第9話 待ち焦がれた再会
ギリギリの所で助ける。そんなこと一度はしてみたいですね。
「ダ、ダリア⋯⋯あな⋯⋯た⋯⋯」
ダリアさんの持っている大剣からは血が滴り落ちていて、その血は誰のものかは明白だった。
「エ、エリスさん!」
私は急ぎ駆けつけ、エリスさんに向かって回復魔法を唱える。
【水回復魔法】
斬られた傷は塞がったけど完全に治すまでは到らない。
私の回復魔法ではエリスさんの血を止めることで精一杯みたいだ。
「ありがと⋯⋯ござい⋯⋯ますリアナ様」
エリスさんは気力を振り絞って剣を握る。
「大丈夫なんですか!」
「回復魔法をかけて頂いたので、なんとか戦うことは出来そうです」
そうは言っても傷のせいか手先が震えて、いつもの凛とした構えを取ることが出来ていない。
「リ、リアナ様。これは私が僧侶系のスキルを持っているからだと思いますが、ダリアの手首に着いている黒い腕輪、あれから邪悪な気配を感じます」
「邪悪な気配ですか?」
確かに微弱ですが何か良くない物を感じる気がする。
「おそらくですがあの腕輪は、奴隷の首輪のような役割を持っていると思われます」
ダリアさんの手首には、ここに逃げてきた人達が着けていた黒い腕輪が着いている。あの腕輪をなんとかすれば元に戻るのかな。
「私があの腕輪を壊します」
「いえ⋯⋯ダリアは私が何とかしますのでリアナ様は下にいる衛兵や騎士達をお願いします。おそらくダリアと同じ処置がされていますので」
エリスさんが1人でダリアさんと? お腹を刺された傷は治っていないよ。このまま置いて行っていいの?
迷っているとエリスさんが私を見据えて言葉を発する。
「大丈夫です。私はルーンフォレスト王国第1騎士団副団長ですよ。いくらかすり傷を負ったからといって平の隊員に負けるわけにはいきません」
見た目傷は塞がっているけど、あの傷はそんな軽いものじゃないよ。
「リアナ様、今東門は開けられてしまっているのです。このままですと王都に魔物がなだれ込んでしまいます。どうか大局を見間違わないで下さい」
エリスさんの言っていることは正しいのかもしれない。
でも⋯⋯。
「私はリアナ様の護衛になるまでは死にません。ですから早く東門を――」
こんな状況でも笑顔で語りかけてくる。自分のやるべきことを理解しているんだ。
なら私も私ができることをしなくちゃ。
「わかりました。早くダリアさんと一緒に来てくださいね。御二人は私の護衛ですから」
そう言って、私は城壁の下まで飛び降りる。
「護衛ですから⋯⋯か。最後にそんなことを言ってくれるなんてやる気が出ますね」
この戦いは民の為、ダリアの為、リアナ様の為、そして私の薔薇色の護衛生活の為に負ける訳にはいきません。
剛剣のダリア、どんな状態であろうとまだまだあなたには敗北するつもりはありません。
私は震える手に力を入れて、ダリアと対峙した。
城壁の下に降りると、誰もいないかと錯覚するほど静かだった。
しかし私の目には、30人ほどの衛兵さんや騎士さん、外から逃げてきた民間人の8人。そして扇情的な姿をした2本の角を生やした女性がいる。
この女性以外の人達は皆目が虚ろで、まるで感情のない人形を彷彿させる。
私とエリスさんが上で待っていた時に何が起きたの? 疑問に思っていると唯一感情があるそぶりを見せる角の生えた女性が語りかけてきた。
「あなたが勇者?」
その声は20代くらいの女性の声に聞こえたが、とても冷たい感じがする。
「そうです。貴女は誰ですか」
私の問いに女性は不敵に笑う。
みんなが着けている腕輪から嫌な気配がするけど、この女性からはその何倍、いえその何百倍の悪意を感じる。
「私? 私は魔導軍団副団長のエリザベートよ。一応今回の王都殲滅の指揮官をしているわ」
指揮官! この魔族が!
