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第24話:国境の虚実

 ランリエル軍国境突破の報を受けたカルデイ帝都ダエンでは、ついにランリエル軍がやってくると大混乱に陥った。


 ある者はランリエル軍に負けてなるものかと義勇兵として軍に加わりたいと王城にある軍部へと押しかけ、さらにある者は今の内にとダエンを脱出しようとした。ギリスはこのダエンを脱出しようとする者を特に規制しなかった。


 脱出してくれれば食料の消費が少なくてすむ。こちらから追い出すのなら民衆の反感をかうだろうが、自分から出て行くなら止める理由は無い。


 ダエンを脱出した者がランリエル軍を追い払った後に戻ってくれば、脱出せずに残った者から、よく戻ってこられたものだと非難されるだろうがそこまでは俺の知った事でない。とギリスは考えていた。


 ギリスはランリエル軍による国境突破の対策の為、幕僚を招集し軍議を開いた。会議ではさまざまな意見が出された。


「やはりここはダエンに篭るべきである」


「なにも抵抗せずに篭城するのは士気に関わる。敵の先陣に一撃を加え出鼻を挫いてから篭城すべきだ」


「いや、敵も警戒していよう。出鼻を挫くつもりが撃退されれば返って士気が下がる」


 だが帝都ダエンの防衛について検討している幕僚達にギリスが問いかけた。


「そもそも奴らはなぜ国境を突破したのか?」


 このギリスの問いに幕僚達は唖然とした。


「敵は国境を突破する為に攻撃を仕掛けて来ていたのですから、国境を突破するのは当然ではないですか?」


「奴らは国境を突破出来るだけの砦を落したというだけで、まだほとんどの砦は残ったままだ。その様な状態でもし我らの帝都ダエンにまで進軍しようものなら、残っている砦の兵力に後方が遮断されて袋のねずみだ。自殺行為だぞ」


 ギリスの言葉に幕僚達は互いに顔を見合わせた。そして幾人かはギリスが言っている事を気付かなかった事を恥じているのか目を伏せている。だが1人の幕僚が口を開いた。


「仰るとおりですが、後方に十分な兵力を配置し、安全を確保する気なのではないでしょうか?」


「そうだ。十分な抑えの兵を配置すれば背後の憂いは無くなる。だが問題はその十分な兵力というのがどの程度必要かという事だ。地の利はこちらにある帝国内で、背後の憂いが無くなるほど十分な兵となると同数では心許ない。数倍の兵が必要だ。万一にでも抑えの軍勢が破れれば奴らは敵国内で孤立するのだからな」


「そして後方の抑えにそれほどの兵力を割いていてはダエンに向かわせられる軍勢が少なすぎ、到底我らを倒す事など不可能になるはず……という事ですか?」


 幕僚の1人がギリスの言葉を受け言い足すとギリスは「そうだ」と頷いた。他の幕僚達もギリスの疑問を理解しランリエル軍の真意を測りかねて互いの顔を見合わせた。


 だがそこへ新たな情報がもたらされた。国境を突破したランリエル軍がダエンへと向かわず、国境を突破した後に進路を変えて残っている砦群を取り囲んだと言うのだ。


「なるほど。ギリス将軍が仰られるとおり奴らは残りの砦も落すつもりで砦群を取り囲む為に国境を突破したという事だったか」


 この幕僚の言葉に他の幕僚達も「なるほど」と頷く。だが幕僚の1人が「しかし……」と前置きし発言した。


「砦を落したいのならば、取り囲むべきではないのでは無いですか?」


「それはどういう意味か?」


 ギリスは少し満足げな表情でその幕僚に問いかけ返した。今回は幕僚の1人が、ギリスが問いかけるより先に、敵の動きの不自然さに気付いた事に満足したのだ。


「砦群を取り囲むという事は当然砦に立て篭もる兵達の退路を断つという事です。それでは砦の兵士達は形勢不利となっても逃げ出せず、最後の一兵まで戦うという事になります。敵にとっても好ましい状態とは言えますまい」


