表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

25時の星空、もう一つのデネブ

作者: 逢乃 雫

樹々が織りなす


イーゼルのような


枝の隙間から



夏の面影を


絵葉書のように


映しとる陽射しが


届ける光の手紙



風のしずくが


空から煌めき


舞い降りるように



時折吹く風に


葉の翠は金糸雀(かなりあ)色に


さゆらいで




光と風のその中に


そっとゆれる


ワレモコウの花は



季節を描く


紅い筆のように



少しずつ夕陽の


オレンジが家々の


白い壁をやわらかに


伝っていくとき



紅い蜻蛉は颯爽と


夕陽に煌めく


夢見鳥を追いかけて




瞳をとじれば


かすかな虫の鈴音と


宵空からの風琴の音色



見上げた空には


黄道に連なる星座と



月の砂浜に寄せる


波のように


やさしく光る星々

 



25時の星空


ペルセウスが天馬と


駆け上がる空に



白鳥が渡りゆく


(そら)と大地のあいだには


やぎ座の星々



夜を越えてゆく


その尾には


もう一つのデネブと


幸せを運ぶ星



宙から光を


届けながら明日の


空へと向かって




25時の星空


宙にはアンドロメダが


優しく微笑んで



星の見える夜も


雲が空を覆う夜も



何かに意味を


探してしまうことも


あるけれど



意味はきっと


自分でつけるもの


気付いたとき


きっとそこにあるもの



立ち止まった時には


宙に想いを馳せて



そして今を


大切にできたら




待ち遠しい朝も


いつしか眠りにつき


気付けばそこにある朝も



この惑星(ほし)は今日も


まわり続けて



また新しい朝へ


運んでくれるから




25時の星空


もう一つのデネブが


宙を越えていく



幸せを運ぶ、


星の光とともに



















黄道十二星座の一つ、やぎ座は、秋の初めが見頃で、いて座の隣りの南の空にあります。最も明るい星は「デネブ・アルゲディ」、その隣りの星は「ナシラ」と呼ばれ、諸説ありますが、それぞれアラビア語で「山羊の尾」、「幸せを運ぶもの、幸せの便り」を意味するとされます。


はくちょう座の一等星、デネブも「尾」の意味です。9月中旬の夜は、はくちょう座が西へ進み、ペガスス座のほか、北の空からペルセウス座とアンドロメダ座が上ってきます。


ワレモコウ(吾亦紅)は、穂のような紅い花が先端につき、9月にかけて多く咲いて、「感謝」「憧れ」などの花言葉があります。夢見鳥は、蝶のことです。


季節の星や花をモチーフに、詩を描かせていただきました。お読みいただき、ありがとうございます。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] まず、タイトルの「もう一つのデネブ」で「え?」となりました。 もちろん、夏の大三角でもあるはくちょう座のデネブは知っていました。 ありますね!やぎ座のデネブ・アルゲディ。あと、くじら座やい…
[良い点] もう一つのデネブというタイトルが気になり調べてみました。 はくちょう座のデネブ やぎ座のデネブ アルゲティ くじら座のデネブ カイトス わし座のデネブ とデネブ オカブ 尾の意味から、…
[良い点] イーゼル、絵葉書、紅い筆とスケッチに使うものが出てくることによって、絵にしたいほど美しい情景なのだろうなと感じられます。 2連目の夏の面影を光の手紙と例えているところは、終っている夏であり…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