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14.むすメイド

 翌日朝方──


 私達は、ワールドチャンピオンの討伐報酬の受け取りと死体の解体、街の被害状況確認をする為にレリューム街に戻ってきました。

 まだ日が昇る前に現場に到着したのですが、そこには既に多くの冒険者の方々がいました。聞いたところ、昨日私たちがミスラさんの家に戻ったあとすぐに復旧作業等を始めているようでした。


「す、すごい……昨日あれだけ建物が壊れたのに、もう瓦礫が片付いてますよ」


「この街の冒険者達は皆ある程度実力もあるし、街への貢献意識も高いようじゃの。とはいえ、昨日の今日でもうここまで進んでおるとは、まったく逞しいな」


 私達は、家が立っていたであろう場所が綺麗な更地になっているのを見て作業の早さに感心すると共に、この街に破壊をもたらしたワールドチャンピオンという存在へ憎しみを抱きました。

 今更憎んでも、奴はもう死んだ後ですから、この怒りの感情は発散されることなく心の中に残るでしょう。復興が終わり平穏を取り戻せばこのもやもやも消えるのでしょうか……


「そう言えばルシファーさん、ワールドチャンピオンって私が首を切り落としても復活しましたよね? どうやってルシファーさんは倒したんですか?」


「ん? あぁ、そう言えば言っておらんかったな。ああいう強大な存在にはな、必ず"心臓核(コア)"と呼ばれる物があるのじゃ。まぁ魂みたいな物なのじゃ。それを潰さない限りは心臓核(コア)の力で再生するという代物じゃ」


「……そういうのは戦う前に教えて欲しかったです……」


「す、すまん」


 そんな話をしながら歩いていると、ワールドチャンピオンの死体の麓に、見知った二人の姿を見ました。


「ヘレナさん、ゴーシュさんっ!」


 そう、昨日のワールドチャンピオン討伐戦でルシファーさんの命を助けてくれた恩人、ゴーシュさんです。

 昨日はルシファーさんを回復して直ぐに私が気絶してしまったのでお礼を言えてませんでした。私が大声で名前を呼ぶと、二人はこちらを振り返って私の姿を見ました。そして一目散に駆け寄る私がもう元気だと分かった為か、どちらも安堵の表情で胸をなで下ろしています。


「よう、お嬢ちゃん。そんだけ元気に走れりゃもう心配いらねえな」


「あぁ、フリルさん……良かったわ……!ルシファーさんも、よくご無事で……!」


「は、はい! あの、昨日は本当にありがとうございました……っ! お二人がいなければ、私はルシファーさんを助けることが出来ませんでした。本当に、ありがとうございます!」


 私は精一杯頭を下げます。ルシファーさんはバツが悪そうにほっぺたをかいていましたが、「迷惑をかけたの」と小声で言うと、私と同じく頭を下げます。二人は最初驚いた様子でしたが、顔を見合わせて苦笑しました。

 そして謙遜することなく、素直に私のお礼を受け取ってくれました。こういうのって、謙遜しすぎて話が進まないこともあるので、感謝を否定しないでいてくれたことはとても嬉しかったです。


「お嬢ちゃんの役に立てたのなら良かった。だが一番頑張ったのはお嬢ちゃんだぜ。想像もできない痛みを耐え抜き、あんな超高位魔法を発動させたんだからな」


「ありがとうございます。お二人の励ましが無ければいつ気を失っていたか……それに、あの怪物に立ち向かってくれた皆のおかげで私も頑張ることができたんです。皆が頑張ってくれたからできた勝利ですよねっ」


「本当、フリルさんはよく出来た娘さんですね……強大な者をねじ伏せる力があって自分の功績を過度に謙遜しない、それでいて周りへの配慮もできる。あぁ、この街に貴女が来てくれて良かったわ……小さな英雄さん」


