⑥
そして、さらにさかのぼった古。
天と地が一つの頃。
妖姫というまこと美しい娘がおりました。
彦左衛門という若者と恋に落ちましたが、身分の違いで二人は引き裂かれてしまったのです。
それでも二人は、恋を貫こうとしたのですが、使いの者の手によって彦左衛門は石にされてしまったのです。
山奥で変わり果てた姿にされてしまった彦左衛門を見つけた妖姫は、それはそれは嘆き悲しんだのでした。
泣きやむことがない妖姫の涙はやがて小川になり、二人が住んでいた村を真っ二つに割ってしまったのです。
恋の執念に駆られた妖姫は、小川の底に住み、睦まじくしている二人を見て、きっとヤキモチを妬いたのでしょう。
そしてあの祠こそ、彦左衛門が自分のような思いをしないようにと願掛けして祀ったものだったのです。
あの鏡と剣は悲しいことに、妖姫が二人で村を出るために彦左衛門に贈ったものでしたとさ。
「良くまぁそんな話を作ったな」
苦笑する洋平を見て、美千代は静かに微笑む。
公園の片隅でひっそりと湧いて流れる水を眺めながら、心の中で、だって本当だもん。と美千代は呟く。
姿かたちは変わってしまっても、その思いは変わらない。
それが歴史……。
そして美千代は、洋平の目を見て呟く。
「私だけを見て。あやかしになんかに騙されないで」
強張った顔をする洋平を見て、美千代は悲しみに満ちた目で別れを告げる。
あなたが寝たふりをしているのは分かっていた。
わざと持って出た鍵。
心のどこかで繋がっていたかったから。
さりげなく、私は電話を掛ける。
エコーが効いているお互いの声。
もう戻れないと悟った瞬間だった。
あなたと出逢った時、感じたもの。
ずっとこの日が来ると、分かっていた。
この物語に終止符が打たれる。
これが今を生きる美千代の答えだから。
お粗末様でしたm(__)m