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いあ!自称ヒーロー参上!

 春爛漫の一歩手前、3月下旬の事。

 暖かな日差しに人々がコートをしまい始めたその日、ハワード地区北部転移門前では凄惨な戦いが繰り広げられていた。


 片や銃器と魔法、そして生まれ持った能力を駆使して立ち回る同一の衣類で身を包んだ土着の兵士。

 片や装備は剣や弓、時折魔法を使う個体や生まれ持った能力を使う異形の者達。

 その戦いは一方的だった。

 この国、この世界の兵士たちは危なげなく異形の者達を次々と屠っていく。


「のけ、雑魚共」


 それが現れるまでは。

 黒い甲冑と、それの率いる4人の亜人。

 それら5人は屠られていく雑兵と比べるべくもない存在感を醸し出し、自らの配下であろう異形たちをなぎ倒しながら現れた。


「増援……ではないな、敵の指揮官か?」


「ふむ、なるほど。摩天楼のように美しく、それでいて効率的な建造物。雑兵では盾にもならぬほどの強力な武器を持った兵士、よく訓練されておる。加えてこの空気、濃い神の気配を感じる……我はついにたどり着いたようであるな、天上界へと!」


 フルフェイスヘルムで顔が見えず、体格もゴツイ鎧で測ることができないが声から察するに男だろうか。

 2m前後はあろうかという巨躯、背負った剣は禍々しい輝きを放っている。

 そう最前線で銃を構えた兵士が考えた瞬間であった。


「だが出迎えは無粋である」


 兵士の視界が180度回転した。

 ゴキリという嫌な音を聞くと同時に、それが自分の首の音であると理解したのだった。

 天が地に、地が天にと上下の入れ替わった世界を見る兵士はそのままゆっくりと倒れる。


「危険度、上方修正……Aランクと推定……至急ヒーロー、の、要請を……」


 薄れゆく意識の中でも職務を果たすためか、無線に向かって最後の言葉を残し彼は沈黙したのだった。


「ふははは、しょせん神の先兵と言えども我にかかればこの程度であるか。覚えておくがよい先兵共、我は大魔王マドリぶふぅ!」


 高らかに、そして勇ましくポーズを決めた男だったが、直後に飛来した人物の膝によって言葉を遮られた。

 物理法則にしたがい数mほど吹き飛び、背後に控えていた異形の雑兵をスコーンとなぎ倒す様に思わず「ストライークッ!」とノリのいい兵士に言わしめたほどである。

 まさに、見事なまでの人間ボウリングだった。


「ヒーロー見参! 私はシャーロック・サファイア! 今日は魔法少女としての参上よ!」


 高度数十m、つまり手近なビルの屋上から飛来した少女の容姿は未だ幼さを残しており、水色の長い髪が特徴的だった。

 服装は髪の色に合わせてか、水色が良く映える白いワンピースを着て濃い色のジーンズと合わせるという奇抜な格好。


 更に靴は編み上げのブーツと一見アンバランスにも見える姿だが、なぜかこの少女が着れば一流のデザイナーがそうあれかしと作り上げたような気品を醸し出す。


「さぁ悪い子だーれだ!」


 突如として現れた少女が、ファイティングポーズのつもりかボクサーのように腕を掲げて百鬼夜行のような軍勢の前に立ちはだかる。

 セリフとしてはヒーロー、区分上では確かに魔法少女の類にも聞こえなくはない。

 だが先程のニードロップが原因でそんな空気はとっくに霧散しているのだ。


 だというのに突如として戦火の真っただ中に現れた少女を見て、この世界の兵士達は慣れたように距離を取る。

 対して謎の一団は、己等の主であろう人物への不敬に怒り心頭と言った様子で武器を振り上げて少女を囲むように突撃したのだ。

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