第12話 再戦
二回負けるなんてプライドが高い人は許せないでしょう。
朝のホームルームの時間。
「おはようございます♪」
声のトーンがいつもより高いネネ先生が教室にやってきた。
何だろう?
「今日はみなさんに、プレゼントがあります」
プレゼント?
「まさかこの間先生の職業を当てたご褒美に俺とデートを!」
「違います! これです!」
先生の手にはカードのような物がある。
あ、あれは!
「そうです。察しの良い人は気づいていると思いますけど、これは冒険者カードです」
本で見たが冒険者カードに血を一滴垂らすと、本人と冒険者カードがリンクするらしい。魔物の討伐もカードを見れば、いつどの魔物を狩ったのかわかると書いてあった。また、偽造もできないので身分証明書としても使われるみたいだ。
「みなさんも既に御存知だと思いますが、血を一滴垂らすと自分の冒険者カードとなります」
先生の言葉に従い、皆血を冒険者カードに垂らしていく。
「他人が冒険者カードのデータを閲覧するには、冒険者ギルドにある専用の魔道具が必要になりますが、自分で見る分には心の中でオープンと唱えれば確認することができます。目の前に記録が出てきますけど他の人は見ることができないので安心してください」
なるほど。じゃあ今まで自分が狩った魔物を確認してみるか。
俺は心の中でオープンと唱える。
目の前には自分が倒した記憶のある魔物がずらりと並ぶ。
ホワイトラビット
スライム
トロル
トロルキング
サーベルウルフ
ブラッドホース
リザードマン
サジ
ザク
キルガ
なるほど。殺した人間も冒険者カードに赤い文字で記載され、盗賊とかを討伐した際にはこれでわかるのか。逆に一般人を殺害した場合もこれでバレそうだな。
「「げっ!」」
「えっ?」
Fクラスの教室に3人の驚いた声が響く。
俺以外に声を上げたのはグレイとルーナだ。
「3人ともどうしました? 冒険者カードに何か不具合でもありましたか?」
「いえ、大丈夫です」
おそらく2人が声を上げた理由は俺と同じだろう。
討伐欄の所に⋯⋯。
獣魔将軍ザイド
魔導軍団副団長エリザベート
魔軍司令ヘルド
だがザイドとヘルドの名前は他と違って、白で表示されているからこれはまだ生きているということか? 俺が疑問に思っているとグレイがネネ先生に質問をする。
「例えば魔物を瀕死の状態にした時は、討伐欄に名前が乗るのでしょうか」
「そうですね。魔物を弱らせて捕獲した場合や瀕死に追い込んだ時も白い文字で表示されます」
やはりそうか。そうなるとこの冒険者カードの中は、他の人に見せることができないな。もし元魔王や獣魔将軍を倒したことがバレてしまったら大騒ぎになってしまう。
「グレイくんは討伐欄に、気になる魔物でもいましたか?」
「い、いえ。いません」
珍しくグレイが焦って、先生の問いを否定する。
「冒険者ギルドにある依頼内容は様々なものがあり、大まかに採集、討伐、護衛の三つになります。他には掃除の依頼であったり、探し物の依頼だったり特に制限はありません。ただし依頼を受けるには一定以上の冒険者ランクが必要になります。冒険者ランクは下からF、E、D、C、B、A、S、SSとなっていてSランク以上はルーンフォレスト王国でも数人しかいません」
そういえば勇者パーティーはSSランクだったな。
「冒険者ランクを上げるためには、依頼を受けて達成することが必要です。Aランクまではギルドの裁量でランクを上げることができますが、Sランクからは国の許可が必要になります。ちなみにギルド長の許可があれば、規定の依頼数を越えなくてもFランクから一気にAランクにすることも可能です。ただあまり使用されることはなく、近年ですと勇者パーティーに適用されたと聞いています」
さすが勇者パーティーだ。
「注意事項として、依頼を受けるには自分のランクの一つ上までしか受けれません。また依頼には期限があって達成できないと違約金を払うことになりますので注意してください。以上になりますがみなさんから何か質問はありますか」
クラスからは特に質問はないようだ。
「最後に私から⋯⋯おめでとうございます。みなさんは今この瞬間からFランクの冒険者になりました」
ネネ先生からお祝いの言葉を頂き、朝のホームルームは終わりとなった。
ラナside
「この後は⋯⋯実技の授業だね! ラナちゃん行こう」
「ええ」
今私に話しかけてきたのは勇者の紋章を持つリアナさん。
この娘は、私がつれない態度を取り続けていたのに、何回も話しかけてくるものだから、根負けをしてしまい、お友達になることにした。
人族は偉そうで、人を見下し、欲しい物があったら力ずくで奪う野蛮な種族だと思っていた。現に私の村は人族に⋯⋯。
けれどリアナさんは違うみたい。
おじ様と旅をしている時に感じましたけど、人族には貴族というものがいて、私が思っていた人間はこの貴族であることがわかった。
このAクラスにはその貴族が多くいて、「私のメイドとして雇ってやろう」とか「側室ならしてやろう」とか「いくら払えば私の物になる」とかろくでもないことを言う奴が多い。
そして断ると逆上して、「この私に逆らうのか!」と言ってくる始末だ。
だから私は貴族に楯突く奴ということで、今このクラスで浮いている存在となっている。
そんな私に話しかけてくるなんて、リアナさんは、本当変な子。
私達は校庭に出て、担当の先生を待つ。
今日は初めての実技講義になる。担当の先生は誰になるのかしら。どうせなら学ぶ価値がある人だといいけど。
キーンコーンカーンコーン
授業開始の鐘がなっても先生は来ない。
そしてそこから2分ほど経った後にようやく先生が、いえ先生なんていうことがおぞましい男が来た。
「ではこれから授業を始める。もう知っていると思うが俺はダードだ」
遅れてきたことを悪びれもしないこの男のは、以前冒険者学校の実技試験で私を殺そうとした奴だ!
「平民ども! この俺が指導してやるんだ! ありがたく思え!」
ああ、嫌だ嫌だ。何でこんなにも偉そうなことを言えるの! 信じられない!
貴族達は侯爵家のダードが担当で喜んでいるけど、それ以外の人は皆、露骨に嫌な顔をしている。
こんな人に教わることなんか何一つない。たぶん私も、みんなと同じような顔をしていると思う。
「今日はそうだなあ。俺様の実力を見せてやろう」
もう本当無理。実力があるからってそれを見せびらかすなんて。それに比べて仮面の騎士様は、正体を明かさずそのまま立ち去っている⋯⋯❤️
「ラナちゃん変な踊りをしてどうしたの」
「えっ?」
どうも私は、仮面の騎士様のことを考えて身悶えていたみたい。
今は一応授業中よ。しっかりしなさいラナ。
「そこのお前!」
ダードは私に向けて指を差してきた。
「俺と模擬戦をやる権利をやろう」
えっらそうに! でも私としてはこの間の借りを返す絶好の機会だわ。
その申し出、受けて上げましょう。
「わかりました。全力でやらせて頂きます」
ここまで読んで頂きありがとうございます。




