25時の星空、もう一つのデネブ
樹々が織りなす
イーゼルのような
枝の隙間から
夏の面影を
絵葉書のように
映しとる陽射しが
届ける光の手紙
風のしずくが
空から煌めき
舞い降りるように
時折吹く風に
葉の翠は金糸雀色に
さゆらいで
光と風のその中に
そっとゆれる
ワレモコウの花は
季節を描く
紅い筆のように
少しずつ夕陽の
オレンジが家々の
白い壁をやわらかに
伝っていくとき
紅い蜻蛉は颯爽と
夕陽に煌めく
夢見鳥を追いかけて
瞳をとじれば
かすかな虫の鈴音と
宵空からの風琴の音色
見上げた空には
黄道に連なる星座と
月の砂浜に寄せる
波のように
やさしく光る星々
25時の星空
ペルセウスが天馬と
駆け上がる空に
白鳥が渡りゆく
宙と大地のあいだには
やぎ座の星々
夜を越えてゆく
その尾には
もう一つのデネブと
幸せを運ぶ星
宙から光を
届けながら明日の
空へと向かって
25時の星空
宙にはアンドロメダが
優しく微笑んで
星の見える夜も
雲が空を覆う夜も
何かに意味を
探してしまうことも
あるけれど
意味はきっと
自分でつけるもの
気付いたとき
きっとそこにあるもの
立ち止まった時には
宙に想いを馳せて
そして今を
大切にできたら
待ち遠しい朝も
いつしか眠りにつき
気付けばそこにある朝も
この惑星は今日も
まわり続けて
また新しい朝へ
運んでくれるから
25時の星空
もう一つのデネブが
宙を越えていく
幸せを運ぶ、
星の光とともに
黄道十二星座の一つ、やぎ座は、秋の初めが見頃で、いて座の隣りの南の空にあります。最も明るい星は「デネブ・アルゲディ」、その隣りの星は「ナシラ」と呼ばれ、諸説ありますが、それぞれアラビア語で「山羊の尾」、「幸せを運ぶもの、幸せの便り」を意味するとされます。
はくちょう座の一等星、デネブも「尾」の意味です。9月中旬の夜は、はくちょう座が西へ進み、ペガスス座のほか、北の空からペルセウス座とアンドロメダ座が上ってきます。
ワレモコウ(吾亦紅)は、穂のような紅い花が先端につき、9月にかけて多く咲いて、「感謝」「憧れ」などの花言葉があります。夢見鳥は、蝶のことです。
季節の星や花をモチーフに、詩を描かせていただきました。お読みいただき、ありがとうございます。