第四話〜戦い!?〜
そう言うとまたバールは歩き出した。
見わたす限りの草原の中に何か大きなものが、ぽつん。と置いてある。
近づくにつれて、その物の形がはっきりとしてくる。
茶色くて落花生のような形の楽器。バイオリンだった。
バールは真っ直ぐにバイオリンに向かっている。
「えっっっ?!」
どうかしましたか?てバールは頭に?を浮かべてコッチをみた。
どうしましたか?ってぇ。そりゃ誰でもこんな大きなバイオリンあったら驚くだろう。
遠くから見たら普通のバイオリンだったけど、近くに来て見ると普通のバイオリンの何倍もの大きさ。ピアノくらいの大きさだったのだ。
「バール。このバイオリン誰が弾くの?こんな大きいの、こんな所で・・・」
落ち着いて質問ができるのは、慣れてきたからだろうか。
「あっ、はい!!誰も弾きませんよ。入り口。ですから」
「入り口って?」
「私たちが此処に来たピアノと同じです。まぁ、弾けないこともないですが・・・まず誰も
弾きませんね」
「入り口って?此処はもう『音楽』の世界じゃないの?」
「ええ、そうですよ。ただ此処から歩くと心音の塔まで、かなりの時間が掛かるんで、ワープするんです」
「ワープ?」
「はい。『音楽』の世界では何箇所かこういうワープ地点があるんです。此処はとてもひろいですからね」
「ふ〜ん」
「さぁ行きま・・・・」
途中で話すのを止めてしまったバール。その顔はとても真剣だった。
「バ、バール?」
僕はいきなり表情が変わったバールにあせってしまった。バールをつかんで、揺さぶるが表情を変えないバールにすごく不安になってきた。
この世界で頼りになるのはバールだけなのだ。親も友だちもいないのだ。
涙が出てきそうになった時バールがボソッとつぶやいた。
「あいつら・・・もう、かぎつけてきやがった」
「えっ?」
バールが見ている方向を見てみると、何かが近づいてきている。
フワッ僕の手からバールが離れた。
「光輝さん。戦いますよ」
(!?!?!?)
僕は、目にたまった涙をぬぐって、もう一度見てみた。
見える。子供だ。子供だけど普通の子供じゃなかったのだ。
赤黒い長めの髪から生える一本の角。人間じゃありえないほどの手の長さ。口からのぞく
真っ黒い牙。ぐりぐりの大きな黒い目。
その何だか、わからない物がすごいスピードで僕たちに向かってきている。
そいつが通ったあとにある草は枯れ掛かっている。
(何なの!!あいつ!!)
「バ、バール。どうすればい、いいの!?」
怖い。もうすぐ僕たちの所まで来るだろう。そうしたらあの長くて黒い爪や牙で雑巾のように
簡単にボロボロにされるにちがいない。
「光輝さん。私をつかんでください。あいつが来たら、思いっきり私をふってください」
「うん・・・。」
逃げ出したくても、あのスピードならすぐに追いつかれてしまうだろう。
ということは・・・・・・・・・・
「戦うの!?!?!?!?」
「はい。それしかありません。・・・・・来ますよ」
僕はバールを胸の前でギュっとつかんだ。
「シャァァァーーー」
蛇が威嚇するときに出す音のような声を出して突っ込んできた。そしてあの長い腕をのばしてきた。
怖すぎるよ〜!!!!!!
「うわ〜〜〜〜〜〜〜」
ブンブンブンブン
僕は真っ青になりながら目をつぶって、バールを無我夢中でふりまわした。
するとバールの形が変わった。
僕の体と同じくらいの大きさの剣で刃の部分は半分が黒、半分が白で出来ていて、
柄の部分はピアノの鍵盤のようになっている物になっていた。
よくわからない奴は一瞬、怯んだがまたすぐに襲って来た。
「!!」
横に飛びのくと僕が居た所に奴の手があった。ちょうど心臓のあたりに・・・
「バールッどうすればっっ!!」
奴は次々に攻撃してくる。泣きたくても、泣ける様な状況じゃなかった。