたち、私は転生しました。転生して自分がしたのはあのお髭の司令官さんの消息を知ることでした、当時はネットとかもなかったのでなかなか情報が集まりませんでしたが、乗り組んでいた隊員さんの私物の本を読んでいるとある記事に目を奪われました。{キスカ島撤退作戦}……あの司令官さんは怪我が治った後又海の上に戻り多くの兵隊さんの命を救ったんですね。
そして大戦を生き抜いて穏やかな日々を送られたことを。
本当に良かった。
そんなことを思ってたら、彼女の様子が変です、なにがあったの?
「彼」が謎の魔獣に狙われて危険な状態になってるんだそうです、すぐに戻ろうとしています、まって! 私も連れて行ってと、私は彼女に懇願します。
彼女は「わかったよ、一緒に行こう」と言って、銀に輝くメダルを出しました、そのメダルで式神になれるそうです。
彼女は「彼」に代行者の資格までもらっていました、すごいです、単なる式神を超えてます。
それだけ「彼」が彼女を愛し信頼しているんでしょう。メダルが輝き私の中に飛び込んできて……気が付くと私は彼女の前に立ってました。
白の夏用制服を着て……彼女は姉妹だからほとんどおんなじになるんだねって言ってました、ということは「私」は目の前の彼女みたいな容姿をしているんでしょう。
ただちに「彼」の元に急ぎます、SH60を私が出して出発します。
式神となった私にも彼と彼女のパスを使った会話は聞こえてきます。魔獣を倒すためハープーンに持てる魔力を込めて発射する彼女、魔力がほとんど枯渇して苦しそうです、急いで現場につけます、そこにいたのは「彼」と魔法少女です、ベヒモスとかいう魔獣は倒され塵も残さず消滅していました。
「彼」は非常に驚いていました、彼女に良く似た私にです。でも、すぐに気が付いて副操縦席の彼女の所へ行きねぎらいと感謝を告げていました。枯渇した魔力を補給する作業もしていましたが、なぜか私も顔が火照ってしまいました、なぜなんでしょう?
とりあえず皆さんを乗せてこの場を離れましょう。彼の家にとりあえず向かいます。
その後彼女と買い物に出かけたときに私が顔を火照らせた理由が分かってしまいました、彼女には「それは一目惚れって言うんだよ」といわれてしまいました、意味を検索して納得する自分が居ます、彼女に言われた通り自分の心に素直に生きるべきですよね。
その後は同じく魔獣と戦う魔法少女の組織に行く事になりました、私は提督のお墓まいりにいきたいとお願いしました。
「寄り道してもいいかな?」
彼がいいよと言ってくれて皆も承知してくれました。
お墓に参った時に誓おうと思います、今度は護って見せるって。好きになったあの人を……
ここまで読んでいただいて有難うございます。
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次回投稿は5月3日17時の予定です