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いあ!自称ヒーロー参上!4

 そんな少女に近づく男が一人。

 軍の背後で控えていた警察官の一人である。

 あまりにもな光景を見せられて思考が停止している者達の中でいち早く復活した男性は少女の前に立つ。

 それを見た少女は猫のような笑みを浮かべて胸を張り堂々と言い放つ。


「ふふふ、当然のことをしたまでです。悪を倒すのはいつもヒーローのお仕事ですからね。いやいやお礼はいりませんがどうしてもと言うならば……」


 しかし残念ながら謙遜と言う名の自慢を続けようとした少女はその言葉を言い終える事無く細い腕に硬い金属が押し付けられた。

 そしてカシャンという軽快な音に合わせてアクセサリーがはめられた。

 手錠と言う名の。


「午後13時27分、器物破損、業務妨害、傷害罪、避難命令無視、異界来訪者への不当な攻撃、その他諸々の法律、並びに条例違反で現行犯逮捕。それと余罪もあるだろうからこれから取調室ね」


「……え? 」


「君正規のヒーローじゃないだろ、顔隠してないし」


 ヒーローと言う職業の大原則として素性を隠す事が義務付けられている。

 それは本人や本人の近辺を守るためという理由が存在するのだが、半ば形式化してしまっている節もあるルールだ。


 その点少女は顔を隠していなかった、名前こそシャーロック・サファイアなどと言うふざけた偽名を使っていたがそれだけである。


 ゆえに、少女の取れる行動と言えば顔を引きつらせながら敵意は無いと言わんばかりに微笑んで見せて一言簡潔に回答を述べる事だった。


「え、えぇまぁ……」


 少女のその言葉を確認すると同時に手錠をはめた警察官は背後で事の成り行きを見守っていた者達に向けて声を荒げた。

 大した声量ではないにも関わらず、それは随分と響く声である。


「おら、お前らとっとと仕事しろ! 一人は取調べ、残りは病院! 残業させられたくなけりゃ急げ!」


「あの、ちょっと……?」


「誰か神様連れてこい! シュブニグラス様! もしくはその眷属でもいい! 治療の手伝いさせろ! 最後の一発くらった奴らは死んでも生き返らせろ!」


「もしもーし」


「それとこの小娘の身元照会! さっさと連行しろ!」


「聞いてない……弁護士! 弁護士呼ばせて!」


「署でやれ!」


「そんなぁああああああああ!」


 慟哭する少女を他所に兵士と警官の仕事は実にスムーズだった。

 一人の警官の迅速な対応により少女は手錠をはめられたまま流れるように車に詰め込まれ、そして自称大魔王達一行は人数が多すぎるという事で近くにあったトラックを権限を利用して借用、その荷台に敷き詰められていった。


 見る者が見ればドナドナと口ずさんでいただろうか。

 なお首が180度回ってしまった軍人はと言えば。


「いやぁ、首折れたの久しぶりで気絶しちゃいました。はっはっは」


 当然のように笑いながら折れた首を戻していたのだった。

 そう彼は、彼らは人間ではない。


 ここは人外が人間と共存する、通称カオスと呼ばれる世界。

 人間と言う脆弱な種族が、エルフやドワーフ、精霊にドラゴン、果ては神々であろうとも平等に不平等な生活を送っている世界。

 魔法と科学が共存繁栄して尚も進歩を進めようとしているこの世界は、世界の壁さえも旅行感覚で超えられるほどの力を持っているのだ。


 そんな世界で今は哀れにも警察車両によって連行されていく少女、クリスティエラ・クラフトの長く果てない波乱の物語が幕を開ける……。


「おいちょっとこれ、さっき護送した子連れ戻せ! あの巨人まだぐりぐりしてやがる! そろそろあの大魔王とかいうの死ぬぞ!」


「こちら護送班! さっきのあの子逃げようとしてる! 応援回してくれ!」


「なんだあのトラブルメーカー! 手の空いてる奴は全員取り押さえてここに引っ張ってこい! 大至急!」



 ……誰が何と言おうと幕を開けるのである!


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