プロローグ
空気が澄んでて、緑が生い茂る。科学の代わりに魔法が発展している、ここはエルフ達が生活する世界フォレストマギア。この世界では春の国スプリングガーデン、夏の国サマースプラッシュ、秋の国フォールメイプル、冬の国ウィンターホワイトの4つの国で成りっ立っている。その中のスプリングガーデンに住んでいる、青い目と輝く腰まで長いブロンドヘアの少女アリスがこの物語の主人公だ。
午前10時、アリスは自宅の庭で魔法の練習をしていた。
「アリス、魔法のお勉強頑張ってるわね。休憩がてらお茶にしましょ。」
彼女はアリスの母。優しく、美しい女性だ。
「うん、物凄く疲れたからクッキーも食べたいな!」
アリスは人間でいうと中学生くらいなのだが、幼い印象がある。魔法が使えてなんぼのこの世界で、実は魔法をうまく使いこなせない。その為学院では浮いた存在で、学院には暫く通えてない。母と共に自宅で、お勉強をしている。
柔らかな木漏れ日に包まれながら、庭先のカフェコーナーでお茶の時間にした。
「調子はどうかしら?」
母はお茶を共にしながら優しくアリスに聞いたが、彼女は首を横に振る。
アリスは同年代の子達に比べて幼いが、決して頭が悪い訳ではない。むしろ、学問はなかなか優秀だと言っても良いだろう。しかし、魔法を使うのがやっぱり苦手なのだ。魔法を放つ際には光を帯びるのだが、普通は大魔法でない限り気になることはないが、アリスにとっては苦痛に感じてしまう。エルフは元々人間よりも五感が優れているのが特徴だが、アリスは何故か、それがずば抜けているのだ。魔法至上主義のこの世界では、彼女は少々生き辛さを感じている。とはいえ、決して魔力がない訳ではなく、ただ上手くコントロールが出来ない。それ故に、時々暴走するのだ。
「ふぁ~。」
大きな大あくび。
「あらあら、物凄く疲れちゃったのね。少しハンモックで横になりなさい。」
母は優しくアリスを誘導した。
「ちょっとだけ寝る…。おやすみなさい、ママ。」
「おやすみ、可愛いアリス。」
アリスは不思議な夢を見た。夢の中で知らない世界にいた。
緑は少なく、見たことのない大きく背の高い建物に、猛スピードで駆け抜ける乗り物。お世辞にも綺麗だとは言えない空気。星とも魔法ともいえない、強烈な光。騒音。その世界を泣きながら裸足で走っていると、誰かに強く優しく抱きしめられる。「大丈夫、大丈夫だよ。」低音の優しい声。知らない男性だけど、どことなく懐かしくて安心する。
そんな夢だった。