表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ルルイエ探偵事務所の事件簿 ~邪神の娘だけどヒーロー目指してます!~  作者: 蒼井茜


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

30/77

いあ!事故物件!8

「なんですこれ! なんでトラックが!? というか臭い! そしてスプラッタ!」


 矢継ぎ早にまくしたてるのは、遅れてその場に駆け付けた依頼人ことラビィだった。

 今までの出来事が出来事だけに、すっかりその存在を忘れていた一行だったがようやくこれが持ち込まれた依頼であると思い出し、そしてやりすぎちゃったかなぁと頭を掻くナコト。


「えーと……何から説明すればいいやらで……あ! そうだ、屋敷の中から屍食鬼とゾンビが出てきたんですよ!」


 とっさに、そして華麗に自分がピッキングでドアを開けて侵入しようとした事を無かったことにするクリス。

 いっそすがすがしい手腕にナコトも苦笑いを隠せない。


「それで身の危険を感じたから応戦、といってもあれを素手で触りたくないからトラックを投げつけてみたよ」


「投げつけて……えぇ……?」


 カオスに住む者、一部の種族ならその程度の事はできるかもしれない。

 魔法や魔術を使えば人間でも可能だろう。

 だが、それに要する労力はどれほどか。

 少なくとも人間ならば昏倒、獣人や魔族、エルフと言った種族でも疲労の色は隠せない。

 だというのに、トラックを投げたというナコトは冷や汗一つかくことなくへらへらと笑っている。

 その様子にラビィは困惑していた。


「と、ともかく……これ屋敷の調査は……」


「あー……どうします? ルルイエさん」


「もう、おうちにかえりたい……」


 三度の嘔吐に加えて心身ともに疲弊したルルイエは涙目で答える。

 しかしそうは問屋が卸さないと、ラビィが必死の様子でルルイエにしがみついていた。


「待ってくださいよぉ! こんなの上に報告したら僕、首になっちゃいます!」


「だってさぁ……」


「だってもなにもないですよぅ! ここで依頼打ち切るなんて言ったら裁判も辞さないですよぉ!」


「えー……じゃあまあ、行くしかないか……」


 そう言ってルルイエは気を取り直すべく煙草に火をつける。

 その煙を嫌がるようにラビィが数歩下がった。


「煙草、くしゃいです……」


「そんなん、この悪臭に比べたら無いも同然でしょ」


「それはそうですが、汗と香水を混ぜたような悪臭と同じで匂いは相殺しないんですよぅ」


 鼻を抑えるラビィの声はくぐもっている。

 それを意に介さず、ルルイエはげんなりとした様子で屍食鬼に近づく。

 同時にナコトはトラックを車道に戻し、クリスは玄関でこっそりとドアのロックをいじっていた。

 証拠隠滅はできたとルルイエにサインを送ったクリス。

 それを端目に屍食鬼の頭におずおずと触れたルルイエは、汚いものを……実際屍食鬼はあらゆる種族の中でも最も不潔とされているが、汚物を触ったかのように手を振りポケットから取り出したウェットティッシュで手を拭うとクリスの元へ近づいていった。


「やっぱりこの魔力の発生源はあれじゃない。けど魔力の痕跡はあった」


「どういうことです?」


「何かの魔力に当てられて、あれは人間から屍食鬼に変化したとみるべきだ」


「つまり……中に犯人がいてあれはその被害者?」


「あるいは共犯者だろうねぇ。どちらにせよ面倒くさいけどさ……ナコトさんじゃないけどこの建物ぶっ壊しちゃおうか……」


 物騒な事をつぶやくルルイエ。


「だ、駄目ですよぅ」


 しかしそこはさすがの獣人。

 小声であったにもかかわらずしっかりとルルイエの言葉を聞き取りくぎを刺した。

 小さく舌打ちをしたルルイエは煙草を投げ捨てて、そして玄関に向き直る。

 換気されたことで多少はマシになった匂いだが、今なお吐き気を催す腐臭を漂わせる屋敷の中に入るのは気が引けるようだ。


「あー、ナコトさん。一応聞きますけど……どうします?」


「黒幕わかったし、大体オチ見えてるからもういいや。外で待ってる」


 臭いしね、と言ってナコトはここまで乗ってきた車の助手席に戻り居眠りを始めるのだった。

 あまりにもマイペース、しかしそれこそがナコトの本分。

 何処であろうと何時であろうと、ナコトは自分のペースで生きている。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