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9話 説明と招待

少し時間が遡る


 ベヒモスとの戦いの後、アミィを正人のアパートに連れて行ってからはつゆきたちは買い物に出ている。しらゆきにとっては初めての陸なのでその反応ははつゆきの時と同じだ。


 一通り見て回ってカフェで一休みする、


「やっぱり、実際に見るのは違うね」


「そうでしょ?私も最初はそうだったし」


 そう話しながら、彼女たちは、先ほどの戦闘について語るのであった。


「魔獣なんてのが居るなんてね」


「軍のライブラリにあるから過去にも出てるんだけど……」


「半年前だっけ、事件そのものは大規模な自然災害になってる」


 彼女たちは、軍のネットワークから得た情報と、世間のニュースを比較して、非常に食い違いがあるのを見つけていた、半年前に出現したベヒモスは東北の某県の山中に出た、非常に魔素濃度の高い地域で「ホットスポット」と呼ばれている地点であったらしい、通報を受けて直ちに軍が派遣されたが、結果は散々であった。


 軽火器では歯が立たず戦車まで投入したが仕留められず、魔法部隊で倒したとなっていた、魔法部隊がプラチナやアミィたちの所属組織であることは、はつゆきたちにはわかっているが、組織の内容についてはさっぱり判らなかった、かなりの情報統制が行われているようだ。


 事件の報道が魔獣のかけらも出ずに自然災害が原因で住民や軍に犠牲者が出たようになっていたのはその最たるものだろう。


「魔獣には魔法じゃないとだめなんだね」


「単純な物理攻撃は効かないと考えるべき、私たちの武器も魔法で再現したものだから効いた」


「ハープーン8発は流石にオーバーキルだったけど」


「その前に正人が結界を破壊してなかったら、耐えたかもしれない」


「……」


 ここで、正人の話になって少しの沈黙があった、2人の付き合いは長い、3代に渡った転生で姉妹として過ごしてきて、お互いに思ってることは伝わるものがあるのだ。


 しらゆきにははつゆきが正人のことを愛しているということを理解できている。自分たちが人によって作られた存在であると認識していてなおその感情を持てているのに驚きを禁じえない、だがその感情が自分にも宿っていることに気がつかされたのだ、もっともしらゆきには自分に人と同じような感情があることはうすうす感じてはいた、前世の今際の際のとき司令官を思う気持ちが人の持つそれと同じであるといまさらながらに気づかされたのだ、そして、もう一つ気がついたことは、司令官に対しての気持ちは尊敬からくるものであったのだが、正人を思うとき少し違ったものであるということである。それがはつゆきの思いと同じベクトルだということも。


 しかし、それを言うべきなのか、彼女はためらいがある。それは正人がはつゆきを愛しているからだ、戦場に着いたときのあれやこれやでそのことは十分に判っている。どうしたものか……


 沈黙を破ったのははつゆきだった。


「……いいいんだよ」


「?」


「正人を愛してもいいんだよ」


「!」


 いきなりの言葉にしらゆきは返事が出来ない、はつゆきは、にっこりと微笑んで言った。


「わたしたちは、正人を守るためにここに居る、そして愛することも、共に守りそして愛そう」


「共に守り、そして愛する……」


 しらゆきは言葉を繰り返し、はつゆきの方を見てうなずいた。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 しばらくしてはつゆきたちが帰ってきた、亜由美は2人をみて「ほんとにそっくり……」と言ってたが、見れば違いなんてすぐ判るだろう、髪色とか髪型とか……


「そんなの判るのは正人さんだけです!」


 と、亜由美に言われてしまい、?なぜに名前で呼ばれてるんだ俺?なんてことを突っ込もうとするとはつゆきがそこに爆弾を落とす。


「正人は私のすべてを知ってる、だからしらゆきとの区別が付く」


 そうして彼女はフッと妖艶な笑みを見せる。


 キター!それは破壊力抜群ですよ、亜由美もなぜかしらゆきまで固まってます。


「正・人・さ・ん・」


 亜由美の後ろからなにか黒いオーラのようなものが!いやあの鬼女の面が……漫画みたいでわかりやすい!いや、怖いです。


「説明してくださる?」


 はい、しっかりと説明させていただきました。


~~~~~~~~~~~~


「リア充してたんですね」


 亜由美がジト目で見る、なぜか隣のしらゆきまでなぜだ?はつゆき…さりげなく視線を窓の外に向けないように。


「でこれからどうするかということだけど……」


 先ほどの2人のジト目攻撃の前にかなり削られた、少し疲れが……


「組織に顔出ししてみようと思うんだけど」


 そういや、組織なんて名前なんだ?


「日本魔法協会です」


「政府の外郭団体ぽい名前だなあ」


「しょうがないんじゃないかねぇ」


どこからとも無く声がした、どこだ?亜由美の影から声がしているようだ。


「アミィ無事だったんだねぇ、良かった」


「月影さん!」


 どうやら、亜由美のお仲間らしい。