「ああ。その通りだな」


 ギリスもこの意見に頷いた。


「それでは、奴らがどの様な考えで砦群を取り囲んだか意見のある者はいるか?」


「砦群に残った兵力がこちらへ合流しないように各個撃破するつもりなのでしょか?」


「砦群に篭る我が軍の兵力は元々1万。ランリエル軍に数箇所の砦を落とされた為兵力は減っているだろうから今はおそらく8千程度だろう。8千といえば多い兵力ではないが、砦に篭る8千の兵を倒そうとすれば2万以上の損害を覚悟する必要がある。だとすれば敵もその8千をこちらに合流させて一挙に叩くほうがましと考えるはずだ」


「しかしそれではますますランリエル軍の動きに合点がいきませぬ。何の意図を持って砦群を囲むのか」


「わからん。損害を少なく残りの砦群を落とす手があると言うのでも無くてはな」


 そこへ幕僚の1人が発言した。


「国境の砦群に対してもっと、増援をしておけば良かったのではないですか? そうすればやすやすと砦を落される事も無かったのでは」


 この幕僚の発言にギリスは内心呆れたが、勿論表情には出さない。


「砦の防御には適正人員というものがある。塀の上に身動きが取れなくなるほど兵士を並べても仕方が無いのだからな。当然死傷する兵士との交代要員は必要だが、それ以上の過分な人員を増やしても食料が無駄になるだけ……」


 だがここでギリスの言葉は途切れた。幕僚達がどうしたのかと不審に思っていると、不意にギリスは一言呟いた。


「……そうか」


 その数時間後、兵士に守られて大量の荷駄が帝都ダエンを出発した。急遽王都の食料庫と武器庫を開放し荷を満載しての出発だった。ギリスは自らこの荷駄の大部隊を指揮していた。しかしギリスは内心「もはや遅いか」と感じていた。


 すでにランリエル軍は国境の砦群を取り囲んでいよう。だがなんとかこの荷を砦群まで運ばなくてはならない。敵の包囲網に少しでも隙があればこの半分でも良い、送り込めればよいのだが……。しかし、先行させた偵察の報告はギリスの希望を裏切った。


「ランリエル軍の守りは厳重で、とても荷駄隊が通れる隙はありません」


 落胆し天を仰ぐギリスに幕僚の一人が問いかけた。


「一隊が敵を攻撃し敵を引き付けている間に荷駄を通す事は出来ないでしょうか」


 だがギリスはゆっくりと首を振った。


「いやおそらく無理だろう。軍勢を砦に入れるというならともかく、足が遅くしかも悪路を通れぬ荷駄隊をその程度の隙を作ったところで通せまい」


 ギリスは砦群のある方角を一瞥し、やむなく帝都ダエンへと引き返した。



 その数日後、国境砦群を守るバリェステの元にランリエル軍から使者であるサントリクィドが訪れ、バリェステはその使者と面会した。


 サントリクィドはデスデーリと並ぶ王子の腹心の外交官だった。デスデーリが国レベルや王子と同格レベルの相手の交渉の外交官ならば、サントリクィドはいうなれば王子にとって格下相手の交渉をよく任されていた。


