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ぼくらの戦争歌  作者: 竹魚 凛人
前奏曲
1/8

前奏曲


     これは、ぼくらの戦争歌。





「抗って見せよ」


と、遥か遠くで無責任な神は嘲笑った。




【妖怪】――人の理解を超えた不思議な現象や不気味な物体




古来から人と、妖怪と呼ばれる人外の生命は、居場所や同胞の為多くの血を流し戦ってきた。


人を殺す妖怪もいれば人を愛す妖怪も居、また妖怪を憎む人も居れば妖怪を愛す人も居た。


そうして幾度も刃を交えながら歴史を歩んできた世界は。




人の荒廃により、均衡が保てずに破綻しかけた。


妖怪は今までの鬱憤と憎しみを晴らすため人を殺し、縄張り争いの為戦を起こし、人は人同士の戦を何度も重ね、荒れ果て、そして妖怪とでさえも剣を交えるようになった。




これはありきたりな悲劇で始まり、ありきたりな惨劇で終わる、ありきたりな者騙り。




舞台は日本、東京区切国町。




妖怪を取り締まる人間・正義課。


人の世を造り替えようとする組織・鴉。


人を憎み妖怪の世を作ろうとする組織・コンビクト・サーカス。


人の世に溶け込み愉快に生きるネット上の集団・フルムーン。





そして、人との共存を望むヴィツィオ書房店。




この六つの組織が、積み重なった火種を切欠に、ぶつかり合い、繋がりあい、切り捨てあっていく。



『僕バカだから、人の愛し方がわからないんだ』


『幸せやった。―――幸せやったよ』



歌が必ず終わるように、この物語には当たり前のように終焉がある。




『自分は弱いから嫌いです』


『時の為なら死んでもいい』




足並み合わせて、描かれたシナリオ通りに目指すは“トルゥーエンド”がかかれた最後の楽譜。



『仲間は大切になさい、敵は消しなさい』


『だから、……返します。ぜんぶ、あなたに、…』



胸に潜めた各々の誓。



『すべてをやり直そう。そうして、私たちが笑える世になるよう、願うんだ』


『主が滅べと命ずるなら、我は』



歪みは消えない。



『君の心は強くなったね』


『逃げるが勝ち、にゃんだから』



届かないのに歌う恋歌。



『お前は俺が守る』


『あかねさんが妖怪でも幽霊でもなんでも、自分はそれ事愛します』


『報われないだなんて簡単に言わないでよっ……!』


『……愛してとは言わないよ。ただ、最期の我儘ね。君の腕の中で、逝かせて』




過去に囚われたまま溺れる心。



『君に会えるなら、この命すら惜しくなんてないのに』


『お前があの時の鬼なのか?!答えろ!!』




どこかでかけ間違えたボタン。



『ねえ、楽しかったよ、大蛇。ありがとう、どうしようもない僕のそばにいてくれて。―――嗚呼、終われる』


『なあ優太朗。お前は、幸せに死ねたか…?』



『アレ、なんで、あたし……泣いてるんだろう』


垣間見える仄暗い過去。



『忘れてしまえと願った。でも、忘れてほしくなかった。ねえ、ぼくは何とも複雑な感情を持ってしまったようだよ。きみに忘れられるのが、怖いんだ』


『”ひと”っていうのはね、感情があって自分の意思で行動する存在をいうんだ。だから零は人じゃないから』


『了解』




終わりを求める命達。



『知ってたよ?あなたが、お兄ちゃんじゃないことくらい』


『このクソだらけの人生も漸く終わる』


『唄う、晴れやかにで、うたはるだよっ……』



歩む道を違った過去の親友。



『どうしてお前は、そっち側にいるんだよッ……!俺の道、正してくれよ!』


『俺、お前と酒飲みたかったなぁ』




闇に気づかず笑う人間たち。



『ひとも、妖怪も、やってることは結局いっしょなんだよ。』


『妖怪も人間も本当はみんな優しいんだよ』


『例えアイツらが妖怪だろうと、オレは関係ねェよ。ただの知り合いで、ダチッつーだけさァ』





笑え、



『…そっちよりこっちのが面倒がなくて済む』



嗤え、



『相棒だから。…キミを救いに来たんだよ』


『あなたは私みたいになっちゃだめ、人の為に生きなさい』


『人の涙にゃ弱いんだ。オジサン見てると辛くなっちゃうぜ』



哂え、



『自由は、怖いの』


『頭がいい奴は大嫌いだよー』


『人間と妖怪なんて、どこが違うっていうんだよ』






『いつか来る終わりが今日だった、それだけのこと』




最後に屍の上でラストワルツを踊るは誰か。



さあさあ皆様お手を拝借。


これより幕が上がるは、


面妖で、


最弱で、


不幸で、


絶望で、


理不尽で、


奇怪で、


愉快で、



惨劇で幕を閉じる、世にもありふれた歌劇で御座います。



どうぞ、御静聴願います。





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