 "周りへの配慮"という言葉にルシファーさんがピクリと反応しましたが、どうやらヘレナさんに他意は無いようで、その微笑みはまるで聖母のようでした。そんな聖母であるヘレナさんが優しく私の頭を撫でます。そんなに褒められると照れてしまいますが、感触が心地よくて思わず頬を緩めてしまいました。


「ヘレナさん……」


 ミスラさんやルシファーさんのなでなで攻撃も、いつもなら丁寧に大人の対応であしらうポーカーフェイスな私ですが、二人を凌駕するヘレナさんの優しいスキンシップには、思わず身体を預けてしまいます。

 気が付けばヘレナさんの腰に腕を回して、豊満で柔らかい胸元に顔を埋めてスリスリしてしまっていました。


「うふふ、こういう所は年相応の甘えん坊さんなんですね。可愛いです」


「ヘレナさぁん……えへへ……」


「ば、馬鹿な!? 余だってこんなに素直に甘えられた事は無いというのに……! ぐぬぬ……ヘレナ! 余は負けんからな!! こやつは余の妹なんじゃからな!」


「ルシファーさん、あんた……」


「言ってくれるなよゴーシュ! これには余の尊厳がかかっておるのじゃ!」


「……分かった」


 そんな和気あいあいとした雰囲気でしばらく平和を噛み締めた後、私達はワールドチャンピオンの死骸についてどうするのか話し合いました。

 どうやらこの身体は非常に強度が高くそれでいて柔軟なので様々な武器や素材に使えるそうです。しかしそもそもが硬すぎて、切り分けすらできない状態だったので困っていたとヘレナさんはやや陰鬱な表情で説明しました。

 そして、どうにかできないかと私に声がかかるのも容易に想像出来ることです。


「任せてくださいヘレナさん。なでなでのお礼を今ここで! 風魔!!」


 私が横たわる死体に手を向けて風魔法を行使すると、音もなく発生した鎌鼬(かまいたち)によって身体は細切れになり、鱗・爪・肉・角……というふうに大まかな部位ごとの切り分けもできました。

 大きさもちょうどよく、一切れなら大人一人で抱えて持てるくらいだと思います。あとは冒険者や街の商人の方などにいる分だけ持って行ってもらえば大丈夫でしょう。

 なんせこれだけの巨体ですからね……いくら持って行っても余りそうなものです。


「うーむ、さすがはアウ……フリルじゃ。魔法一つでここまで綺麗に切り分けるとはな」


「切断面が綺麗で状態も劣化無し……さすがはフリルさんです! これなら最高の取引が出来そうです!ギルドの運営復興費用も潤いますね……!」


「流石SSS級ってことか……この目で見ても信じられねえ腕前だ……」


「そ、それほどでも〜……あはは……」


 SSS級という(クラス)も、いとも容易く行使できる魔法の力も、すべては棚からぼたもちで授かったミスラさんの力なので、それを自分の功績として胸を張るのは何だかミスラさんに申し訳ない気もします。でも私やミスラさんの正体について、一から説明することもできないので曖昧に返事をして切り抜けます。

 ていうかルシファーさん、危うく"アウネ"って言いかけてましたよね、もう少し気を付けて欲しいです、本当に……


「お二人共、何から何まで本当にありがとうございました。報酬等についての件はまた後日、ゲイニス盗賊団の討伐報酬と一緒にお渡しします」


「うむ、頼んだぞヘレナ。余とフリルはもう少し街を見て回ることにしよう」


「はい。ゴーシュさん、ヘレナさん、私達はこれで失礼しますね」


「おう、一緒に仕事出来る日を楽しみにしてるぜ」


 二人と別れてから数十分、私達は復興が進みつつもまだ爪痕の残る街を散策していました。どうやらワールドチャンピオンと戦っている間に、取り巻きのドラゴン達も各所で暴れていたようです。親玉が死んだことにより焦って撤退したそうですが、こちらもかなりの被害を及ぼしていました。


