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ルルイエ探偵事務所の事件簿 ~邪神の娘だけどヒーロー目指してます!~  作者: 蒼井茜


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いあ!温泉旅館!10

 男2人が死亡フラグ臭漂う会話をして見せていた一方で姦しき者共といえば。


「あ、ナコトさんそのブラ可愛いですね!」


「でしょー、おっぱい小さい分デザイン可愛いのいっぱいあるんだ。まぁ普段はスポブラなんだけどね」


「へぇ、ルルイエさんは……」


「んー?」


 男には聞かせられない会話をしていた三人。

 下着云々という話をしていたところでクリスはふと気づく。

 ルルイエがここに来て異様に周囲から浮いているという事に。

 その原因はすぐに判明する。

 湯楽はもちろん、それが存在する桃源郷という世界そのものが高級リゾート地である。

 当然そこに来るのは富裕層、それもごく限られた者のみである。

 そう言った者達はほぼ例外なく見栄を張りたがる性格であり、着飾ることはもちろん見えないお洒落という物にも気を使っている。


 つまりは、今しがた談義の的になっていた下着である。

 ナコトは桜色の、クリスは水色の下着で上下を統一させていたがルルイエが問題だった。

 ブラジャーは漆黒のような黒色に対して、パンツは3枚で数百円程度ではないかと予測できるほど安い作りの白である。

 その美貌と相反して純白のパンツというのはそれだけで異様な雰囲気であり、そもそも上下の下着があっていないというのはこの場において注目の的になるのもやむなしである。


「……ルルイエさん、だっさいですね」


「つってもねぇ……ブラはこだわるよ? おっぱいというのは正義であり、何より尊い物なんだ。しっかりとした下着でその形を保ち、外敵から守り、そして主張させる! けどパンツはなぁ……別に男の前で脱ぐ予定があるわけじゃないしねぇ」


「いやいや……せめて上下統一してくださいよ……というか大体セットで売ってるじゃないですか……」


「サイズが無い」


 そう言い張るルルイエの胸部は、ブラジャーという装甲に覆われてなお存在感を放っていた。

 たとえクリスとナコト、2人のそれを合わせたところでルルイエの持つそれには勝てないだろう。


「むぅ……いつ見ても不公平だよねぇ……」


「そうは言うけれどナコトさん。他人の胸部にこれがついてれば見る側としちゃすっげぇ楽しいっすけど、自分のがでかくてもなーんも面白くないんすよね……」


「まぁそこでこれ見よがしに、こんなのあっても邪魔なだけなんですー、なんて言ったらぶっ飛ばしてたけど……ルーちゃんだしそういう結論になるのか……」


「ルルイエさんですしね……」


「あ、なんで呆れるんだよ二人とも! まったく……ナコトさんにつられてクリスも最近冷たいなぁ」


「あ、元からですからお気になさらず」


「元からかい!」


「ほらほら、2人とも騒いでないでちゃっちゃと準備する」


 けらけらと困ったように眉を寄せつつも笑みを浮かべたナコトの言葉に二人は未だ下着姿であることを思い出し、身に着けていたそれらを着替え篭の中に放り込むとタオルを手に更衣室を後にするのだった。

 ナコトはと言えば二人に注意した時点で既に準備を終えていたため、遅れることなくむしろ先導する勢いで並んで開いていたシャワーの前に腰を下ろし、備え付けのシャンプーとボディーソープで全身くまなく洗い始めた。


「ふわぁ……このボディソープいいですねぇ……泡が雲のように軽くて、香りもきつすぎない……それに優しく汚れを落としてくれる……これお土産コーナーに打ってないですかね」


「クリスちゃんがそこまでべた褒めするってことは相当いい物なんだろうねぇ……ちょっと高そうだけど」


「お肌の調子を左右しますからこういうのもちゃんと選ばないとだめなんですよ」


「へぇ、私いつもコンビニで売ってる一番安いのだったなぁ」


「それでこのハリツヤ……ナコトさんおそるべし」


「あぁナコトさんはなんか無条件で強いんだよ。髪の毛とか触ってみ? 絹糸みたいだから。しかもそれもコンビニで一番安いシャンプー使ってるらしいよ」


 ルルイエが横から口をはさみ、どうぞと言わんばかりに毛先をクリスに差し出したナコトの神に触れたクリスが絶句する。


「……ナコトさん、その髪でシャツ編んだら売れますよ。莫大な金額で」


「気持ち悪いからヤダ」


 思わず口走ってしまったクリスの言葉にナコトは満面の笑みで返答する。

 しかしながら、クリスが触れた髪の毛は水に濡れてなおしなやかで、艶を保ち、一本一本が簡単にほどけてしまう程に滑らかだった。

 握っていようともするりと手から抜け落ちてしまうのではというそれは、もはやキューティクルなどという言葉では収まらない。

 クモのような姿を持ちながら織物産業を営むアトラク=ナチャという邪神の糸でさえもこれほどのしなやかさは持たないだろうと、クリスは固唾をのんでいた。

 同時に、ルルイエにも改めて視線がいくのはこの流れでは致し方のない事である。

 ナコトもさることながらルルイエの髪も負けず劣らずの艶を持ち、思わず手を伸ばしたクリスの指先に待つふわふわとした触り心地は綿のようである。

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