「どの様な要件でいらしたのか? まさか降服を勧めてきたのでは無いでしょうね」


 生真面目に対応するバリェステにサントリクィドは愛想の良い笑顔を浮かべ一礼した。


「いえいえ。まさかその様な事で来たのではありません」


「では、どの様なご用件ですかな?」


「サルヴァ殿下は、先の砦群との戦いで捕らえた貴軍の将兵ら捕虜をお返しいたしたいと申しております」


「捕虜を返すだと?」


 サントリクィドの言葉にバリェステの表情に怪訝な物が浮かんだ。折角捕らえた捕虜を帰すなど本来有り得ない事だった。


「はい。その通りで御座います」


「そんな事をして貴軍に何の得があるというのだ?」


「そうですな。まず捕虜に食べさせる分の食料を節約できます。それに捕虜を監視する為の兵士を戦いに投じられます」


 確かにいう通りではある。が、折角捕らえた捕虜を帰す事に比べれば微々たるメリットのはず。


「そのあまりにも胡散臭い話をこちらに信じろと?」


「その様な事を仰られてもましても私は事実を申し上げているだけで御座います」


 さて。戦闘中にもかかわらず捕虜を帰すと言うと、帰す捕虜にまぎれて間者を侵入させるのが常套手段ではあるが……。とバリェステは思案した。


「それで今現在我が軍の将兵は何名くらいそちらの捕虜となっているのだ?」


 戦いとは意外と死者は少ないものだ。軍勢が壊滅と言ってもその死傷者は全軍の半分に満たない事が多く、その死傷者とて一括りに称されるが大半が死者ではなく負傷者である。


 そして防御側の逃げ道の無い城砦戦では未帰還兵の中には捕虜になっている者も多い。


 現在砦群の残存兵力は8千。元々の兵力1万から考えれば2千を失っているが、その内死者は半数にも満たず、生き残っている者の半数は負傷してそのまま捕虜となり、半数は敗北を認めて降服した者達だった。


「先の砦群との戦いで捕らえた者達ならば1千3百名ほどで御座います。その者達も解放される事を切望しております。だいたい捕虜を帰すといわれてそれを断るなど聞いた事がありません。彼らの願いを叶える為にも是非ご許可頂きたい」


 確かに捕虜を帰すと言われてそれを断れば砦に残っている兵達の士気にもかかわる。ここはやむを得ないか……。


「わかった。捕虜を引き取ろう。ただし条件がある」


「それはどの様な条件で御座いましょう?」


「それは、捕虜を帰して頂く時に申し上げる」


 バリェステの言葉に、今までにこやかに対応していたサントリクィドの表情が戸惑いに変わった。


「いや、さすがにどの様な条件かを言って頂けない事には、返答のしようがありません」


「条件を飲んで頂けないなら、こちらも承知する訳には行きませんな。お帰り下さい」


 バリェステ自身、無茶な要求である事は分かっている。だがこちらの要求を飲まなかったから断った、となれば捕虜返還の申し出を断った十分な理由になるだろう。それを見越しての要求だったが、サントリクィドの返答はバリェステの期待を裏切った。


「そうで御座いますか……仕方がありません。その条件を飲みましょう」


「条件を飲むと?」


「はい。やむを得ません」


「そうか。では捕虜を連れてきて頂こうか」


 自分が言い出した無理難題である。それを相手が飲むと言うならば引き下がる事は出来ない。バリェステは仕方なく承諾したが、もっとも自分がだす条件は敵の意図を防げるはずだった。


 バリェステとサントリクィドの交渉の数日後ランリエル軍から1千3百名の捕虜が砦群の前に引き出され、サントリクィドが砦群の前に展開する1千の帝国軍に向かって進み出た。


「間違いなく捕虜をお連れいたしました。お引取り下さい」


 深々と頭を下げるサントリクィドにバリェステも軽く一礼した後口を開いた。


「いや、その前にこちらの条件を飲んでいただく事をお忘れでは無いでしょうな」


「あ、はい……それは勿論忘れてなどおりませんが、どの様な条件なのでしょうか?」


「なに、簡単な事だ。1千3百名の捕虜。1人残らず身元を確認させて頂く」


「1千3百名全員で御座いますか?」


「そうだ。この砦の捕虜と言うなら、今砦に篭っている将兵達の誰とも知り合いでないなどありえない。身元がはっきりした者だけ引き取らせて頂こう」


 サントリクィドは慌てた様に口を開いた。


「いえ……。しかしこの砦群には元々1万もの将兵が居たと聞いております。数名くらい誰とも親しくない者が居てもおかしくは無いのでは……」


「そうかも知れません。しかし砦の安全の為その者にとっては不幸であろうがお引取り願うしかありませんな」


 バリェステそう断言し、結局彼の言うとおり砦群に残り帝国軍は数百名ずつ捕虜と面会する事となった。迂遠で時間のかかる作業ではあるが、砦の安全の為には必要と最後の1兵になるまで調査は行われ、数十名を除いた者が砦群に収容される事となった。


