突然の号哭〜ある日の変わった物語〜
7:00目覚ましが鳴る…
俺はこの時間が大嫌いだ。
甘い甘い夢から覚めるのは結構辛い。
俺は憎らしいほどけたたましくなる目覚ましを止めた。
今日は特に良い夢だった。
好きな人とアンな事やこんなことをする夢だった。
イライラが募る…
しばらくして母が俺を呼びに来たようだ…
どうやら2度寝をしたらしい。
時刻は既に8:40を回ってしまっている…
遅刻フラグだ…困った…
生徒指導科のG武先生にしばかれる…
おっと自己紹介を忘れたな…
俺は男子高校2年生だ。
名前は名乗らない。知らない人には名前を名乗らない主義なのでな。
一応彼女持ちでもある。
一応と言うのは…まぁ察してくれ。
ってなわけで今は結構ヤバイ状況になってる。
俺はそそくさと準備を済ませてトーストを咥えて家を出た。
家から高校までは結構近いので徒歩で行っている。
てかマジでこれはヤバイ。
俺は全力疾走で学校へ向かった。
俺の家と学校までの道に角があるのだがそこでは色々と事故が多い。
丁度そこを通った時視界の横で何かが横切った。
最初は可愛い子が俺とぶつかってって言うフラグかな?とか思ってたけどそんな事は無かった。
次の瞬間俺は宙を舞っていた。
正確に言うと轢かれたんだ。原チャに。
俺は轢かれたと分かるまで暫く掛かった。
そして堕ちた。身体が痛みを訴えると同時に俺の意識は消えていった。
………………………………
目を覚ました…
白い天井、白い壁、白く柔らかい布団、窓から差し込む白く柔らかい光、隣には赤や黄色の花が飾ってある…
ここは…?
そうか…俺は轢かれて死んだのか…
にしては身体は怠重く少し肌寒い…
そうか…ここは病院か…
まだ生きていたのか…
本当は驚けば良いのかも知れないが今はそれどころではない。
誰かいるかさがそう…
病室を出る。
そこれ俺は何知れぬ不信感を覚えた…
誰もいない…
綺麗に清掃されてるはずなのに誰もいない。
昼休み中か?と思ったがナースステーションには昼休み中でも何人かはいるはずだ…
辺りを散策する。
やはり誰もいない…
待合室に行く。
やはり誰もいない。
いや、待てよ!待合室のはずなのにテレビや売店が無い!
おかしい…ってことはここは?
と思い外に出た。そして俺は言葉を失った。
いつもの青色の空や青々とした緑が無い。
空や周りの風景は白くのっぺりとした何かになっている。
底知れぬ恐怖と不安に襲われた。
ここは何処なんだよ!!俺は死んだんじゃ無かったのかよ!!もうやだよ!!!!
そこで俺の意識がまた途絶えた…
…………………………………………
目を覚ました。
やはりまた同じ部屋だ。
だが今度は違う。
白衣を来た20代後半の研究員らしき人が隣に立っていた。
誰だこいつは…そう思った瞬間男が一言。
「適合者だ。」
そして男は俺の眉間に拳銃を当て……
引き金を引いた。
………………………………………………
俺は目を覚ました。何か悪い夢をみた気がする。体がだるい。
と言うよりここはどこだ?
白い天井。
見覚えがあるが思い出せない…と言うより頭が思い出すのを拒否しているような気がする。
と同時に隣で複数の人の泣き声を聞いた。
うるさいなぁ…俺はまだ寝てたいんだ…
そう思ったがこの声には聞き覚えがある…
誰だ!!
そう。それは正しく俺の家族だった。それに加えて先生や友達もいる。
俺は…何をしてたんだ…?
と思い白衣の先生に尋ねる前に白衣の先生は俺にこう話した。
「君は原チャに轢かれて一時は生死をさまよったんだよ。そして命は取り留めたものの今まで…そうか、君は寝てたから一瞬だったかな?まぁあの日から1年と半年、君は昏睡状態だったんだ。そのせいもあって今は自由に行動できないかも知れない。まぁ、そこらへんはリハビリすれば何とかなるから!がんばってね!生還、おめでとう。」
そうか…俺は原チャに轢かれたんだった。
俺は、生き返ったのか!
