第59話 待ち望んでいたこと
美千代と洋平も、パートナーが欠けて寂しそうにしている活の面倒を、よく見てくれている。
美千代は、夏の見舞いから帰ると、いつも活に、夏の様子を話して聞かせる。
活がどこまで言葉を理解しているかわからないが、美千代の話を聞くと、活は安心したような顔をする。
活と夏。
今や、善次郎にとって、どちらもかけがえのないパートナーだ。
もちろん、美千代と洋平にとってもそうだ。
善次郎が二匹と越してきてから、まだ四ヶ月と経っていない。
が、年月の長い短いは関係ない。
活と夏が、二人の心の隙間を埋めてしまったのだから、美千代と洋平が、二匹のことを家族同然に思って当然だろう。
人と人との縁も不思議だが、人と動物の出会いというのも、不思議なものだ。
みなさんは、たまたま立ち寄ったペットショップで、犬に、あるいは猫に呼ばれた経験はないだろうか?
「僕を飼って」
「わたしを飼って」
向こうの方から、そう呼びかけてくる。
もちろん、犬や猫が喋るはずはないので、仕草や目付きなんかで、心に訴えかけてくるのだ。
そうして、つい、衝動的に買ってしまった。
そんな人も、結構いるのではないか。
野良猫も、また然り。
広い世界に、人間も野良猫も数多いる中で、偶然に出会い、その場で、あるいは何度も会っているうちに情がが移り、家へ連れて帰る。
そう、人もペットも、出会うべくして出会うのだ。
だから、その出会いを大切にすべきなのだ。
きっと、なにかの縁で結ばれているに違いないのだから。
そして、全霊をかけて愛し、慈しみ、可愛がる。
活と夏と出会ってから、善次郎は、縁や運命というものを感じるようになった。
それまでは、そんなものは、微塵も感じたことがなかった。
自分のことだけしか考えず、仮にそんな縁があっても、ことごとく無視し、自ら潰してきた。
活と出会ってから、なにかが変わった。
自分のことより、他者のことを気遣う心を持つことができるようになった。
それから、善次郎の人生は一変した。
木島さんや菊池さんといった友達ができた。
これまで、親友と呼べるような友はいなかったが、今は、木島さんがいる。
元ヤクザと親友になるなんて、普通ではあり得ないことだ。
美千代と洋平と再会もした。
本来ならば即刻出ていくべきところを、活と夏がいてくれたお蔭で、今は、家族でいた時より、強い絆で結ばれている。
本当に、縁とは不思議なものだ。
そんな、強い縁で結ばれた者同士が、簡単に離れ離れになるわけがない。
善次郎には、そんな強い思いがあった。
だから、夏が生死の狭間を彷徨っていたときでも、夏の復活を信じていた。
何度、心が折れそうになったかわからない。
そうなりながらでも、善次郎は、夏の復活を強く信じていた。
善次郎の強い思いが届いたのか、夏もまた、善次郎と同じ思いを持っていたのか、夏はなんとか持ち直し、今では快方に向かっている。
善次郎と美千代と洋平はもちろんのこと、木島さんや菊池さんも時折顔を見せては、夏を励ました。
そんなみんなの思いが、夏に届かないはずはない。
夏が入院して二週間を過ぎた頃、ついに、朗報が届いた。
あと数日で退院できると、先生が言ってくれたのだ。
善次郎は小躍りして喜び、美千代と洋平がハイタッチを交わした。




