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一分の手記

作者: 猫しゃんて

 私の残りの人生は一分。ちょうど一分後に死ぬよう調整して薬を飲んだので、死に至るまでの時間に寸分の狂いもないだろう。

 一分。これは、文章にすれば千文字。つまり、私が今書いているこの手記は完成を待たずして千文字のところで終わってしまうということだ。もしこれを読んでいる人がいたら申し訳ない。おそらく、この手記は中途半端なところで幕を引くことになると思う。それでもいいなら、読み進めてほしい。


 私が生きることを放棄した理由は至極単純で、この世のルールに気づいてしまったからだ。

 ルール。言葉にすればとても間抜けなこの三文字だが、この三文字が私を死に至らしめたのだ。

 さきに書いておくが、私が気づいたルールそのものについては、ここには書かないことにする。もしも誰かがこれを読んでいたらその人物もおそらく死にたくなるだろう。それは、避けたい。そんな悲しいことは、私だけが味わえばいいのだから。

 話を戻そう。

 私たちが生きているこの社会には、誰もが知っているが無意識的に目をそらしている一つのルールがある。それは、×××だ。×××は常識的に生きている人間ならば誰もが共感し、悲しみ、そして何度も期待してしまうものである。

 それだけならいい。それだけなら、よかった。

 しかし、私は×××の裏に隠された一つのメッセージを発見してしまった。そのメッセージは人間という種族を根本から否定しかねない非情極まりないもので、少なくとも私という一人の人間を殺すことになった。

 しかし、私はそのことについては悲しいと思っていない。むしろ、皆に対して申し訳なく思っているくらいだ。私だけが×××に秘められているメッセージに気づき、私だけがいち早くこんなおぞましい世界から脱出できるのだから。

 そう、これは私からこれを読んでいるあなたに対する自慢なのだ。あなたはこれからも×××に悩まされ続けながら生きていかなければならないが、私はもう一切悩まなくてもいい場所にいける。

 私は、幸せ者だ。


 そろそろ眠くなってきた。このまま意識が落ちてしまえば、私は薬の効果によって二度と醒めない眠りにつくことだろう。

 さようなら。不幸なあなたよ。


 いや、待てよ。

 違う。違う! 私はとんでもない勘違いをしていた。

 ×××はそういう意味じゃなかった。

 死の間際になって脳が活性化したのか、私は今更になってこのことに気づいてしまった。

 どうすればいい。しかしもう手遅れだ。

 ×××は、あなたの後



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