表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
断片の使徒  作者: 草野 瀬津璃
セーセレティー精霊国 人を喰う本 編
271/340

 3



「で? なんで連れてきてんだよ、フラン」

「私のせいじゃない!」


 修太の問いに、フランジェスカは怒って返した。ピアスがぺろりと舌を出して謝る。


「だって、有益な情報があるっていうから~。前に言ってたでしょ、人を喰う本の噂。あれよ。資金的な問題でね。パーティのお金は私が管理してるけど、旅の全体はケイでしょう?」


 ピアスの可愛い仕草に顔を赤くした啓介が、うんうんと頷く。


「そうだね。断片の情報なら、俺が出すよ。いくら?」


 入口に立ったジャックは肩をすくめる。


「疑わないので?」

「前に一回ボコボコにされたのに、売ろうっていうなら、それなりに信用できるんだろ?」


 何を当然なことをと言いたげに、啓介はあっさりと返し、部屋のテーブルを示す。ジャックは居心地悪そうにしているものの、椅子に座った。

 ベッドに移動して座った修太に、ピアスが声をかける。


「それとシューター君、ササラさんが武器を買いたいんですって」

「ああ、読めたぞ。そいつが売りつけようとしたのか? フラン、悪いけど、物と値段次第で決めてくれよ。俺は武器のことは分からん」


 修太の頼みに、フランジェスカは頷く。


「分かった。こいつの人間性はともかく、良い商売をするからな」

「お褒めにあずかり光栄。どうです、他にも商品がございまして……ええと、こちら、カタログになります」

「貴様、本当に抜け目がないな」


 さっと羊皮紙を取り出すジャックに、フランジェスカは呆れている。しかしカタログは受け取って、内容に目を通す。


「ふむ。値段は妥当ってところだが、あとは品次第だ」

「しっかりしてらっしゃる。店があるので見ていってください。カタログは差し上げます、店の場所はそちらに」


 ジャックはにっと笑った。


(本当にやり手だな、こいつ……)


 修太も呆れたが、それよりも情報の話だ。修太がちらりと啓介を見ると、啓介が話し始めた。


「それでおいくらです?」

「五千エナです。白銀貨(しろぎんか)五枚」


 ジャックの返事に、グレイが片眉をはね上げる。


「ずいぶんぼったくるな」

「まさか、安い方ですよ。所有者、保管場所も分かっているし、噂も本物。ただ、私には手に入れられなさそうなので、手を引くことに。実は部下も本に喰われてしまいまして。流石にこれ以上、部下を失うのはつらい」


 ジャックは溜息を吐いた。すかさずフランジェスカが茶化す。


「貴様にも人情(にんじょう)があるのか」

「部下の教育に、どれだけつぎこんだと? 一人失うだけでも大打撃です。大損ですよ」

「……感心して、損した」


 けっと毒づくフランジェスカ。部屋に白けた空気が流れる。

 啓介も白い目をしてジャックを見つつ、金を支払った。


「毎度、ありがとうございます」


 ジャックは白い歯を見せて笑い、素早く代金を懐におさめてから話す。


「場所は気まぐれ都市サランジュリエ。保管場所はシュタインベル学園の図書室。所有者は校長のシュタインベル夫人です。つい最近、生徒が一人、本に喰われて行方不明に。それで冒険者ギルドで、救出依頼が出ています。高額な成功報酬につられた冒険者が参加しましたが、みんな本に喰われて消えてしまいました。以上です」

「それであなたの部下もそこに参加したの?」


 ピアスの質問に、ジャックは頷く。


「開かなければ問題ないのかと思いきや、本から襲ってくるそうでしてね。運びようがないんじゃあ、売りようがないので、私はあきらめました」

「意味わかんねえのに、そうなんだって思う自分が嫌だ」


 天を仰ぐ修太に対し、啓介は銀の目を輝かせる。


「面白いなあ。でも被害者が出てるんじゃあ、喜んでばかりもいられないね」

「とりあえず行ってみるしかないな、その気まぐれ都市って所に」

「確かイミルさんとラミル君がそこに行くって言ってたよ。学校に通うって」

「なんかもう、都市から変なんだな」


 どうも想像がつかない。修太が首を横に振ったところで、ジャックがカタログを示す。


「ちなみに、気まぐれ都市は季節が毎日違うこともある都市です。もし防寒着をお求めでしたら、取り扱っておりますよ!」


 ササラが明るい声を出す。


「まあ、品ぞろえが豊富なんですね! すごいわ」

「商売上手なだけだよ。ササラさんって純粋だよなあ。詐欺師には気をつけてくれ。こういう奴は要注意だ」


 修太がびしっとジャックを指差すと、ジャックは心外そうに肩をすくめる。


「こんなに善良なる商人はそうそうおりませんよ」

「ぬけぬけと、よく言う」


 フランジェスカが鼻で笑った。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ゆるーく活動中。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