8月22日 月曜日
8月22日 月曜日
今週は金曜日まで朝7時から出勤。通称、早出であった。
普段は7時ギリギリに会社に着くのだが、今日は30分前には会社の休憩室でインスタントコーヒーを飲んでいた。
「お、今日は早いなあ」
出勤してきた橋本さんが軽く驚く。
「おはようございます」
いつもより大きな声で挨拶していた。橋本さんは少し笑いながらコーヒーの粉をコップへ入れる。
「その様子じゃ、一昨日のデートは上手くいったんだな」
「はい。昨日もお昼ご飯一緒に食べました」
「へええ、良かったじゃん」
仕事の始まるギリギリまで僕の自慢話を羨ましそうに聞いてくれた。
「で、今日は早く出勤してきたんだな」
自慢話を聞いてもらう為。
「でもそれだけじゃないんです。何か彼女を見ていたら仕事にやる気出してて、自分も見習わないといけないって感じたんです」
真面目そうな顔で聞いてくれる。
「仕事が出来るとか出来ないじゃなくて、やる気をもってやるのが大事なのかなあって」
「いい事言うじゃん。そう言う事さ」
コーヒーを一口飲んで続ける。
「俺が言っても全く理解しない癖に、彼女が出来た途端にこれじゃ俺の立場が無いよなあ」
ため息交じりにそう溢す。そう言えばいつも橋本さんはやる気を持って作業しろとか何とか言ってたような気がする。
「人間そんなもんさ。自分が変わろうと思わないと本質なんて何も変わらないのさ。きっかけはともかく直ぐに元通りにならないようにしっかり頑張りな」
コーヒーを飲み干すと引継簿を読みに休憩室から出ていった。
平日は殆ど会えなかった。
仕事で毎日のように残業があり、帰るのは10時くらいになるそうだ。その時間から会えない事もないのだろうが、睡眠時間が削られるのは可哀そうだ。
電話は毎日したが、出来るだけ短めにしていた。
『今週もちょっと忙しくて……日曜日だけは何とか会えるわ』
「仕事で疲れてない? 無理そうなら次の週でもいいんだよ」
本当は会いたくて会いたくて仕方ないのだが、彼女に負担を掛けないのが一番だと考えていた。
『うんん。日曜くらいパーっと遊ばないと逆に疲れちゃう。楽しみがあると夏バテにもかからないらしいじゃない』
初めて聞いた。でも考えてみるとそうかも知れない。
「じゃあ買い物、楽しみにしてる」
『うん。私も楽しみ』
「じゃあね」
『……』
電話は切れてない。
「もしもし?」
『……早く会いたいなあ』
耳元でささやかれると胸が苦しくなる。
「……うん、僕も会いたい」
仕事が一段落したら暫くは楽になるらしいので、それまでは我慢するしかない。
でも、
「どうしても会いたくなったら夜中でも自転車でぶっ飛ばして行くから」
『うん、分かった。どうしても会いたくなったら寝てても電話するわ』
「じゃあね、おやすみ」
『うん、おやすみ』
そっと電話を切った。
会える時を心待ちにし、会っている時間を精一杯楽しもうと思った。