 私は先程の平穏な雰囲気とはうって変わり、唇を噛み締めながらその光景を見ています。

 ルシファーさんの表情からは彼女の心中を察することはできませんでした。ルシファーさんは元々魔王だったので、人間の事にはあまり興味が無いのでしょうか。でも、冒険者として活動し、この街とも少なからず親交があります。知りたい反面、怖いとも思いましたので心の中に疑問を押し込めておきます。


 しばらく歩いて街の中央にさしかかろうかという時、一際大きな瓦礫の山と、その前に立ち尽くす女性が目に入りました。セミロングで明るい茶髪の女性は裾の長い白黒の給仕服…もといメイド服に身を包んでおり、恐らくはこの瓦礫と化した屋敷の使用人だと思われます。

 途方に暮れる背中を見て、私はいてもたってもいられなくなり、思わず声をかけてしまいました。


「あの……大丈夫ですか?」


 メイドさんがはっとしてこちらに目をやります。すると驚いた表情で私達に頭を下げました。


「……! これはフリル様にルシファー様。先日のご活躍は伺っておりますわ。見ての通り、クリオネ様の屋敷は(わたくし)以外の住人と共にその命を終えました。御用でありましたら、申し訳ありませんが取り合うことはできませんわ……」


 私はメイドさんのことも、クリオネ様という人の事も知りませんでしたが、相手はこちらの事を知っている様子でした。そして、私達がクリオネ様を訪ねてきた客人と勘違いしたのか、そんなことを言ったのでした。

 私が返答に困っていると、後ろを着いてきたルシファーさんがフォローしてくれました。


「いや、余達はここの主人に用があったわけでは無いのじゃがな。先日の一件での被害を見て回っているのじゃ。その……余が適切に対応できていれば防げたはずだったのでな……冒険者でありながらこの街を守りきれずに、すまん」


 ルシファーさんが頭を深く下げました。私とメイドさんは最初とても驚きましたが、私もルシファーさんにならって頭を下げます。

 ルシファーさんが恥を(しの)んで謝罪をしているというのに、私が頭を下げない理由がありません。


「い、いえ! それでもあの怪物たちを退治し被害の拡大を抑えてくれたのです。私は貴女方に感謝することはあれど、責めることはありませんわ。私も有事の際に剣を握る戦闘メイドとしてお仕えしており、先日は取り巻き共を相手にしたのですが恥ずかしながら手も足も出ませんでしたの……」


 そう語るメイドさんの表情には、後悔や悔しさからの陰りが滲んでいました。


「……残念じゃが、仕方のない事じゃ。奴らは一体ごとの戦闘力も馬鹿にならんからの。むしろ奴らと対峙して生き永らえておることが並大抵ではないと思うのじゃ」


「……そう、ですね。しかし私、レイチェル・フォールンも最早仕えるべき主も帰る家も失ってしまった流れ者の身です。さぞご主人様や屋敷の者達は自分だけ生き残った無力な私を恨んでいることでしょう」


 そう語るメイド……レイチェルさんの表情はどこまでも暗く、曇天の景色を見ているようでした。たった一日足らずの内に周りの全てを失ったのです。

 私は、まるで自分の過去を見ているみたいだと照らし合わせました。

 幼かった私も突然家を追われて、父が死に母が消え……ひたすら泣き叫んだあの日を嫌でも思い出してしまいます。レイチェルさんも本当は泣きたいんじゃないか……と。


 あの時は自分の忌々しい鉱石ハンターの才能を憎みました。それと同じで、レイチェルさんは自分の力を嘆いている。あぁ、状況は違えど、境遇は同じ────


「レイチェルさん、ちょっと屈んで貰っていいですか?」


「はい、なんでしょ……んむっ……!?」


 そう考えたら、いてもたってもいられなくなりました。膝をつきこちらを覗くレイチェルさんを精一杯抱きしめます。もちろん力は加減していますが、心では全力です。私の寂しい胸元では包容力は無いかもしれませんが、それでも構いません。


