第五語 嘘吐き ─別視点─
皆様こんにちは、こんばんは。
さて、今回は前回予告しました通り、女の子視点の語り部をやっていこうと思います。
彼女の心は何を考えていたのか。
それがこの語り部でわかります。
では、どうぞ。
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ある所に、ある少女がおりました。
彼女は、同じ学校に通う男の子に、密かにですが、思いを寄せていました。しかし彼女は、叶わぬ恋と決めつけ、ほぼほぼ諦めていました。
ある日、彼女が廊下を歩いていると。
「やっぱりお前、○○(彼女のこと)のこと、好きなんだろ?」
という声が、廊下の曲がり角の先から聞こえました。
曲がり角の先をちらりと覗くと、そこには好意を寄せる男の子と、その友人が立って話していました。
彼女は廊下の曲がり角を曲がらず、その直前で止まり、そっと、聞き耳を立てました。
すると、男の子はこう言いました。
「いっつもいっつもしつこいなお前は。んなわけないだろ!あ、あんな奴、大っ嫌いだよ!」
彼女は大きく揺さぶられるような感覚に陥りました。
今までは、好意まで持ってもらわなくていいから、友達ぐらいとして、少しお喋り出来ればそれで十分だったのです。
しかし、彼の口からは「大嫌い」と、そう言われたのです。
彼女は彼の口から出た言葉をそのまま、しっかりと受け止めてしまいました。
彼女はいつの間にか目に溜まっていた雫を、隠すように拭いとると、再び、廊下を曲がり、歩き始めました。
彼女の頭の中には、今は、泣いてはいけないと、自分に言い聞かせながら歩きました。
そう考えながら歩いているうちに、手に強く力が篭っていましたが、力が緩まることはありませんでした。
彼女は俯いていて、見ていませんでした。
彼女が横を通ったとき、彼はとても苦しいような悲しい様な顔をしていたのを。
彼女はその日、家に帰ると、泣き続けました。
自分で叶わない恋だと言い聞かせクセに。
本当は少し期待してしまっていた。
そのせいで、こんな傷つくはめになってしまった。
もっと自分に、しっかりと嘘をついておけばよかった、と。
彼女は悔やみました。
そして、愛することをやめました。
愛したら傷付く。
そう考えて。
そうやって、彼ら、二人の心は、嘘という壁を隔て、再び会うことはなくなってしまった。
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どうでしたか?
彼の方は誰も信じることが出来なくなってしまいましたが、
彼女の方は、誰も愛することが出来なくなってしまいました。
嘘は二人を分かち、更に二人に重い枷を付けたのです。
嘘を吐くことで、重い枷が深い沼へと引きずりこむのです。
次回はどんな語り部にしましょうか?
では、次の語り部まで。
Au revoir。