食事って楽しいもんだよね
ノープランに近い状態で動くマシィにここに来るまで今日のような事は何度もあったが、何だかんだ言いつつレオナルドはおいて行かない。
「まぁ、この世界のどこかには居るんだから大丈夫でしょ。これも旅の醍醐味だよ。れおたん、鍛錬、鍛錬。」
何か言いたげなレオナルドをよそに、おもむろにガスマスクを装着。リュックの中からまた何かを取り出しそれを躊躇なく小ナベの沸いた湯の中に入れていく。
「あ、あの...マシィさん?何をなさっているのかな?」不満顔が一瞬にして強張り始める。
「え?れおたんおなかすいたでしょ?だから夕飯にきのこスープ作ってるんだよ。」
そう!これはマシィ独自のお料理スタイルなのである。(というより半ば錬金術の為の実験だと感じつつ、ガスマスクのレンズから見えるくったくのない笑顔にNOと言えないレオナルド。)
「きのこっていつ採ったんだよ。」恐怖のあまり声がうわずっている。
「さっき道を教えてくれたおじいさんがくれたんだよ~。」
「それ信じちゃダメでしょ!」
「大丈夫だよ~はい、れおたんできたよ!めしあがれ~」いつの間にできたんだ。マシィはなみなみお椀に注いだきのこスープを満面の笑みでさしだした。
今までの食事(実験)もこんなスタイルで行われ、道中摘んだ草花を煎じたり煎じなかったり、とりあえず色々混ぜ合わせたものを出されていた。香りからしてやばいものから見た目や香り、味は良くとも軽く意識を無くしそうになることもあった。命に係わることはないものの、口にするのはかなりためらわれる。
白昼夢をみていたかのように意識がまた戻された。”レオナルド、これも鍛錬だ。”そう言い聞かせ震える両手でなみなみ注がれたきのこスープを受け取ることにした。
「はい、ど~ぞ。」と手渡すと流れるようにノートとペンをとりだした。お椀からはちゃんと香しい匂いがしている。ガスマスクのレンズからは相変わらず笑顔が窺えるが、夕日のコントラストからだろうか、余計に恐怖を覚える。”ごはんってもっと嬉しいもんだよなーごはんが鍛錬になるとは。。。”意を決して口に含もうとした瞬間!
ガサガサ すぐ横の茂みが動き出した。「!?」「助かった!!」
二人が茂みから離れ構えると、茂みの中から何かゆっくり出てきた。
「熊!」