それならエリザベートを倒せば魔物達は逃げるかもしれない。
私は魔力を集中させ魔法を放とうとする。
「ふふ、させないわよ。あなた達、私を護りなさい」
エリザベートの命令でこの場にいる人達が全員、私の前に立ちはだかる。
「ダメ! これじゃみんなに当たっちゃうから魔法を撃つことができない」
集めた魔力を解放し、魔法をキャンセルする。
「さすが勇者様。お優しいことですね。私ならこんな足手まといもろとも攻撃します」
「みんな頑張って城壁を護ってくれた人達よ。足手まといなんかじゃないわ」
「それならその頑張ってくれた人達に殺されるといいわ。目の前の奴を殺しなさい」
エリザベートの命令でみんなが一斉にこっちに向かってきたため、剣を取り迎撃する。
まずは迫ってくる騎士さん達の左手に向かって剣を一閃する。
狙いは左腕についている黒い腕輪だ。
「やっ!」
私の剣が腕輪を斬り裂くと、騎士さん達はそのまま地面に横たわってしまう。
倒れた騎士さんの気配を確認すると、先程まであった嫌な感じがなくなっていた。
やったあ! 後はこれを繰り返して行けば。
「まだ荒削りですが中々いい剣筋ですね」
まだたくさん操っている人達がいるためか、エリザベートは余裕の表情をを見せる。
そんな顔をしていられるのも今のうちよ。
私は前方にいる騎士さんや衛兵さんに向かって行き、次々と腕輪を斬り捨てる。
騎士さん達は感情がないせいか、避けるということをしないため、簡単に事が進んでいく。
「やあっ!」
これで20名ほどの解放することができた。
「どう? これで後、半分くらいよ。降参するなら今のうちだからね」
「降参? なぜ私が人間ごときに降参しなくてはならないのですか。これから貴女が地にひれ伏す姿が見れるというのに」
「地にひれ伏すのは貴女よ!」
エリザベートに向かって行くが、民間のメイドっぽい服を着た女の子が立ち塞がる。
「無駄よ」
私は女の子の左腕にある腕輪に向かって剣を振り下ろす。
「やめて!」
「えっ!」
突然女の子は感情を取り戻し悲鳴を上げたため、私は振り下ろした剣を止め、一瞬の隙を作ってしまう。
「弱者を見捨てられない。これだから人間は弱いのよ」
「【闇拘束魔法】」
エリザベートの手から5つの黒い輪っかが放たれ、私の手足と首を地面に縫いつけてしまう。
「このくらい抜け出してみせるよ」
「人間どもよ勇者の手足を押さえなさい」
黒い輪っかから逃れる前に、騎士さんや衛兵さんが私の手足に乗り身動きが取れなくなってしまう。
「よくやったわ」
先程感情を取り戻したかに見えた女の子は、また目が虚ろの状態になってしまった。
エリザベートの命令で叫ぶように言われていたんだ。
「女の子を使うなんてきたないわよ」
「きたない? 私にとっては最高の褒め言葉ね。しかしこれが勇者ですか。大魔王様が恐れるほどではないわね」
「みんなどいて! お願いだから正気に戻って!」
私の願いは虚しく、騎士さんや衛兵さんが戻る気配はない。
「本当は一思いに殺そうと思っていたけれど、きれい事を言う貴女に絶望を味合わせたくなってきたわ。このカーズブレスレットを着けていのままに操るか、ゴブリンに犯させるのもいいわね」
「くっ!」
私は必死に抵抗するが、押さえつけられた手足が動かない。
「カーズブレスレットをはめ、私の命令で感情があるまま街が滅ぼされる様を見せてあげようかしら」
「や、やめて!」
私は黒い腕輪をつけられないよう必死に抗うが、抵抗することができなかった。
「さあ見なさい!」
ドドドドッ!
どこからか、何かが迫ってくる音が聞こえてくる。
立ち上がってみると眼前には10匹や20匹じゃない、数100匹の魔物が東門へと向かってくるのが見えた。
「護るべき民が虐殺される様を見るが、何もすることが出来ない勇者。最高のショウタイムですね」
この数の魔物が東門を潜ってしまえば、王都の被害は甚大なものとなってしまう。
「だ、だれか助けて」
私は思わず救いの言葉を発してしまう。
「ひゃっはっは最高よ! 勇者の貴女が護らなくちゃいけないのに、他の人間に護れるはずかないじゃない!」
誰かお願い。街をみんなを護って⋯⋯。
こんな時に私はいるはずがない人物を思い浮かべてしまう。
いつだって私を助けてくれた人。
でもその人は今故郷のラーカス村にいるってわかってるけど、私はその名前を呼ばずにはいられない。
「お願いヒイロちゃん! 助けて!」
私は自分の願いをおもいっきり叫ぶ。
「勇者というのはバカですか? この状況を打開できる人間がいるとしたら、魔王ヘルド様を倒した勇者パーティーだけ⋯⋯」
【煉獄魔法】
地獄の業火が東門に集まっていた魔物達を一瞬で消し炭とし、辺り一面を焼け野はらへと変貌させる。
「はっ? な、なんですかこれは!」
い、今の炎は何? 門を通ろうとまとまっていたこともあり、魔物は全滅してしまった。
私は目の前の光景に呆然としていると、不意に何かに掴まれ、身体が宙へと浮かび上がる。
「きゃっ!」
な、何? 地面がどんどん遠くなっていくよ。
こ、怖い。目を閉じ、手をワタワタと動かしていたら、何かを抱きしめることができた。
「リアナ、久しぶりだな」
この声はまさか! そんな奇跡本当にあるの? 急ぎ目を開けると、そこには私が一番待ち望んでいた人、ヒイロちゃんがいた。
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