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問一、何故彼女は解物を信仰するのか?  作者: らいら
Hint.1 セカイ束縛は不変の一片
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彼女は毒舌で人よりズレている。

「さて。僕はちょっと出掛けるよ。情報収集に行ってる」


 ーーー私はどうしたらいいでしょうか?


「明日から牡丹学園っいう所に通ってもらうから、君は心の準備をしておくんだ」


 ーーーそれってどうゆう


「この件に関しては他言無用。

 僕は君からの依頼の為の下準備、謂わば料理の仕入れこみというべき行動をするんだ。買い出しは通常ならば給餌や助手の役目だけどこればかりは僕のほうが都合がいいんだ。

 一週間ほどかな、その間はお試し入学ってことでつてを頼るよ。君には少しやってもらわなければならないことがあるんだ。」


 ーーー……それは命令ですか?


「まあ、そうなる。そうつまり……リーレ、君には“友達を作る”ことにしばらく専念してもらうのだ!」


 そう自信満々に指名されるものだから。

 命令だから。


 あのとき追求しようと探偵様の目を見ました。探偵様は至って真剣に私を見据えていました。私という存在を肯定も否定もするわけでもなく、ただ期待の眼差しで。

 モノクル越しでもわかる、真っ赤なルビーは燃えるように爛々としていたのです。


ーーー……探偵様は……私に何をさせたいんですか?


ーーーいえ、この問い方は間違っています。

   ……えと、本当は私に、何をして欲しいんですか?


 探偵様が私に何を望んでいるのか不意に気になりました。

 ですが、探偵様は不思議と主様行方不明の事件の真相を知っているように思えてしまいました。私は、過去を見てばかりです。主様のいない未来には、今には興味はありませんから。

 ですが探偵様は未来を見ています。ずっと遠くを見ている、そう感じます。



「なんでもーーーただもう一度君に壊れてほしいだけだよ」



 ですが探偵様は、朗らかに嗤われるだけでした。

 そしてこう続けられます。


「でもこれはあくまで僕の望みであって、君に必須事項とうわけでもないんだ。君には君の、僕には僕の利益と願望がある。だから、君は君の利益のために動くんだ」


 ーーー私の、利益。


「そう。君の利益」


 探偵様は嗤いを崩しません。

 蛇に睨まれたような威圧感と共に、確信を突く言葉を吐かれます。


「君は答えを探さないとだね。

 君は初めて主様の命令以外で、己の意思でここに来たんだ。変わりたいんだろう?無垢の隣に立ちたいんだろう?だったら今のままじゃあ、駄目だよね?」


 だから学園に通え、と。

 主様の思うままに生きてきて、今度は探偵様に従えと?


 とはいえ、環境変われば人も変わります。

 変わればすべて解決するというわけでもありませんが、探偵様の言葉に私は一理あると判断しました。



 ということで、舞台は切り替わり、牡丹学園です。





「留学生として本校に転入しました。リーレ=シャルラタンと申します」


 瑠璃唐草のように可憐だと思った。

 柔らかいふわりとした茅色の髪には編み込み。

 左右の編み込みには空色の小さなリボン、背中まである髪はゆるく低めの位置で結ばれて、爽やかな桜風とともに映えた。


 大きな愛らしい蒼の瞳、目下のホクロとギャップが刺さった。


 この学園の唯一の強みの袴風セーラー服は彼女のために用意されたかのように拍車かかって似合っていた。ボク自身も同じものを着ているのに上品かつ可憐、高貴に思えた。

 袴風スカートは校則通りの膝丈よりは少し長い。そこから除く華奢、よりは少しは肉付きのいい健康的な足はタイツで隠されていてもったいな…………取り乱した、危ない危ない。


 鈴が鳴るような、心地のいい声は想像より凛としていて。

 大人びているようで幼い、不思議な雰囲気だった。


 ただ一つ、彼女の世界が気になった。


 彼女の視線はクラスメイトに向いているようで向いていない。各有ボクもその一人で、視点が合わないのだ。

 ボクは彼女を見ていても、彼女はボクを見ていない。


 彼女は期待も希望も抱かぬ、

 不安を曇らせた一つの光を探求し続ける

 幼く夢を抱く少女のような、真っ直ぐな瞳。


 あわない、というよりはあわせようとしていない。


 確信的に思う。あの蒼眼には彼女にとっての大事な人を写しているのだと。

 ボクは知っているから。わかるのだ。

 彼女が唯一人を見ているように、ボクの知るあの人は自分自身以外の全事象を見据えている。


 何処までも澄んだ永久に続く蒼穹のように。

 限りなく堕ちた地獄の深い深い穴のように。


 だからなのか、いつも。


 何か物足りないと、駄々を捏ねていた。

 足りない知識欲を満たすように本を読み漁り。

 分からない心理学感情論を実験ついでに周囲の人を弄んで。


 天真爛漫、無邪気、天衣無縫。

 そんな言葉が当てはまる、大好きなあの人。


 今ではあの人は既に疎遠となってしまったけど、ボクはずぅーっと見てる。悪く言い換えれば唐突な別れに戸惑いを後悔を、うるさいくらいに引きつり続けている。良く言い換えれば、あの人と過ごすことへの夢を見続けている。


 あの人の隣。


 教えを請い、首を傾げたボクにそっとぬくもりをくれたあの人は。夢を見続けるには絶対的に報われる。そう信じている。


 あの人と過ごす、隣に生き続ける。

 夢を、ずっと見ている。


 だから、だろうか。ボクは彼女に共感した。

 下心はないのだ!ただ彼女が可愛すぎたとかではない。決して、決して!!!!


「私には心に決めた人がいます。その人にしか興味はありません、可能であれば関わらないでほしいというのが不肖な私のささやかな願いですので、どうぞよろしくおねがいします」


 あんなに綺麗な薔薇にも棘があるんだから、可愛い花にも棘はあるはず!

 だからこの一言に収まるのだ。


 そんなところも可愛い!


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