「それでは、確かに捕虜は返して頂く」


 ランリエル軍の捕虜にまぎれて間者を送り込もうという策を見破り、まんまと安全に捕虜を取り返したと考えたバリェステはサントリクィドにそう言い放って背を向けた。


 それを見届けたサントリクィドもバリェステに背を向けランリエル軍へと歩を進ませたのだった。だがその顔には笑みが浮かんでいた。


 そして捕虜を砦に収容すべく砦の門を開け放った。

 捕虜達は続々と砦に入っていく。だが、ランリエル軍からさらに万単位の大勢の鎧も付けず武器も持たない者達が進んできた。


 帝国軍から数名の騎士が進み出て慌てて静止する。


「まてまてお前達は何者か。これ以上砦に近づくな!」


「我々はランリエルに捕らえられていた捕虜だ。今日解放されるといわれてやって来た」


「なんだと!?」


 騎士は急いでバリェステの元へと戻り報告する。


「なんだと? さらに大勢の捕虜だと?」


「はい。そう申しております」


 騎士とバリェステは捕虜の群れに目をやったが、彼らは既に間近まで進んできていた。数名の騎士に万の捕虜を制止することなど出来なかったのだ。


「まてまて! 砦に入るな!」


「何を言うか。俺達は帝国軍の兵士なんだぞ! どうして砦に入れてくれない!」


 捕虜達は制止を聞かずぞくぞくと砦に入っていくが、捕虜受け渡しを監視していた1千の帝国軍も、さすがに味方という者達を攻撃する事が出来ず制止しきれない。


「いかがなさいましょう」


 騎士は困惑しバリェステに問いかけたが、さすがのバリェステもこの事態に効果的な指示を与える事が出来なかったのだった。


 その帝国軍の混乱を尻目にランリエル軍へと進むサントリクィドは砦へと振り返り誰も聞いている者が居ないにもかかわらず呟く。


「だから先の砦群との戦いで捕らえた貴軍の将兵「ら」を返すと申し上げましたのに」


 つまりランリエル軍は砦群との戦いでの捕虜だけではなく、帝国軍によるベルヴァース侵攻戦での捕虜もすべて帰して来たのだった。


 国境の砦は一つだけではなく現在18の砦が健在だったが、初めの砦に入りきれなかった捕虜達は次々と別の砦の門に縋り付き中に入れろと訴えた。


 結局返されてきた捕虜は3万を超える人数となっていた。

 バリェステは今からでもと捕虜達の身元確認を行い、身元のはっきりしない者はやむを得ず牢にほうりこんだ。彼らは間違いなく帝国軍の兵士だと言い張ったが仕方が無い。


 だが3万人以上という捕虜を抱えさせられたバリェステは困惑した。この捕虜が食する食料をどうすべきか? バリェステは頭を抱えた。


「食料はあとどれくらい持つのか?」


「それが……元々1年は持つだけの食料を用意しておりましたが、それが5倍の人数となりましては……」


「はっきりと申せ」


「は。3ヶ月は持たないかと」


「3ヶ月か……」


 バリェステの顔に絶望の影が落ちていた。


 ここでバリェステや帝国軍に備蓄が少ないと責めるのは酷だ。兵士が1年篭れるだけの食料の備蓄がどうして少ないといえよう。よもやランリエル軍がこの様な手を打ってくるとは。


 勿論、敵を兵糧攻めにする為に敵の捕虜を返すという作戦が今までも行われた事が無い訳ではない。時には城の付近にある村々を襲い、民衆を城へと追いやり兵糧攻めを行う事すらある。しかし、付近に村などない国境の最前線の砦に前の戦争で捕らえた捕虜全員を返してくるとは、さすがに予測出来なかったのだ。


 しかも捕虜を押し付けられてから数日後、帝国の砦群ではさらに深刻な事態が発生していた。砦群の兵士と捕虜との間で対立が発生したのだ。


 捕虜達はひどい拷問を受けていた訳ではないが当然の事ながらランリエル王国で優雅な生活をしていた訳でもない。狭い独房に入れられ粗末な食事を与えられていた。


 久しぶりに自由の身となった彼らがまず望んだのは、腹いっぱいの食事だった。だが、捕虜達の所為で食料が不足している時に「腹いっぱい食事を食わせろ」とは!