「レイチェルさんの辛さは私も知っています……私も母と父を失い、自分の力を嘆いたこともありました。でも、私は今こうして生きています……だから、レイチェルさんにも、生きて欲しい……心から笑える日を迎えて欲しいです」


 私は涙声で喉を詰まらせながらも、自分の心を伝えました。私の胸元で困惑していたレイチェルさんでしたが、言葉を紡ぐごとに段々震えが大きくなる感触が伝わってきます。

 こんな私の言うことにも真摯に向き合ってくれているのだと思うと、レイチェルさんをもっと助けたくなりました。


「レイチェルさん……居場所を無くしてしまったのなら、私達と一緒に来ませんか?」


「フリル様達と……ですか……?」


「はい。良いですよね、ルシファーさん?」


「ん……余は構わんぞ。その……贖罪でもあるしな」


 ルシファーさんはこの件でよっぽど責任を感じているらしく、突然の話でも渋々了承してくれました。突拍子もない私の意思を尊重してくれたことが、とても嬉しく、暖かいです。

 そんな暖かいこのパーティーにレイチェルを迎えて、皆で温めてあげたい。独りよがりな考えかもしれませんが、その時は断ってもらえば良いです。本人の意思を尊重します。でも、助けにはなりたい。綺麗事でも良い。


「もちろん、レイチェルさんが良いなら、ですけど……」


 私は恐る恐る聞いてみました。

 レイチェルさんを抱きしめたままに。


「その……とてもありがたいお話なのですが……私は無力です。皆様のお役に立つどころか、足を引っ張ってしまうかもしれませんわ……」


「私がレイチェルさんを守ります!!」


「……え?」


「こんなにも傷付いているレイチェルさんを戦わせようだなんて思いません。私は、レイチェルさんを温めてあげたい。レイチェルさんには、心から笑えるようになって欲しいんです。その為に、何があっても守ります。どんなモンスターからも、どんな悪人からも。レイチェルさんの笑顔を奪う輩は許しません!」


 つい勢いに任せてまくし立ててしまいました。でもこれは伝えうる限りの私の本心です。もしこれでもレイチェルさんが一人で良いと言うのなら、残念ですがもう私達は邪魔でしかありません。諦める他無いでしょう。でも、願わくば、レイチェルさんを助けるチャンスが欲しい。どうか……!

 そして、レイチェルさんが口を開きました。





「……フリルおかあさま……」





「────へ?」





フ リ ル お か あ さ ま





「どうか、私を守ってください、お母様……!」


「そ、それはもちろん守ります………って、お母様?」


お母様、母上、お母さん、お袋、ママ


 え? お母様? ……聞き違えで無ければ、見た目20台前半と思われるレイチェルさんが、12歳の私に向かって、お母様と呼びましたよね? え、え、これは、一体……?


 ルシファーさんが横で吹き出しているのが見えました。面白いネタを見つけたと言わんばかりに純粋かつ邪悪な微笑みを浮かべています。これはいけません。いろいろと非常事態です……!


「あの、レイチェルさん」


「私のことはレイチェルとお呼びくださいませ、お母様」


「え、あ、はい……レイチェル……?」


「はい、何でしょうか、お母様」


渋々そう呼ぶと、先程の暗い表情からは想像出来ないほど純粋な笑顔が返ってきました。ま、眩しいです。


「な、何故……私がおかあさま……?」


「決まっていますわ。貴女のその包容力と力強さ……そして私を守ると誓った時の瞳……あぁ、まるで母が子に向けるような慈愛の眼差し……これを母と呼ばずになんと呼ばれましょうか……!」


「あ、は、はい」


 色々とぶっ飛んだ理論で急に押しが強くなりました。もしかして私の思っていた以上にレイチェルさんは精神的に追い込まれていたのでしょうか? もしそうなら声を掛けたのが私でよかったです。ちょっと甘い言葉を掛けられてホイホイと着いていく美人さんなんて心配過ぎます。

