第五話〜外国人?〜
「バールッ何か言ってよ」
僕は奴の攻撃を必死でかわしながら、バールに聞くが答えも何にも返ってこない。
「っっ」
右上の肩にするどい痛みが走った。切れている。真っ赤な血がじわじわと服に、にじみだした。
いつもの僕ならわんわん泣いて、動けなくなるような結構、深いキズ。
けど今動きを止めたら確実に心臓をつかみ取られて潰されるだろう。
奴はなかなか獲物が捕まえられなくて、かなりイライラしている様子だ。目が最初に見たときよりも大きくなっている。
周りの緑だった草はすっかり枯れて、僕の血で赤く染まっている。
肩ほど深い傷ではないが体中傷だらけだ。服もボロボロ。
剣を触ったこともない僕が奴に攻撃できるはずもなく、剣はただ持っているだけで全然やくにたたなかった。
肩がじんじんして熱い。頭がくらくらして、目の前が真っ白になって・・・・・。
僕は、ばったりと地面に仰向けにたおれこんだ。
奴が僕の前で真っ黒い歯をむき出しにして、笑っている。
手を大きく振りかざした。とどめをさす気だろう。
もうだめだ。14年の人生短かったなぁ。死ぬ前にもう一回だけピアノが弾きたいなぁ。
死んだら何処に行くんだろう。天国?僕は地獄かな?
地獄とかにもピアノとかあるのかなぁ。
生まれ変わっても、またピアノが弾きたいなぁ。
できれば今度は有名なピアニストになりたいなぁ。
奴の手が届くまであと数秒だろう。僕は死ぬ前にもピアノの事を考えていた。
さようなら、お父さん、お母さん、啓太・・・・・・・・・・
チュドーーーーーーーーーン
(!?!?!?)
ふっとんだ!!!!!!?
僕の前にいた奴が何メートルも遠くに吹き飛ばされた。
「どうなって」
手元を見るとバールは剣になったまんまだ。
意味わかんないよ。死ぬ覚悟まで決めていたのに。別に死にたかった。ていうわけじゃないけど・・・・・。
そんな事を考えていると、少し低めの声が聞こえてきた。
「おいおい少年。まだまだ人生、先は長いぞ!!こんなところで諦めるな!!」
その声の持ち主は、奴が吹っ飛んでいった方向とは反対のほうにいた人の声だった。
その人は短めの金髪に青い目。ジーパンに白いTシャツ。Tシャツの上にはパーカーを
はおったカッコイイ外国人だった。歳は20代くらいだろうか・・・。
すっごい、ハイテンションな人。
肩には、バイオリンが刻まれた茶色の大砲のような物をしょっていた。
「あの〜」
「まぁ、心配するな!!こいつは俺が、かたづけてやるから!!!」
その人は、そう言って大砲をかつぎなおした。
向こう側を見ると、また奴が起き上がっていた。
その人は、奴が起き上がった瞬間に大砲から、何かを奴めがけて、ぶっ放した。
音符だった。大砲から出ていたのは、色とりどりの綺麗な音符。
その音符は奴に見事に直撃!!!!
ドッカーーーーーーン
すさまじい音で奴のいた所は白いけむりで何も見えなくなっている。
けむりが消えても奴の、赤黒い髪や角。真っ黒い牙はなかった。
(もう、意味がわからないよぉ・・・。)
傷はすごく痛いし、この人がどんな人かも、わかんないし。
「大丈夫か??」
その人は、ニカッと笑って僕の所まで来た。
「あ、はい。大丈夫・・ですけど、あなたは何なんですか?」
「そういえば自己紹介がまだだったな。俺の名前はラッド・ブレイン。よろしくな!!
お前の名前は?」
「僕は、上野光輝です。よろしくお願いします。あ、あのさっきは、助けてもらって、ありがとうございました」