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第16話 ヒイロVSエリウッド前編

ヒロインはいつもピンチに陥ります。

 ヒイロside


 俺はリアナとティアと別れ、エルフの森の入口まで転移する。


「何もなければいいけど⋯⋯」


 だが嫌な予感は止まらない。俺は急ぎ森の中へと入り、全力でセルグ村まで駆け抜ける。

 しかしここは迷いの森⋯⋯微量に感じる魔力に意識を集中して、魔力の波に触れないようにしなければならない。


「くそっ!」


 険しい森の中を右に左に移動させられるため、苛立ちが募ってくる。


 焦るな⋯⋯まだエリウッドさんが黒と決まったわけじゃない。ただ同郷の2人が懐かしくて、セルグ村に行っただけかも知れないからな。


 しかしなぜか最悪の事態が頭を過り、逸る気持ちを抑えられず、風を切るように森の中を疾駆する。



 そして村の入口が見え、直ぐ様魔法を唱える。


「【探知魔法(ディテクション)】」


 俺を中心に魔力の波が広がっていき、2人の居場所を捉える。


 世界樹の前! しかもラナさんは衣服が破れ、負傷している!


「あいつ! やはり敵だったのか!」


 俺は続けて認識阻害魔法をかけ、仮面の騎士に変身し、さらに転移魔法でラナさんの前まで飛ぶ。



 30センチほどの巨大な黒い光の矢が、一直線にラナを目掛けて向かってくる。

 手足を撃ち抜かれて、地面に這いつくばっているラナには到底よけれるものではない。


「ねえ⋯⋯さん⋯⋯」


 ラナの最後の言葉が、世界樹の前でか細く響きわたり、命が刈り取られるその時。


 突如ラナの前に仮面の騎士が現れ、黒い矢を左手で防ぐ。


「ぐっ!」


 しかしヒイロの予想以上に威力があり、左手が貫かれる。そして大量の出血を伴うと共に、左手の甲の認識阻害魔法が消滅し、紋章の翼の部分が剥き出しになってしまう。


「あれ⋯⋯は⋯⋯」


 しまった! だが今は認識阻害魔法をかけなおすことより、ラナさんの傷を治す方が優先だ。


「【聖結界魔法(サンクチュアリ)】」


 光の結界が俺とラナさんを包みこみ、透明な壁を展開する。

 これで傷を治すことができ、相手の攻撃を防ぐことも可能だ。

 そして俺は改めて左手に認識阻害魔法をかけ、半分見えてしまっている紋章を覆い隠す。


「誰だ貴様は! どこから現れた!」


 エリウッドは突然姿を見せた俺に対して、焦りの言葉を投げ、黒い魔力の矢を【聖結界魔法(サンクチュアリ)】目掛けて、連続で放ってくる。


 聖なる結界がお前に崩せるものかと高を括っていたが、透明の結界がピシッと音を立て、少しずつひびが大きくなっていく。


「か、壁が⋯⋯」


 傷が徐々に治療され、意識を取り戻してきたラナさんが壊れそうな結界を見て、不安な表情を浮かべる。


 くそっ! 助けに来たのに不安にさせてどうする!

 エリウッドがここまでやるとは考えていなかった。まずは能力を把握して対策を立てるぞ。


 俺は結界が割れる前に【鑑定魔法(ライブラ)】を使い、エリウッドのステータスを確認する。


 名前:エリウッド

 性別:男

 種族:エルフ

 紋章:弓とドクロ

 レベル:45

 HP:682

 MP:2,321

 力:C

 魔力:A+

 素早さ:B

 知性:C+

 運:D


 レベルは俺よりエリウッドの方が高い。だがステータスでは俺が勝っているのに、なぜ【聖結界魔法(サンクチュアリ)】が破れるのか⋯⋯おそらく紋章のせいだろう。【弓とドクロ】⋯⋯見たことも聞いたこともないが、1つだけわかるのは、見た目からして、悪の道に入ったことにより得た紋章だということだ。


 バリンッ! という音と共に結界が崩れ去って行く。


「ちっ! 俺の結界を破壊する⋯⋯だと⋯⋯」

「クックック⋯⋯仮面などを着け、どこの誰だか知らないが、私の矢で壊せぬものなどないのだ⋯⋯ラナと一緒に葬り去ってくれるわ!」


 エリウッドは先程と同じように弓を構え、矢の代わりに右手で黒い光を集め、こちらに向けて連射してくる。


 俺は慌てて異空間より翼の剣を取り出し、黒い光を打ち砕いていく。


 速い! 何とか防いでいるが、魔法を使う暇が全くない。それに普通の矢とは比べ物にならないスピードだ。

 俺1人なら動きながらかわして遮蔽物まで向かい、その遮蔽物を盾にしながら魔法で攻撃することが可能だが、今俺の後ろにはラナさんがいる。

聖結界魔法(サンクチュアリ)】が途中で破られてしまったため、まだ動けるほど回復していない。もし俺がこの場を離れてしまったら、ラナさんがエリウッドの手によって蜂の巣にされてしまうだろう。


 どうする! エリウッドの矢が切れるのを待つしかないのか⁉️


「どうした⁉️ 防御しているだけでは私を倒すことはできんぞ」

「今お前を倒す準備をしている所だから黙っていろ」

「クックッ⋯⋯そんな手があるなら見てみたいものだ」


 ちくしょう! 状況は圧倒的にこちらが不利だ。

 せめて魔法を唱える時間があれば⋯⋯。


 だが、エリウッドから放たれる黒い光の矢は、どんどん数が増え、衰えることを知らない。


 いつだ! いつこの矢の嵐は止むんだ!


 そして俺の願いが通じたのか、突如矢の嵐が終わったため、俺は右手に魔力を込めて魔法を放とうとするが、眼前にいたエリウッドの姿が突如消えてしまう。


「どこだ⁉️」


 俺はエリウッドを見失ったため、【探知魔法(ディテクション)】を使用するが、奴の姿を捉えることができない。


「エリウッドは逃げたのか⁉️」


 前後左右見渡すがどこにも見当たらない。迷いの森の魔力に触れて入口に飛ばされ、逃亡したのか。


「後ろ!」


 ラナさんの突然の叫び声で反射的に背後を振り向くと、黒い光の矢が俺の背中を目掛けて飛んで来る。


「ちっ!」


 俺は舌打ちをしながら、その攻撃を翼の剣で斬り払う。

 エリウッドは逃げてないのか⁉️ だったらなぜ【探知魔法(ディテクション)】で居場所を確認することができない!


 考えている間も見えない所から、矢継ぎ早に俺を狙って攻撃が向かってくる。


 まさか魔法では探知できないスキルか魔道具を使っているのか。

 どうする? このままエリウッドの魔力が尽きるまで待つか、それとも⋯⋯。


「クックック⋯⋯中々やるではないか」


 森の方からエリウッドの声が、こちらに響き渡ってくる。


「隠れてないで出てきたらどうだ⋯⋯そんな攻撃、何発射とうが俺に当てることは出来ないぞ」

「そうかもしれないな⋯⋯だが」


 そう言って先程と同じように背後から黒い光の矢を放ってくる⋯⋯しかしその攻撃は俺ではなくラナさんに向けられていた。

ここまで読んで頂きありがとうございます。

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お読みいただき有難うございます!
狙って勇者パーティーから追放される~異世界転生前の記憶が戻ったのにこのままいいように使われてたまるか! スキル創造を使って俺はこの世界を謳歌する~
新作連載中です!
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