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断片の使徒  作者: 草野 瀬津璃
旅の終わり
334/340

 2



 ノコギリ山脈の中腹に、ふいに広場のような場所が現れる。

 その中央には、砂色の石が正方形に敷き詰められ、四隅には柱が建っていた。いくつかは風化して崩れ、コケや蔦におおわれているが、無事な柱にとまった鳥のモンスターが、上からあいさつをした。


 ――これはこれは。お久しゅうございますな、クロイツェフ様。無事のお帰り、このワーズワースはうれしく思いますぞ。


 修太が見上げると、極彩色の鳥がとまっている。片足の鳥で、隻眼だ。太陽を背にしているせいで、緑色の目がらんらんと輝いて見えた。


「おお、ワーズワースか。久しぶりだな。変わりはないか」


 ――何事もなくとお返事できれば良かったのですが……。ちょうどご連絡しようかと思っておりました。折よくお帰りになって助かりましたよ。


 ワーズワースは翼を広げ、スーッと降りてきた。ダンジョンの入り口が現れる。サーシャリオンは左腕を伸ばし、ワーズワースを腕にとまらせた。


「なんだ、人間が侵入したにしては、この辺りは平和のようだが」


 ――平和なものですか! パスリルとレステファルテの兵が行ったり来たり。鉢合わせては戦いになりますので、近辺のモンスターは地底の塔に避難しておりますよ。


「道理で、山でモンスターを見かけぬわけだ」


 ――この遺跡に陣地を築こうとする者だけ、ワイが追い払っておりました。パスリル軍はあきらめて、以前、エルフの村があった跡地におります。あちらには近づきませぬように。


 ワーズワースはサーシャリオンに注意しながら、ちらりと修太達のほうを見る。


 ――それで、問題というのはですな、クロイツェフ様。


「ああ」


 ―― 一昨日ばかりのことです。巨大なルグーが突然やって来て、ダンジョンに穴を()けたのです。


「んん!?」


 目をむくサーシャリオンに構わず、ワーズワースは報告を続ける。


 ――そこで急に力尽きて眠ったようなのですが、いつまた動きだすかと、モンスター達はおびえておりまする。


「ルグーと言ったか、そなた」


 ――さようです。ワイは空飛ぶ者ゆえ詳しくありませんが、地の妖精(ノーム)の連中もそう言っていたので、間違いないかと。


「おお、やったな、シューター、ケイ。断片があちらからやって来たようだ」


 サーシャリオンはパチンと右指を鳴らし、にまりと笑う。


「え、ええー。そんな偶然があるのかよ」

「というか、サーシャ。おうちに大穴を開けられたのに、そんな反応でいいの?」


 修太は口元を引きつらせ、啓介は心配そうに問う。


「地の妖精がいるゆえ、後であやつらに修復させればよいだけだ。さっそく見に行くとしよう。そなたら、防寒着に着替えよ。我のダンジョンは寒いぞ」

「そうだな。以前も凍えそうだった。ピアス殿は特に念入りに着るといい」

「分かったわ!」


 フランジェスカに注意され、ピアスは急いで厚着をし始める。めいめいの準備が整ったのを見ると、ワーズワースを連れたサーシャリオンを先頭にして、全員でダンジョンへ踏み入れた。


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