 ただ、今のこの状況があまり良くないのも事実……レイチェルさんは私の胸に自ら顔を押し付けスリスリしています。そんなに顔を突っ込んで苦しくないんですか……?ああ予想通り顔を真っ赤にしてハァハァと息を荒くしています。窒息しちゃいますよ。


「フリルお母様、今日から私は貴女の子となります。出来ることでしたら、なんなりとご命令下さい……あぁ、お母様、お母様……はあはあ……!」



 これはいけない。いろいろと。


 非常におかしな事になったのは分かるのですが、私ではもはや太刀打ちできません。私は視線でルシファーさんに救難信号を出しました。視線に気付いたルシファーさんはうんと頷くと、レイチェルさんの肩に手を置きました。

 お願い致しますルシファーさん。レイチェルさんを正気に戻せるかどうかはルシファーさんにかかっているのです!!


「あー、レイチェルよ」


「はい、何でございましょうか、ルシファー様」


「余の妹にあたるお主の母上はな、恥ずかしがり屋じゃがとっても甘えん坊なのじゃ。これがどういう意味か、分かっておるな……?」


「ちょっと?ルシファーさん」


「は、はい!! お母様の身の回りの介抱や雑務は私めにお任せ下さい叔母(おば)様!! お母様の照れ屋さんな心を解きほぐし、ゆくゆくは夜の介抱も任され、身も心も熱く……あぁ……!」


「良くぞ言った! お主を歓迎しよう! 駄賃としてフリルが毎晩お主をあやしてくれるから期待して励むが良いぞ!!」


 ルシファーさあああああああああああん!!!

そうじゃないでしょう!? なんでそんなややこしい事するんですか! 私があやすって何を!? 大の大人をですか!?


 突っ込みが追いつかず、恨めしくルシファーさんを睨み付けましたが、ルシファーさんは気にも止めずレイチェルさ……レイチェルと意気投合しています。こうなることは運命だったのでしょうか、(ミスラ)様…。




 そして半ば放心状態の私をお姫様抱っこし、ルシファーさんと共にミスラさんの家に急ぐレイチェルの表情は、とても晴れやかで清々しく、それでいて何か良からぬ事を考えていそうな妖しく上気した笑顔でした。

 まあ、本人が幸せならOK……なのかな……?



……………………………



「や、やっぱり良くないです〜〜〜〜!!!」




 正午の街道に私の悲痛な叫び声が響きました。




 その後、家で待っていたミスラさんにルシファーさんが事情を説明すると、なんと二つ返事でOK。ミスラさんは『アウネちゃんにはロリママ属性も付いてたのね!』とむしろ興奮気味でした。


 レイチェルはと言うと、ものの数分でお姉さま方と打ち解け、楽しそうに笑っています。会話の最中も私をしっかりと抱き寄せ、太ももをさすったり、おへその周りを指でなぞったりしてきて非常に怖かったです。

 その行為に何の意味があるのかは分かりませんでしたが、くすぐったいしムズムズするしで私には良くないことだというのは何となく分かります。

 しかも何故かめちゃくちゃ力が強くて逃げられませんでした……この力が家族を思う絆というものなんでしょうか。……いや違います、違わなければならない。


 そして夜が来ました。私はルシファーさんの約束通り、私の娘で、ルシファーさんの姪で、ミスラさんの孫という非常に背徳的な関係になったレイチェルを寝室のベッドで膝枕し、たくさん頭を撫でてあげています。

 何故こんな事に……と思う反面、嬉しそうに身をよじるレイチェルを見ていると、私を甘やかすミスラさんやルシファーさんの気持ちが分からないでもないような気がしてきました。



「あぁ……お母様の太もも、柔らかい……食べてしまいたいですわ……」


(ふえぇ……)


 たまに不穏な事を言うのでおっかなびっくりでしたが、頭や頬、顎を優しく撫でる度に猫撫で声で甘えてくる娘(25歳)を見て、次第に愛おしくなってしまう母(12歳)なのでした。

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