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問一、何故彼女は解物を信仰するのか?  作者: らいら
Hint.2 ひとりじゃない
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Hint.? 脳裏賛否家(脳裏賛美歌)




「どうしてーじゃまするの?ねえさま、にいさま」




 無邪気に甘えた声。

 駄々をこねる子供のように幼い声。 


 それは欲への誘惑。

 あるいは単なる我儘。


 後者であることは明確で、だからなのか。


 それに誰も答えてはくれない。

 ただただ食事の邪魔をしようとしてくる。


 何時もそうだった。

 何時も暴食は抑制し続けられてきた。

 飢えて、飢えて、仕方がなかった。

 我儘でなければ、この欲は満たされないというのに。

 暴食以外もそうであろうはすなのに、

 そんな身振り素振りを見せやしない。


 我慢しているのだろうか?

 抑止しているのだろうか?



 そんなことしてたら永遠の苦痛に苛まれるだけなのに。



 その苦痛が大嫌いだから、我儘になっているのに。

 とうして大嫌いなものから逃げたらだめなのだろう。

 どうして我慢なんてしなければならないのだろう。

 飢えを莫大にするだけだ。


 そんなのはもっと駄目なのに。 



 飢えは増え続けて、もっともっと巨大に巨悪に育つ。

 そうなったら、暴食ゼクスを余計に抑止できないのに。



 それなのに、何故。


 無謀にも無茶にも、

 自身の欲を呈してまで抑止させようとするのか。



 欲はきっと原体オリジナルの成長に繋がるはずなのに。

 慕うべき原体オリジナルを救けなければならないのに。 

 


 抑止、我慢。



 そんな言葉がより一層大嫌いになってくる。




「ぜくすはーかあさまをたすけるの。だからぁ、あきらめて?」




 原体は今困っている。

 命の危機に立たされている。


 救うには暴食以外にだってできる。



 でもそれをしないのだ。

 


 だから突出しようとしているのに、何故止めるのだ。

 今からする行動は我儘でも何でもない。


 原体を救出するためだけなのに。


 別に暴食を抑止する必要なんてない。

 むしろ暴食が最も戦闘に優れているのに。



「ぜくすはさいきょーなんだから、いくらねぇさまやにぃさまがたばになっても、たおせないよー?」



 こんなにも原体を想っているのに、助けに行かせてくれないなんて。


 身を焦がすように、

 身が悶えるほどに、

 こんなにも、懐っているのに。



「いじきたなーい、ずるー!ねぇさまやにぃさまきらいになるよ!ころすよー!」



 瞬間、にぃさまと呼ぶそれは容赦なく足蹴をした。


 暴食は腹に迫る足にしがみつく。


 受けるわけでもなく、

 緩和するわけでもなく、

 避けるわけでもない。


 幼子が宝物のぬいぐるみを抱くように、それよりも強く、強く離さないようにしがみついた。



 死。噛み、ついた。



 食い千切らんとする勢いで、それの脹脛を。


 肉を、骨を噛み砕く。


 それには血液は存在せず、 


 それでも当然の事象に逆らうことはない為、


 ドス黒い液体を流し、飛び散らかした。



「にぃさまのあし、おいしぃーね。つぎはなにをくれるのー?」



 それは無反応。

 ただ摂られた右足を気にするわけではなく、器用にバラスを崩さず片足で立っていた。



 そして、それ以外に三つの影があった。



 背丈も服も、髪も骨格も、違う割には。

 雰囲気や全体の色は類似していて。


 矛盾、していた。


 それら三つは、体のどこかに黒の液体を流して、

 欠けて、獲られて

 歯型がついていて、

 喰われていた。



 犯行人は目前、口周りを黒で汚した。

 愉悦に満ちた無邪鬼な笑顔を見せる暴食の権化。



「なぁに?ずるっこ、さんね、にぃさまねぇさま。いもぅともなかまにいれてー、ずるっこさん。ぜくすもいーれーて?」 


 それとそれらは暴食ぼうしょくの権化を睨む。

 口合わせをし、妙に目配せをし、あからさまに誘っている。 


 ずる、と言うにはそうかもしれない。



 暴食の権化対それとそれらの一方的な暴力であった。

 


 最も圧倒していたのは暴食の権化であったが。

 それとそれらもそれに相対するダメージを入れていた。

 それでも相手は暴食の権化で、死滅には難しかった。



 だからまだまだ長引くだろう。



 でも安心だ。



 此処に時間や死の概念は無い。

 死と言っても、いずれは再生する。

 そういうものなのだ。

 そう云う処なのだ。

 真っ白な空間にドス黒い液体が散らかる。








 まだまだ、続く。







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