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音物語  作者: 惟菜
1/4

走る

和太鼓同好会顧問の先生の作った曲より。


平原を駆ける馬は何処までも軽やかだ。

だが、時としてその音は争いの音となる。

草原の中心に僕のむらはあった。

 「戦かのぉ……」

 年寄り達が囁くのは戦の“音”が響いているからだろう。

 走る騎馬の音は絶え間なく、重装歩兵の重い音がその後へ続く。耳に残る爆発音が幾度と無く響き、赤子にさえ安らかな眠りを与えない。

 この邑には多くの兵士が尋ねてきた。

 ある時は食料、ある時は薬、ある時は武器を求めて。

 皆戦に必要な物だったが、訪れた兵士達はこの邑では穏やかな気持ちになるようだった。

 敵同士がはち会わせても、テンポよく会話は紡がれ、笑い合う。

 ――――焦っているようにも見えた。翌日になれば、彼等はまた戦へもどる。

 会話の通じぬ世界。

 やられた事をやり返し、戦は続いてゆく。

 「悪いなぁ……守り手さん。戦は迷惑だろう?」

 兵士に謝られる事も少なくない。いつも僕は笑って返した。

 いずれこの邑も戦に巻き込まれる事になるだろう。

 走る馬の音に呑まれ、爆発音と共に散るだろう。

 「走りなさい。此所は危ない。走って遠くへ逃げなさい」

 「兄ちゃんは?逃げないの?」

 「僕は……」

 守り手として、この邑とともに果てまで走り続けよう。

 遠ざかる小さな背。力強い馬の音。

 ――どうか弟よ、遠くまで逃げてくれ。人と争わない世界まで……。

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