2少し前の話
「ひぃっひぃっふぅー」
「あんたそれ間違えてるわよ」
緊張のあまり、変な深呼吸を始めた僕に奏から早いツッコミ。この学舎とも、あと半年足らずでお別れ。悔いは残さないと決めた。
「奏、僕の骨はぜひ君に拾ってほしい」
「いやよ。フラれたやつの骨なんて。縁起悪い」
「ちょっと!まだ僕フラれてないよ!?」
奏は僕のいとこだ。日本人である母親方の親戚だから異国の血は入っていない。暁と同じ、きれいな黒髪が風になびいてキラキラと太陽の色を吸い込む。
「うじうじしてたらフラれるよ!同性がどうのなんて悩むのは時代遅れ!若いうちは何にでもぶち当たりなさいよ!」
母親じみた奏の発言に思わず笑がこぼれる。
そう、僕が好きになったのは僕と同じ性別。男の子だった。もともと男の子が好きだなんて思ったことは無いのだけれど、その人だけは、暁だけは、キラキラして見えた。
僕が転校してきた初日。外国人とのハーフなのに溌剌さも無ければイケメンオーラもない僕。周囲は海外からの転校生だと聞いて期待していたのだろう。自己紹介をした時、ガッカリしたという雰囲気はクラス中からひしひしと伝わってきた。でも、暁は「親しみやすいソバカスだな」と言って頭をワシワシと撫で回してきた。
「俺、暁。お前奏の親戚なんだろ?ちょっと英語教えてくんね?」
奏の親戚であることと、彼に英語を教えることに繋がりが見つけられなくてポカンとする僕に、彼はグイグイと距離を縮めてきた。
「こんど赤点とるとやべーんだわ」
バスケ部らしい暁。赤点を取ると大会の出場はさせないと顧問からキツく言われているらしい。
それから、テスト前の休み時間や放課後に勉強を教えるようになって。彼がテストで無事に赤点を免れても、休み時間は一緒に過ごして、彼の部活がない日は一緒に下校したりと仲の良い関係が続いた。3年生になって部活を引退してからは、さらに遊ぶ時間が増えた。帰り道にゲームセンターやファーストフード店に寄って。汚いドブ川をジャンプして飛び越えられるか2人で試して、2人して落ちてドロドロになって。
いつから好きかと言われれば難しいけれど、好きだと自覚すると、その言葉以外で彼への気持ちを表せなくなった。
身長が高くて、部活で鍛えているためかがっしりした体。きれいな黒髪の短髪が眩しくて。つり目のせいで他人には怖がられたりする暁。
今日、僕の気持ちを伝えたら、友だちではいられなくなるのだろうか。奏はそんなことない大丈夫だ。なんて言うけれど。男の子を好きになってしまった僕は、引かれてしまったりしないだろうか。不安ばかりが先走る。
「言うって、決めたんでしょ?」
不安が顔に出ていたのだろう。奏が心配そうに顔をのぞきこむ。
「決めたよ、言わずに卒業して暁に彼女できたりするなんて考えただけで苦しすぎる。わがままだと思う?」
「うるさいわね。好きなことを好きって言うだけなんだから!わがままなわけないでしょ!決めたなら、早く行きなさい!」
バシッと奏が勢いよく背中を叩く。このまま屋上で暁を放置してると熱射病で死ぬよ!と小言も忘れない。
「いってくる」
屋上でジリジリに焼かれているであろう人物を思って、少し駆け足になる。自販機で冷たい飲み物を買っていこう。