 しかし捕虜達の気持ちも分からないでもない。しぶしぶ2、3日は希望通り捕虜達に腹いっぱい食わせたが、やはり砦の兵士達には気持ちの良いものではない。


 捕虜達が来たおかげで今この砦は危機に瀕している。そして、自分達は食料の消費を抑える為に逆に食事の量を減らされているのである。とはいえ捕虜達に飯を食うなとは言えず、それがまた不満を募らせ些細な事で喧嘩となるのだ。




 砦群の様子を探らせている密偵から内部での対立が深刻化していると報告を受けたサルヴァ王子は、思わぬ事態に自身が驚いていた。敵を兵糧攻めする為に捕虜を押し付けたのだが、食料を巡っての対立がこれほど深刻になる事までは予想していなかったのだ。


 だが、砦群の戦力もこれで4万ほどにはなろう。カルデイ帝都ダエンの敵軍はダエンの守りを除いても3万5千程度は動員できると考えられる。つまり合計では約7万5千。


 こちらも出陣時には8万を超えたが砦攻めで損害を受け8万をきっている。帝国軍がダエンからの軍勢と砦群の軍勢とでランリエル軍を挟撃しようとしてきてもおかしくは無い。


 その為王子は警戒を厳重にし、もし敵が出てくれば即座に捕捉し各個撃破してくれようと待ち構えていた。サルヴァ王子にはむしろ望むところだ。だが敵も、方や一国の中心にある王都と、方や端にある国境のそれぞれの軍勢がうまく連携して敵を挟撃する、といった事が困難である事ぐらいは分かるらしい。


 サルヴァ王子は、一度全軍を集結させカルデイ帝都ダエンへと向かう事によって、砦群の軍勢をおびき出して見ようかとも考えたが思いとどまった。


 どうせ敵もこんな手に引っかかりはすまい。後2、3ヶ月もすれば敵の食料はなくなる。その前に敵は最後の手段としてダエンへと突破を計るはずだ。精々警戒しておくとしよう。敵が降伏してくれれば被害が少なくて済むのだが、さすがにそうはいくまい……。


 しかし予想より早く、それから2ヶ月を待たずして国境の帝国軍による包囲網突破作戦が敢行された。そしてこれを警戒していたランリエル軍により大敗したのである。砦内での兵士と捕虜の対立が避けがたく食料がなくなるよりも内部崩壊が先という状況までになり、その前に包囲突破に賭けると守将のバリェステが決断した結果だった。


 わずかな人数が砦群へと逃げ戻って再度立て篭もったが、もはや砦群を守りきる兵力は無く砦は瞬く間にランリエル軍に落とされていった。そして来た時より人数が増えた捕虜達は、またランリエルへと連行されたのだった。


 サルヴァ王子は帝国軍を徹底的に追い詰めるつもりだった。軍事的には勿論であるが、心理的にもである。だからこそわざわざ砦群の帝国軍の退路を断ち消滅させたのだ。


 そしてベルヴァース軍にも参戦を要求した。軍事的にはランリエル軍のみで帝国を倒す自信はある。しかしベルヴァース軍にもまだまだ消耗して欲しかった。


 もっともベルヴァース軍も出陣してきたとはいえ司令官はあの食えない老将グレヴィだ。のらりくらりとこちらの要求をかわし、まともに戦うのかも怪しいものだ。


 だが「ベルヴァース軍がカルデイ帝国攻略に参加している」という事も重要だ。帝国に味方する者はいない。という事がさらに帝国を追い詰めるのだ。


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