すごく嬉しかった。が、嬉し泣きしてる皆の後ろに白衣を着た研究員らしき人がいた。
見覚えがある…刹那、俺の身体は危険信号を発した。
恐怖で口が強張っている。
皆!!逃げろ!!!
予測してた事がその時起こった。
俺と白衣の男を除いて全員が血を盛大に吹き出し…死んだ。
そして男は俺に近づき…口を開いた。
「情報を開示。即時次フェイズへ移行。」
俺は今までのこと全てを思い出した。
俺は叫んだ。罵倒をぶつけた。
それを男は無視し、また口を開いた。
「お前は適合者。全宇宙の鍵だ。お前が覚醒すれば全ては真実となる。
お前はこの計画に必要不可欠なのだ。
そう。アンインストール計画に…」
おかしい…狂ってやがる…
なんなんだよ…宇宙の鍵って…
俺が何をしたって言うんだよ…
なんなんだよぉぉぉぁぉぁぁぁぁぁぉ!!!
俺は発狂した。こんなのは嫌だ…
誰か…助けてよ…
「第2フェイズ、解放しました。」
何処からか無機質な声が聞こえる。
刹那、空が赤くなった。真紅だ。
そして、月が近づいた。だが落ちては来ない。
草木は枯れ、人々は喧騒の中で戸惑い、鳥達は空を覆い尽くしている…
何が始まるのだろうか…あの物凄くつまらなかったいつもの日常は何処へ行ったんだ…
全ては…俺が悪いのか…?
もうやだ…死にたい…苦しい…
俺は舌を噛んだ…が死なない…?
何故だ?何故死なないんだ?
白衣の男は言った。
「お前に死なれては困る。保険をかけといて正解だったな。」
こう言うのを八方塞がりと言うのだろう…
絶望の淵へ立たされた……
白衣の男の狂気に満ちた紅い眼は俺の眼を見据え…
そこで俺は意識が途絶えた…
………………………………………………
俺は笑っていた。友人と…家族と…皆と…
何気ない日常が、本当は幸せだったんだって思った…
だが失った物はもう戻らない。
現状維持するのも辛い…
嫌だ…嫌だ…嫌だ!!!
もう何もかも無くなればいい…
楽になりたい…もう…
そして俺は…
「第3フェイズ、開放しました。」
………………………………………………
白衣の男はそこにいた…
はじめは真面目な研究員だった。
あの事件が起きるまでは…
ある日、男は何気無く研究室へ行った。
その日は休みだったのだが何と無く皆に会いに行きたいと思って行った。
いつもの研究室、いつもの空気。だが何か違う…
違和感を覚えながら中へ入った。
皆がいない。正確に言うと皆の服やその時持っていただろうと思われる物が床に落ちている。
なんだ…これは…
そして前を見た。
空間の中に光る何かがあった…
その光は…男を包み込み…
暖かかった。柔らかかった。居心地がよかった。
そして………
「全宇宙の4つのフェイズを開放してください。それはあなた方を幸せに導きます。
全ては、アンインストールの為に…」
………………………………………………
優しい光の中で、俺は目を覚ました…
俺は人間では無い。神に近い何かだ。
俺は悟った。
フェイズを開放すれば楽になれるんだと。
フェイズは4つあると白衣の男から聞いた。
あと一つ、それは何なんだ?
早く終わらせたい…
楽になりたい…
ねぇ、教えてよ…
やめろ!!!
終わらせても良いのか!!
誰だ…お前は…
誰でもいいだろ!
お前は自分の希望が無いのか!
楽になりたいんだよ…
生きていく事は確かに辛い。
だが!お前のエゴで周りを巻き込むなよ!
やめてくれ…やめてくれ!!
お前は自分を生きろ。
それしかない。
「第4フェイズ、開放しmガgngsk何bsybs深刻なエsmapmyb…………」
………………………………………………
目を覚ました。
長い夢を見ていたような気がする。
いつもの日常。
ありふれた日常。
他愛のない日常。
思い出した…
あれは夢なんじゃ無かった…
んじゃあ何で…
俺は4つのフェイズを開放したんじゃ…
どうしたんだろう…何故泣いてるんだ?俺は…
部屋に母が入って来た。
あの時殺されたはずじゃぁ…
俺は…何を…
何も変わっていない…
ただ一つを除いて…
その日の空はとても青かった。
fin.