第14話 ボルデラ
次話で3章も終わりとなります。
「ふぉっふぉっふぉ。エリザベートを倒すとは中々やるのう」
「ボルデラ様!」
こいつがボルデラ? 黒い腕輪のような汚い魔道具を作るだけあって、狡猾そうな雰囲気を持っている。
まずは鑑定魔法を使ってこいつの能力を確認する。
「【鑑定魔法】」
しかし、ルドルフさんの時と同じように何も視ることが出来ない。
そうなると魔道具を使って隠しているのか、それとも単純に俺より魔力が高いかのどちらかだ。
俺はボルデラに対して、警戒レベルを最大値まで引き上げる。
「ボルデラ様申し訳ありません。次こそは必ず仕留めますから助けて下さい」
「次ですか? そんなものがあればよいがのう」
やはりエリザベートは、運命の羅針盤を使うとどうなるか気づいてないようだ。
そのことを教えるかのように、左手で持っている魔道具から無機質な声が鳴り響く。
「それでは代償として30秒後に使用者の魂を頂きます」
「はっ?」
俺が鑑定で視た通りの言葉が放たれた。
エリザベートの体から黒い物が出て、羅針盤に吸い込まれようとしている。おそらくあれがエリザベートの魂だ。
「ボ、ボルデラ様どういうことでしょうか」
「羅針盤を使えば使用者は死ぬ。ただそれだけじゃ」
無情な言葉がボルデラから発せられる。
「そ、そんな⋯⋯最初から私は貴方の捨てごまだったのですか」
「おかげでカーズブレスレットの良いデータが取れた。褒めてやろう」
エリザベートはボルデラに取って自分は特別だと思っていたが、他と変わらないただの石ころだと気づかせられる。
「私はあなたの右腕ではなかったのですか!」
「お主は何を言っておるのじゃ。右腕? わしの右腕はここにある」
ボルデラは左手で自分の右腕を指す。
「貴様!」
憎しみの気持ちを込めて言い放つが、時既に遅し、エリザベートの黒い魂が羅針盤に吸い込まれていく。
「こんな⋯⋯奴に⋯⋯仕えていた⋯⋯なんて」
そう言葉を発するとエリザベートの体は、塵になって消えていった。
「見苦しいやつじゃ。わしのために死ねることを光栄に思え」
元部下が消えても、まるで虫けらを見るような視線でエリザベートのいた場所を見る。
「さて、目的は果たしたので、わしも戻るとするかのう」
「逃がすと思うか?」
何とか無事だったもの、マーサちゃんを操ったり、ルーナを殺そうとしたボルデラをこのまま行かせるつもりはない。
だが今の俺はMPがほとんどないし、リアナやエリスさん達も満身創痍のため、正直な話まともに戦える状態じゃない。何より呪いをかけられたルーナが心配だから、あまり時間をかけたくない。
「せっかくカーズブレスレットから逃れ、拾った命。無駄にしてもよいのか」
鑑定で見れないからハッキリとしたことはわからないが、少なくともボルデラはザイド級の実力者と見ていいだろう。
そんな奴と戦って、ただで済むはずがないか。
俺は構えていた剣を納める。
「さっさと行け」
俺は断腸の思いでボルデラを見逃すことを決断する。
「エリスさん、リアナいいですか?」
2人にも意見を聞くと、苦々しい表情で答えが返ってくる。
「仕方ありません。私の手で殺してやりたい気持ちはありますが、今は東門を護る方が先決です」
「騎士さんや衛兵さん、ルーナちゃんの治療をするためには仕方ないよ」
エリスさんとリアナも同じ結論だったので、やりきれない思いを持ちつつ、ボルデラがこのまま去ることを認める。
「賢明な判断ですな。しかしあなた方の許しを得ないでも去ることは簡単に出来ますが」
そう言ってボルデラは魔法を唱える。
これは転移の魔法だ。
この魔力。やはり今の俺と同等以上の力は持っていたのは間違いないな。
「では、さらばじゃ」
「おそらく隠れて見ていたと思うが、今回のカーズブレスレットを解呪したのは俺だ。勇者を殺すなら先に俺を倒してからにしろ」
「ほほう、お主名は?」
「ヒイロだ」
「ふぉっふぉ。ヘルド司令官とザイドが言っていたのはお主か。覚えておこう」
「【転移魔法】」
ボルデラの体は光と共に消え、ようやくピリピリとした空気がこの場から無くなった。
「ヒイロちゃんルーナちゃんを!」
俺はエリスさんが抱きかかえているルーナに向かって鑑定魔法をかける。
するとステータスの欄に運命の羅針盤による睡魔の呪い、そして29日23時45分12秒、11秒、10秒と減っていく秒数が視えた。
「大丈夫。魔道具の呪いで寝ているだけだ。期間もあの時聞こえた通り1ヶ月で間違いない」
「良くないけど良かったよ。1ヶ月待てば目が覚めるということだよね」
「ああ」
俺は念のため自分にも【鑑定魔法】をかけてみるが、特に異常はないようだ。無理やり魔道具の効果をねじ曲げたから何らかの呪いがかかっているんじゃないかと心配だったけど杞憂に終わった。
「それにしてもヒイロちゃん、あんなことを言っても良かったの?」
「何がだ?」
「勇者を殺すなら先に俺を倒してからにしろって」
「別に良いんじゃないか?」
「良くないよ! 私のせいでヒイロちゃんが狙われるなんて我慢できないよ」
「けど結局は意味はないか」
「意味ないってどういうこと?」
「リアナが狙われれば必然的にパーティーを組んでいる俺も襲われるだろ」
「ヒイロちゃん⋯⋯」
私とパーティーを組んで、冒険者になることを覚えていてくれたんだ。
「ありがとう。ヒイロちゃん」
そのことが嬉しくて私はヒイロちゃんの胸に飛び込んでいった。
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