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絆・猫が変えてくれた人生  作者: 冬月やまと
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第63話 愛する者たちのために

 いざ、コンサルの会社を起ち上げてみたものの、直ぐに顧客が付くわけではない。

 善次郎には、半年くらい収入がなくても、なんとか暮らしていけるだけの蓄えがあった。

 その間に軌道に乗せなければ、おまんまの食い上げだ。

 そんな状況で、美千代が、嬉しいことを言ってくれた。

「わたしにも少しくらい蓄えはあるから、あなたの事業が軌道に乗るまで、洋平の養育費はいらないわ」

 それを聞いて、善次郎は涙が出そうになった。

 が、なんとかこらえて、笑顔を取り繕った。

「ありがとう」

 善次郎が、素直に頭を下げた。

 善次郎が美千代に頭を下げたのは、プロポーズの時だけだった。

 それも、形式上下げたに過ぎない。

 美千代は、善次郎が隣に越してきてから、これまでの善次郎とは違うということを嫌というほど見てきたので、善次郎が頭を下げても、驚きはしなかった。

「でも、大丈夫だ。直ぐに起動に乗せるから、そんな心配はしなくていいよ」

 これからのことを考えている善次郎は、美千代の気持ちだけを有難く受け取り、美千代に甘える気などは、微塵もなかった。

 美千代も、一緒に暮らしていた頃の美千代ではなく、善次郎を支えようという気持ちが強く感じられる。

 一緒に暮らしている頃の美千代は、善次郎のすることには、とんと口を出さなかった。

 今にして思えば、すべて自分が悪かったのだと、善次郎は思っている。

 あの頃の善次郎は、美千代がなにを言っても、聞き入れようとはしなかったのだ。

 そんな善次郎を変えてくれた、活と夏のためにも、善次郎は頑張らねばと思っている。

 善次郎は、生活費とは別に貯めておいた軍資金を使って、ホームページを作成し、ポスティングを行い、テレアポを頼んだ。

 自分でも飛び込み営業をし、考えられる限りの、営業活動を行った。

 最初の一ケ月は、どこからも依頼がなかった。

 それでも、善次郎はめげなかった。

 一ヶ月で飛び込んだ会社は、三百社を超えている。

 大抵は門前払いをくらったが、数社だけ、会ってくれた会社があった。

 善次郎は、たった数社と思わず、このご時世に、数社会ってくれただけでも大したもんだと思った。

 そんな前向きな姿勢を保ちながら、活と夏、美千代と洋平のために、善次郎は、昼夜を問わず頑張った。

 その甲斐あってか、飛び込みで会ってくれた一社から、コンサルを頼みたいとの依頼がきた。

 その朗報に続いて、菊池さんが、善次郎に会社を紹介してくれた。

 一気に二社、仕事が決まった。

 善次郎は、菊池さんの好意に感謝し、自分の頑張りを素直に称えた。

「喜んでくれ、仕事が決まったよ」

 活と夏に話しかけているところへ、美千代と洋平がやってきた。

 美千代は、我が事のように喜んでくれ、洋平は、「お父さん頑張ったね」と労ってくれた。

「ニャア」

「ニャゴ」

 活と夏も、褒めてくれているようだ。

「まだまだ、これからだ」

 善次郎は、驕ることなく、さらりと言ってのけた。

「昔のあなただったら、有頂天になっていたでしょうね」

 美千代の言う通り、以前の善次郎だったら、「俺がこんなに頑張ったんだから、当然さ」と、鼻にかけていたに違いない。

 そんな善次郎だったから、いくら不況の煽りをくらったとはいえ、あっさりと会社を潰してしまったのだ。

 今は、あの頃の善次郎とは違う。

 活と夏がいる。

 美千代と洋平に対する想いも違う。

 自分のために頑張るのではない。

 自分が愛する者たちのために、頑張るのだ。

 愛する者のために頑張るというのが、これほど心地良いとは。

 善次郎は全身で、幸せを感じていた。

 仕事が入ったからといって、気を抜いている場合ではない。

 軌道に乗せるまでには、まだまだ苦難の道が待っている。

 活と夏、美千代と洋平を幸せにするのだ。

 善次郎は、驕ることなく、気持ちを新たにして、頑張るぞと気合を入れた。


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