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第10話 何これ? 疑惑の2人

自分も鑑定魔法が使えればといつも思っています。

 馬車の旅は順調に進み、やがて夕焼けが消えていった。


「では、今日はここで夜営をするとしましょう」


 俺達はエドワードさんの提案により、馬車を降りる。


 アイタタッ! さすがに長時間座っていると体が痛くなるなあ。

 他の人達も同じだったようで皆、ストレッチをしている。


「まずは夕食の準備をしましょう。材料は私が出しますね」


 エドワードさんは異空間収納から野菜を幾つか取り出す。

 中々新鮮な物が多い。夜営だが食事に期待できそうだな。


「エドワードさん、今日突然の襲撃があって疲れてんじゃねえか? 俺が代わりに作ってやるよ」


 エドワードさんの心情を考えてか、ザッシュさんが気が利いたことを言う。


「本当ですか? それではお願いしてもよろしいでしょうか。実はザッシュさんの言うとおり慣れないことがあったので少々疲れていました。ありがとうございます」

「いいってことよ。こう見えて夜営の飯を作ることは得意なんだぜ」


 こうして今夜の夕食を作るのはザッシュさんの役目となった。


「私も手伝いましょうか」

「俺1人で大丈夫だ。嬢ちゃんは昨日恋人になったばっかなんだろ。彼氏とイチャイチャしていいぜ」

「はい! わかりました」


 ルーナは俺の隣に座り、腕を組んで体を寄せてくる。


「ど、どうした」


 俺はルーナの、恋人として自然すぎる行動に戸惑いを隠せない。


「ちゃんと演技しないとバレちゃいますよ」


 顔を寄せて小声で伝えてくる。

 これは演技なのか? 付き合い立ての彼氏になったかのように錯覚してしまったぞ。

 俺の心の中とは裏腹に、ルーナは幸せいっぱいの笑顔を向けてくる。


「2人とも、さっきは恋人同士じゃないなんて言って悪かったな。今のヒイロとルーナちゃんを見れば、誰もが恋人だと思うな」

「そうですよ、私達はラブラブですから」


 ルーナの演技力に堂々グレイも騙されたようだ。こんな才能があったなんて、本当は僧侶の紋章じゃなくて役者の紋章を持っているのではないかと疑ってしまう。

 だが結果として、これでグレイに狙われることは無くなったからよしとしておこう。

 しかしすぐこんな演技ができるなんて、女の子は怖いなと俺は思った。



 グレイやルーナと談笑していると、トイレに行きたくなったので俺は茂みの方へと向かう。

 やばいやばい。漏れる。

 俺はズボンを下ろし、尿を排出する。

 ふぅ、危なかった。ルーナがいなければその辺でしても良かったが、さすがに女の子の前ではできない。

 馬車の所に戻ると、野菜を包丁で切っているザッシュさんの姿が見えた。


「くそっ! うまく切れねえな。大体料理なんてほとんどやったことがねえんだよ」


 えっ? 料理をやったことがない?

 さっき夜営のご飯を作るのが得意って言ってなかったっけ?

 俺はその言葉を聞いて何か怪しいと思い、直ぐ様木の陰に隠れ様子を伺う。


 ザッシュさんは不器用な手つきで野菜を細かく切っていく。


「とりあえずスープにするだけだから小さく切ってぶちこめばいいだろう」


 乱暴な手つきで次々と野菜が鍋に放り込まれる。

 そして辺りをキョロキョロし始めて、懐から出した透明なビンに入った液体も投与していく。

 その時のザッシュさんの顔は先程俺達と話していた時と違い、とても冷たいものに見えた。


 俺はビンの液体に向かって【鑑定魔法(ライブラ)】をかける。


【ドリーム睡眠薬】

 飲むと3分以内に睡眠の状態異常がかかる。

 希釈して使用しても効果がある。


 おいおい。こんな物を入れるなんてどういうつもりだ。まさか眠らせて、その間にルーナにイタズラでもするつもりか。


 そうだ、さっき確認をしなかった紋章も見よう。


鑑定魔法(ライブラ)


 名前:ギード

 性別:男

 種族:人族

 レベル:10

 紋章:【短剣にバンダナの紋章】

 HP:162

 MP:10

 力:D

 魔力:E

 素早さ:C

 知性:D

 運:D


 自己紹介した時と名前が違う。

 それだけならまだ理由があってで済まされるかもしれないが、持っている紋章が戴けない。

 こいつは盗賊だ。

 そういえば先程エドワードさんに積み荷のことも聞いていたし、益々もって怪しい。


「よし出来たぞ」


 どうやら料理が出来てしまったらしい。このままでは見つかってしまう。

 俺は気配を消してギードに見つからないよう、急ぎ皆の元へ戻った。


「ヒイロ、遅かったな。腹でも下したか」

「いや、どこでするか迷っていただけだ」


 俺は当たり障りのないことを答える。

 こうなるとグレイのことも怪しく見えてきた。


「ちょっと馬車に荷物を忘れたから取りに行ってくる」


 そう言って馬車まで移動し、グレイに向かって【鑑定魔法(ライブラ)】をかける。


 えっ! なんだこれ!

 俺はグレイのステータスを見て驚愕した。


 名前:グレイ

 性別:男

 種族:人間

 紋章:【ピエロの紋章】


【ピエロの紋章】って確か遊び人だよな。トランプさばきが上手い、女好き、確かに遊び人の要素はあるな。しかし驚くのはその下の数値だ。


 レベル:28

 HP:352

 MP:214

 力:C

 魔力:A

 素早さ:B

 知性:A

 運:A


 レベルの高さも気になるが、なんでこんなにステータスの評価がいいんだ。それと魔力はAだが、その割にはMPが低い気がする。これは【ピエロの紋章】だから上限値が低かったりするのかもしれない。

 謎に包まれた奴ではあるけど、信用してもいいのか?

 これからギードが運んでくる料理で判断するのもありだな。もし食べたなら少なくともギードの仲間ではないはずだ。いや、そう結論づけるのは早いか。解毒剤のような物を最初から服用していて、俺達に安心させるために料理を食べるかもしれない。


 考えているうちにギードが料理を持ってきたようだ。

 俺はグレイのことが判断できないまま、皆の所へ戻った。

ここまで読んで頂きありがとうございます。


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お読みいただき有難うございます!
狙って勇者パーティーから追放される~異世界転生前の記憶が戻ったのにこのままいいように使われてたまるか! スキル創造を使って俺はこの世界を謳歌する~
新作連載中です!
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