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第13話 一瞬で決めろ

一瞬で決まることがあるので油断せずに行きましょう。

 私はダードの前に立ち、戦闘態勢をとる。しかし相手は構えをとることをしない。私を侮っている証拠だ。


「頼むからすぐにやられてくれるなよ。お前をいたぶれば奴が出てくるかもしれないからな」


 偶然を装って、私を指名したみたいだけど、やっぱり他に目的があったのね。

 けど残念ながら今日は仮面の騎士様が来ることはないわ。

 なぜならあなたは私に負けるのだから。


 とは言うものの、実力はあちらの方が上。

 私が狙うのは、一度勝った相手と油断している隙に、一撃で仕留めること。


 ダードに屈辱を味わらせられてからの1ヶ月。

 おじ様にも修行を付き合って頂き、ひたすら同じ事を繰り返した。

 素早く移動し、右拳を顔面に叩きつけることを。

 勝負は一瞬で決まる。

 私の全てを込めた一撃がかわされればダードが言ったとおり、後は痛めつけられるだけ。


 スーハー⋯⋯スーハー⋯⋯


 呼吸を整え、模擬戦開始の合図を、今か今かと待ちわびる。

 敵は上級職の魔法剣士。本当にこれで勝てるの? もし負けたら今度こそ頭を踏みつけられるかもしれない。

 ネガティブな考えが頭に浮かんでくる。


 ううん。今はそんな結果を思い浮かべちゃダメよ。

 勝つ! 私は勝つのよ!

 そしてダードを地面に這いつくばらせてやるんだから。


「はじめ!」


 審判役の生徒が模擬戦開始の合図をする。


「なるべく派手な技で決めるか」


 この時のダードは、生徒、一度勝った相手、負ける要素はないと完全に油断していた。


 私は足に気を込めて技を発動する。


【風神】


 まずはダードより速いスピードを得るため、素早さをワンランク上げる。発動時間は短いけれど今の私は風を切るように動くことができるため、ダード目掛けて一直線に向かう。


「へっ?」


 ダードはあまりのスピードに、思わず声をあげてしまう。


 ここまではうまくいった。後は顔面に向かっておもいっきり殴るだけだ。


「ハアア!」

「ちょ、ちょっと待て」


 ダードはストップをかけるが、ラナの突きが止まることはない。

 そしてイメージ通り、ダードの(つら)に拳を叩き込む。


「ぶべら!」


 殴られた拍子に声が上がり、そのまま校舎の壁まで吹き飛ばされる。

 そしてダードは白眼を向き、ピクリとも動かなくなった。


「終わったけど?」


 ラナは審判役の生徒に終了の合図を促すが、信じられない出来事に呆然としている。

 そしてそれは他の生徒も同様で、校庭は静けさに包まれた。


「ラナちゃんすご~い」


 その静寂を打ち破ったのはラナの友達であるリアナだった。


「今の先生に迫ったスピードなんて、ビューって感じで、目にもとまらないってこういうことを言うんだね」


 無邪気に喜ぶリアナを横目に、貴族達は何を言っていいのか戸惑っている。


 パチパチパチ


 しかしそれも1人の男の拍手によって流れが変わる。


「素晴らしい動きじゃないか。これは称賛されるべきだろう」


 勇者であるサイラスの言葉で、他のクラスメートからも拍手が巻き起こる。


「亜人でなければ私のパーティーに入れてあげてもよかったんだが」

「残念だけど私の方からお断りさせてもらうわ」


 エルフを差別する奴とパーティーなんてぜっっったい嫌!


「それにしても情けないね。ルーンフォレスト10傑と呼ばれた男が、油断していたとはいえ生徒に負けるなんて。笑っちゃうね」


 サイラスが嘲笑すると、クラスメートの貴族達も笑う。


「亜人に負けるなんて人を教える資格がありませんね」

「ていうか貴族として失格じゃねか」

「そういえばダード先生は仮面の騎士にも敗北しましたね」


 嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!

 先ほどまで味方のように振る舞っていたのに、それより大きな権力が現れるとすぐに裏切る。

 ダードは許せないけど、このクラスの貴族達もむかつく。

 私は一言文句を言ってやろうとするが、その前にリアナが声を上げる。


「確かに先生は油断していたかもしれないけど、ラナちゃんが凄かったんだよ。先生を乏しめるのは違うと思うな」


 貴族達はその言葉が気に食わなかったのか、リアナに反論する。


「うるせえな平民が! 貴族には貴族のやり方があるんだよ! 黙ってろ!」


 どれだけ偉いのこの人間達は! 負けたら用済みって種族間の絆というものはないの。

 もう我慢できない! こいつらの性根を叩き直してあげようかしら。

 私が怒りに震え、行動に移そうとした時、正面にいたサイラスが言葉を発した。


「まあこの亜人の動きが見えたのは私とリアナくんだけだろうね。君達も何か言いたいことがあるなら、亜人と戦ってみたらどうだ?」


 貴族達はサイラスの話を聞き、怖じ気づいてしまう。


「サイラス様の命令だぞ、おまえ行けよ」

「ばか言うな。自慢じゃないが俺は全く見えなかったぞ」

「本当自慢じゃないな」


 誰もが戦えば敗北し、醜態を晒すことがわかっているから前に出るものは1人もいない。


「誰も戦う者はいないようだね。だったらダードも気絶してしまったし、私は失礼するよ」


 そう言ってサイラスはこの場を後にする。


「ちょっと待って!」


 ラナの問いかけにサイラスは足を止める。


「もし良かったら、貴方がお相手をしてくれないかしら?」

「この私と戦いたいと?」

「ええ、そうよ。勇者サイラス」


 これは人族が気に食わないとかではなく、純粋に勇者と私の力量の差がどれくらいあるかを知りたくて、模擬戦を申し込んだ。

 しかしサイラスはそのまま校舎へと歩き始めてしまう。


「私は絶対に勝てる戦いはやらない主義なんだ⋯⋯相手が弱すぎると壊してしまうからね」


 その言葉を聞いたとき、私は背筋が凍る思いをした。

 本気だわ。

 あの勇者は本気で私を簡単に倒せると思っている。

 最後に見せたあの殺気のような物⋯⋯面白いじゃない。それでこそ我慢してここに来たかいがあるわ。


 こうして勇者サイラスの不気味な気配を感じながら、始めての実技実習は終了となった。

ここまで読んで頂きありがとうございます。

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お読みいただき有難うございます!
狙って勇者パーティーから追放される~異世界転生前の記憶が戻ったのにこのままいいように使われてたまるか! スキル創造を使って俺はこの世界を謳歌する~
新作連載中です!
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