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三話 訪問

 リックとイアンは()から逃れるために街へと足を運んだ。一息吐いたイアンだが、リックは心配そうにイアンをじっと見ていた。その理由は街に来る前のイアンの異変から感じていた。異変が起きたのは敵から逃れる為にリックを抱え、イアンが走っている時だ。

 突如、イアンは紅く充血している右眼を抑え、大きな声で叫んだ。リックにはその姿に驚いたが、どこか苦しむ姿に映った。かと思えば、正常に戻り、何もなかった様子を見せた。今は変わった様子はない。それでも、ひょっとした隙に異変があるかもとリックはイアンをずっと見続けている。ふと、イアンはリックの視線に気付いた。

「何か?」

 イアンは問い掛けると、リックの目つきが変わった。何も分からないイアンはリックの視線に恐怖を覚えた。

「どうしたんだい?」

「何か、隠してるでしょ?」

 イアンの問い掛けにリックは問い詰めるように問い返した。リックには分からない何かを隠しているのは明らかだった。だが、イアンは目で微笑むだけで何も応えなかった。イアンの表情にリックは聞いてはならないようで聞くに聞けなかった。どうしたら聞けるのか、それとも聞いてはいけないのか、リックは悩んだ。そんな時、イアンは発した。

「子どもは寝たほうがいい。とっくに寝てる時間だろう?」

 その言葉にリックは子ども扱いをされ、腹を立てた。実際にリックの外見は子ども。歳もまだ十五に達していない。言ってしまえば、まだ十二だ。そんなリックだが、戦闘能力は高かった。だから、現在も任務として出動しているのだが……。

「リック。夜更かしは良くない」

「は? うるさい! 本部に連れて帰るまで絶対秘密を暴いてやるんだから!」

 リックは近くにあったクッションをイアンに向かって思い切り投げつけた。イアンは簡単にクッションを掴んだ。ふと、イアンはリックに目を向けたのだが、リックは既に眠りについていた。電気を消して、部屋を後にしようと扉を開けると、目の前に知らない女が立っていた。

「どちら様ですか?」

 イアンは平然を装い、女に尋ねた。女は答えず、イアンを睨みつけている。イアンは女の反応に違和感を覚え、牙を剥こうとした。

「アンタ、リックと一緒にいただろう? リックは何処だ? まさか、誘拐犯か?」

 不意にイアンの目の前の女は発した。言葉を聞いて、イアンは我に返った。イアンが女を怪しむように、女もまたイアンを怪しんでいるようだ。それにリックを知っている様子だ。

「勘違いしないでくれ。リックは寝ている。ほら、見てくれ」

 イアンは半開きだった部屋の扉を大きく開け、リックが寝ている姿を見せた。女はイアンを如何わしい目で見たが、徐々に表情を和らげた。それから、イアンに背を向けた。

「リックに変なことはするなよ」

 女は言葉を残すと、あっさりと去って行った。イアンは何のために此処に来たのかを尋ねたが、女は答えなかった。警戒しながら、イアンは一夜を過ごした。


 翌朝、イアンとリックは小鳥のさえずりを聞きながら起きると、朝の支度を終え、宿屋を後にした。とはいっても、朝起きて何も食べていない二人。お腹を空かしていた二人は近くの料理店へと足を運ぶことにした。朝早い時間なのに、やっているのが運が良かった。二人は注文をし、料理が来ると直ぐに食べ始めた。

「そういえば、昨夜リックを訪ねてきた女の人が来たんだ。誰か心当たりがあるかい?」

 リックは食事に夢中だっだが、一度手を止めた。リックはそんな人がいたか考えた。然し、その人が誰なのか全く検討もつかなかった。

「誰だろう? 分かんないや」

 リックは考えるのを諦めて、再び食事に戻った。言葉を訊いたイアンは唸るように声を出すと、リックと同様に再び食事に手を付けた。二人が食事をしながら、次は何処に向かおうかと話し始めようとした時、思わぬ人物がスッと入ってきた。

「リック、久しぶり。元気にしてた?」

「いあ!」

 突然の声にリックは物を口にしたまま声を上げた。その言葉に女は笑みを零した。イアンは顔を上げた。

「ミア! 久しぶり! 会いたかった!」

 リックはごくんと食べ物を呑み込むと、とても大きな声を出した。直後、リックは隣のミアに抱きついた。その様子にイアンはあまりに懐いているリックを見て、目を丸くして驚いた。昨日の夜、訪ねてきた女だったのだ。

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