~~~~~~~~~~~~~~~~


「どうもぉ、アミィがお世話になりまして、しかもベヒモスまで倒してもらってありがとうございますぅ」


 約10分後、俺の部屋には新たな人物が加わっていた。


 格好はまるで忍者のような出で立ちといって良いのか?ただし、テンプレ忍者のように黒装束に鎖帷子、背中に刀ではなく、柿渋色の上下に表が迷彩、裏がオリーブ色のローブを付けていた。


 長い黒髪をポニテにしている、背は170近くあるかな?魔法少女としてのコードネームは「月影シャドームーン」で本名は影山美月だそうである。基本諜報や偵察が任務のようだ。


「本部から急行するように言われて来てみればすでにベヒモスは倒されてぇ、アミィは行方不明だしぃ、あわてましたわ、そうしたらアミィの魔力反応があったんでたどってきたんですぅ」


 流石です、ランクBは伊達ではない、語尾が変なのは仕様だと割り切ろう。で、まあみんなでお茶をしてるワケだが、改めてこれからについて話をする。


組織うちとしては、プラチナのしでかしたことは遺憾に思ってますぅ」


「魔法使いの方は貴重な人材なので優遇しますぅ」


「強制はしませんが是非とも加入していただきたいですぅ」


なんか、就活みたいになってきた。


(月影さんはこれが変身状態なの?)


(違うわ、これが普通の服装よ)


亜由美が変身すると髪の色まで変わるから、月影もすごく変わるのだろう、だが……


(最早、あの胸だけは変わりようは無いだろうな)


アレは危険だ……俺は目を向けまいとしているのだが、視界に入るそれをそらすのは大変であった。


(大量破壊兵器だ!)


 激しく主張する彼女の胸部装甲に他の3人も目のやり場に困ってるようだった。3人とも十分主張しているのだが、彼女の前では満月に抗う一等星といったところか。


((正人のスケベ!))


パスでハモらないで下さい……


「あの……正人さんが良ければ全部見せますから!」


 さらに斜め上の反応したあゆみもいた!



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 善は急げということなのか、上京する事になった。SH60にみんなで乗り合わせて行くことにする。魔力が切れなければ航続距離?なんですか?それは?というすばらしい乗り物だ。オリジナルより非常に静かだし。


 途中でしらゆきの要望で寄り道をする。場所はとある霊園である。しらゆきが前世で最後を迎えたときに部隊の指揮を執っていた指揮官のお墓だ。


「提督、しばらくぶりです、生きておられるうちにお会いできればうれしかったのに……」


 線香を手向け手を合わせる。


 しらゆきがしたかったことがこのお墓まいりだったと知った。


「最後まで守れなくてごめんなさい、ずっと心残りで」


 目を潤ませている。


 その指揮官は自分が機銃掃射で重傷を負ったのに兵隊が指揮官負傷を知って不安になるのを思って、報告をやめさせたという。やがて力尽きたしらゆきから退艦させられて、提督としらゆきは永遠の別れとなった。しらゆきが転生したときにはすでに亡くなられた後だったようだ。


 転生して「しらゆき」となって彼女はその後の提督の活躍を知ることになる、敵に包囲され玉砕を待つばかりであった島の守備隊を一人の犠牲者も出さずに撤収に成功させた、その後も輸送作戦も成功させて最後には敵の泊地に殴りこむ無謀な作戦を成功させたのだ。


「見ていてください、今度は絶対に守って見せます」


 そう言って立ち上がると、俺の方を向いて、決意のまなざしでこう言った。


「私はあなたの剣にして盾、あなたを必ず守ってみせる」


 そしてはつゆきに向かい頷く、はつゆきも答える。


「共に守る、正人を守る、それが私たちの存在意義」


「わ、私だって!」


 亜由美まで参戦したよ!


「いい話やねぇー」


 月影さん、イントネーションの違う関西弁ははやめてください……


~~~~~~~~~~~~~~~


 なんか月影のお陰でいい雰囲気が微妙になってしまった。そして、ついに到着した。


「ここに本部があるのよ、驚いた?」


 はい、驚きました、まさかこんな場所にあろうとは……秋葉原の通りに面したビルですか。無言になった俺たちに月影さんが追い討ちをかける。


「木を隠すならなんとやらと言うでしょ、ここだったら変身しててもただの{レイヤー}さんだと勝手に勘違いしてくれるしぃ」


 いや……別にいいです、なんかすごく残念な気がするんですけど。気を取り直して見るとビルの入り口にはそっけないと表現するしかないような看板がかかっていた、{公益法人 日本魔法協会}となっている。


(こういうとこだけお役所っぽいなあ)


 と、思いつつビルの中に入って突き当たりのエレベータで最上階へ。着いた先にはドアがあり、ドアにはプレートがついていた。


{協会会長室}


 月影さんはさっさと進んでドアをノックもせずに「がちゃり」と開けて。「会長ー居るぅー?」と、友達の部屋に入るような感じで入った。亜由美も流石に顔を引きつらせている。


 そして迎えてくれたのは……


「お帰りぃー、お疲れさーん」


 なんとも気が抜けるような返事であった。



なんか、月影のキャラのせいでいろいろ残念なことに…

彼女の最終破壊兵器は伊達ではないようです。


ここまで読んでいただいて有難うございます。


誤字・脱字などありましたらお知らせください。


次回投稿は5月2日22時の予定です

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